2024年 01月 31日
名前 |
カーニバルが近づくと、
ドイツでもカーニバル(ドイツではファッシング)が盛んな市では
様々な催しが開かれ、多くがテレビで録画中継される。
国や地元の政治家たちを招待して、
コメディアンや政治家自身が他の政治家や社会を
ユーモアを込めてこき下ろす演説が混じる催しもある。
政治家たちはそれを承知でウキウキとやってくる。
このような催しの一つで、
モロッコとアルジェリア出身の外国人労働者を
両親を持つコメディアンが愉快で辛辣な話をした。
彼自身はドイツで生まれ育ち、
ドイツの大学を出て教師の免状も持つ。
子供の時からドイツ人と同じようにドイツ語を話した。
けれども名前はアラビアっぽい。
彼が入学した小学校のクラスには
「ガイジン」が少なくて、ほとんどが
金髪の子供たちだったという。
担任の教師は黒髪の彼を教室の隅に連れて行って、
やはり黒髪でアラビアっぽい名前を持つ
二人の少年たちの隣に座らせると、
「ほら、トルコ人同士でいいでしょ」と言ったそうだ。
少年たちの片方はモハメット、もう一人はアリという名前。
二人ともトルコ人ではなかった。
でも、エキゾチックな名前は一絡げに「トルコ人」されてしまうのだ。
しかも、アリは生粋のドイツ人で、名前はアレックスなのだが
ヒッピー的な両親がわざと「アリ」と呼ばせていたという。
このコメディアンは観客の一人に「お名前は」と聞いた。
客が「インゴ シュミット」と答えると、彼は
「インゴという名前なら就職も簡単でしょう。
マンションを借りるのも問題ないでしょうね」と揶揄した。
インゴもシュミットもドイツ人によくある名前だからだ。
このコメディアンはドイツ社会の痛いところを突いた。
就職でも借家でも、人間どうしが実際に出会うより前、
書類選考の段階で、名前がネックになる例が少なくない。
いかにもガイジンぽい名前なら、
最初からチャンスは少ないのだ。
娘夫婦は夫婦別姓だ。
結婚して、ダブル名前(夫と妻の姓をハイフンで繋げる)
にすることもできたはずだけれど、
娘夫の姓がすでにダブル名前なので、
娘の姓もつなげるとトリプル名前で長くなりすぎるとかで、
この案は破棄された。
だから娘の姓は私(つまりは元夫)の姓のまま。
それでも娘の子供たちは、
父親である娘夫の姓(いかにもドイツ的)を
名乗ることができたはずなのに、
どこか頑固な娘は自分の姓を名乗らせた。
「後で就職などで苦労するよ」と私は反対したけれど、
「建前では名前で差別されないことになっているから」
と娘は頑強に主張し、娘夫はどういうわけか従った。
娘の息子たちのファーストネームはドイツ的な名前だ。
これが幾らかでも助けになれば、などと
ばばバカの私は老婆心で苦悩する。
本当は名前や肌の色や性別で
差別されないような社会を求めて運動をすべきなんだろうけど。
弱虫で怠け者なので、ここで愚痴るだけ。
そういえば40年前に当市で、
幼い娘連れで住まいを探したことがある。
広告で見た安い住まいを貸してもらうために
娘を連れて、家主である老婦人の大きな邸宅に行った。
気難しそうな老婦人に食堂に通された。
私が老婦人と話している間、5歳だった娘は
私に言い含められた通り、
静かに絵を描いていた。
私たちは古びて暖房もない住まいを
安く借りることができた。
契約を済ませた後、大家である老婦人が言った。
「実を言うと、ガイジン、女性、子供付きには
貸さないつもりだったのよ。
あなたはこれの全らてを満たしたけれど、
貸してあげるわ」と。
この家に私たちは二年間住んだ。
その後、この古びて寒い家は取り壊され
今は素敵な小さな家になっている。
by Solar18
| 2024-01-31 18:38
| ヨーロッパの国民性
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Comments(4)
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shisouan at 2024-01-31 21:42
カーニバルって、ブラジルのリオのカーニバルのようなんですか?
日本人は、やはり盆踊りや各地に伝わる昔ながらの踊り
が好きです。
日本人は、やはり盆踊りや各地に伝わる昔ながらの踊り
が好きです。
1
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by
Solar18 at 2024-01-31 22:15
> shisouanさん
ブラジルのカーニバルと由緒は同じですが、踊りが中心なのではなくて、仮装行列のようなねりや集まりが中心です。地方によっては当地のように伝統的な衣装とお面をつけたり、ケルンやデュッセルドルフなどのように政治や社会を風刺した張りぼての大きな人形を乗せた山車を引っ張って行列したり、、、。カソリックの地方だけの習慣なので、ベルリンなどでは祝いません。
ブラジルのカーニバルと由緒は同じですが、踊りが中心なのではなくて、仮装行列のようなねりや集まりが中心です。地方によっては当地のように伝統的な衣装とお面をつけたり、ケルンやデュッセルドルフなどのように政治や社会を風刺した張りぼての大きな人形を乗せた山車を引っ張って行列したり、、、。カソリックの地方だけの習慣なので、ベルリンなどでは祝いません。
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by
Nao
at 2024-02-01 13:36
x
ドイツでもケルン周辺ではカーニバルという呼び名が浸透しており、ファッシングと呼ばれることはありません。ファッシング・ファストナハトは南ドイツで浸透している呼び名ですね。
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by
Solar18 at 2024-02-01 17:20
> Naoさん
そうですね。ケルンやデュッセルドルフのカーニバルと南ドイツのファッシングでは行列の内容も全く違いますし。大昔はファッシングの行列をわざわざ見たりもしたのですが、ここ30年は見ることもなくなりました。ドイツ人の中にはカーニバルやファッシングが生き甲斐という人もいるようですが。
そうですね。ケルンやデュッセルドルフのカーニバルと南ドイツのファッシングでは行列の内容も全く違いますし。大昔はファッシングの行列をわざわざ見たりもしたのですが、ここ30年は見ることもなくなりました。ドイツ人の中にはカーニバルやファッシングが生き甲斐という人もいるようですが。