2019年 05月 30日
幸せな画家 |
昨晩はドリスがアスパラガスディナーに呼んでくれた。
茹でたて、熱々の地元産白アスパラガスを、茹でジャガイモや
ハムとともに、もりもり食べる。
この季節だけ食べられる、まさに旬の料理。
私はデザート用に、クレームブリュレを作って持っていった。
これが一番手軽に作れるから。プリンよりも簡単だ。
卵黄と生クリームと牛乳と砂糖とバニラビーンズを混ぜて、
型に入れ、120度のオーヴンで30分加熱すれば出来上がり。
冷蔵庫でよく冷やしておいて、
食べるときに、砂糖をふりかけてガスバーナーでキャラメリゼすると、
お客に「オー」とか言われて喜ばれる。
お客は相棒と私のほかは、Kと彼の妻Uだけの気軽なディナー。
Kは、安いメロドラマのような話とその続き安いメロドラマで書いた
プレーボーイFが聖女とまで崇めたGが、
Fと知り合う前、つまり今から50年以上前、
十代の時に結婚していた男性だ。
GとKの間には娘が一人生まれたが、KとGは程なく別れたので、
Gは娘をほとんど一人で育てた。
この娘はインドネシア人とともにジャワ島でホテルを営んでおり、
彼ら二人の間には娘が二人いて、
この娘たち(つまりGとKの孫たち)もとっくに成人して結婚して、
子供が何人もいる。
だからGとKの間には孫だけでなく、ひ孫もいると言うわけ。
KはGと別れたのち、別の女性と結婚して、
二人の間にも娘が一人、生まれた。
この女性はその後亡くなり、
次にKは、今から20年余り前に
30歳近く年下のUと結婚して、またも娘をもうけた。
この娘は20歳に成長し、大学に通いながらも
昨年、娘を出産した。
Kにはまたまた孫ができたわけだ。
Kは発掘技師として地元の発掘プロジェクトの指揮をとる一方で、
画家としても昔から活動している。
自宅とは別にアトリエを持ち、これまで数々の展覧会を開いてきた。
友達のドリスがたまたまKとUと同じ家の
一番上階に住んでいることもあって、
ドリスの誕生パーティーなどでK夫婦と会う機会があった。
そもそも、Kと、彼の最初の妻Gとは今も友人関係があるし、
それどころかF(Gの元カレ)とKも知り合い同士。
私の周囲では、別れた夫婦やカップルだった人が、その後も
フレンドリーな関係を保っている場合が多い。
ま、私も元夫と旅行までしたことあるけど。
ちなみに、世間は狭いもので、私の娘婿の父親は歴史家として、
文化財保護で歴史的建造物の発掘作業も担当していたので、
娘のお義父さんとKは仕事の上で、昔からの知り合いだった。
人口20万人あまりの当市では、こういう繋がりは、
あらゆるところにあって(元妻の元カレは、親友の現在の彼氏、、、とか)、
最終的にはみんな親戚同士になるんじゃないかと思うことがある。
Kはもう80歳を超え、杖をついて歩いている。
けれども、画家としては今も精力的に活動しているようだ。
現在の妻Uは、若い頃はギスギスの女性だったけれど、
今ではでっぷり落ち着いて、肝っ玉母さんのような元気な女性。
英語教師をしながら、夫の芸術活動を支え、娘や孫の面倒も見ている。
昨晩の会話では、EUの選挙の話題に始まって(みんな緑の党に投票したらしい)、
今大きな問題になっている右翼の話、
切手収集やアンティーク家具が流行らなくなった話、
料理の話、そして美術の話に移っていった。
Kによると、彼も参考のために景色などの写真を撮ることはあっても、
それをただ写すのではないのだそうだ。
内側から沸き起こるモチーフ(つまりはネタだね)を描く時に、
実際にはどう見えるかを知るための、参考にするのだそうだ。
私のように、よその人が描いた絵を綿密に写そうとするだけで
(実際にはそんなこともできない)、
自分の内側から起こるイメージなど何もないのとは、
さすがに違うみたい。
近々、Kのアトリエをお邪魔させてもらうことになった。
話していて一つだけ気になった。
どんな話題でも、Uが率先して話し、終わるところを知らない。
それだけならば良いけれど、Kがとつとつとゆっくり話し出しても、
すぐに話に割って入って、Kがまだ話しているのに、話が終わるのを
待ちもせずに、大声でまくし立てる。
これが一度ならまだしも、一晩中、0時を超えるまでそうだった。
相棒もこれを感じたので、わざわざKの方を向いて話しかけて、
「Kの話を聞きたいのですよ」という意思表示をしたけれど、
効き目はなかった。
ドリスの家からの帰り道、相棒は
「かわいそうなK」と言った。
あんなに四六時中、話を折られてはたまらないだろう、と。
でも、そうでもないかも知れない、とも思う。
Kはもう慣れっこになっていて、Uが話に割り込んできても、
自分もボソボソと話し続けることに慣れているのかも知れない。
Kが嫌な顔を一度も見せなかったことからも、そう察せられる。
それに、KはUに感謝しているだろう。
老いて、体も動かしにくくなったた今、
頼りになるのはUなのだから。
毎日、元気で仕事や家事をこなし、
Kの身の回りの世話もしてくれるのだから。
Uと、そして大昔Gと出かけたヴァカンスの話をするKの穏やかな顔を見て、
妻、元妻、娘、孫、ひ孫を持つKは、幸せなんだろうな、と思った。
by Solar18
| 2019-05-30 23:02
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