2019年 03月 06日
ジェントルマンとは |
もう20年以上の前のこと。
欧州鳥類学会に出席するドイツ人男友達について、
イタリアのボローニアに出かけた。
ある日、数人の出席者たち(ヨーロッパ人男性)と一緒に、
街中の路線バスに乗った。
空いていたので、誰もが座ることができた。
いくつかの停留所が過ぎて、何人かの人が乗ってきた。
その一人、小太りの中年女性が私の前に来ると、
私に向かって、立てと言った。
自分の方が年寄りだから、座る権利があると言いたげだった。
私よりも若く、しかも男性だったのに、
よりによって女性である私、しかも
若くはない(たぶん、その女性と同年齢の)私が彼女に席を譲るのは
納得が行かなかったけれど、
そんなことを議論しても始まらない。
すぐに席を譲った。そうしたら、その光景を見ていた鳥類学者の一人、イギリス人男性が、
すかさず席を立つと、私の方に歩み寄って、
「女性のあなたに席を譲らせるなんて、とんでもない。
どうぞ、座っって下さい」と言ってくれた。
このイギリス人は私の知人でも友人でもなかった。
それまで話したこともなく、たまたま、同じ会合に出て、
一緒にバスに乗り合わせただけだっから、
この親切ぶりにはびっくりしてしまった。
私のドイツ人男友達は(私より5歳も年下なのに)、
この出来事があった間、座ったままだった。
本当は、私の同伴者である彼が席を立つべきだったのに。
やっぱりドイツ人よりイギリス人の方がジェントルマンよねー、
と心の中では思ったけれど、口には出さなかった。
彼がきまりが悪く感じていたかどうかは、
その表情からは見て取れなかった。
それよりも、私がその時に気になったのは、
ジェントルマンのイギリス人男性が、彼のことをどう思っただろう、
ということ。
自分の同伴者の女性が不当な扱いを受けているのを、
黙って見過ごして、座ったままでいたことについて。
やっぱりドイツ人男性は気が利かない、と思っただろうか。
こちらに来たばかりの頃は、ヨーロッパ人男性の紳士的行動。
騎士道精神からくるとも言われるマナーに
慣れていないために、焦ることもあった。
レストランやよそのお宅を辞する時に、
コートは自分で着ないで、
男性が背後から着せ掛けてくれるのを待つ。
重い荷物は当然のように男性に持たせる。
ドアを自分で開けないで、開けてくれるのを待つ。
男性から三歩下がって歩くのではなく、
先にあるく??(私は後をついて歩く方がいい)
エレベーターの乗降はレディーファースト(同乗者が女性なら、男性は
たとえ自分が上司でも部下の女性に譲るという。特にフランスでは)
ドイツ人男性と一緒に買い物をして、買った物を運んだら、
気分を害されたことがある。
ストーヴ用の燃料を地下室から運んだ時にも、
「なぜそんなことをするんだ」と怒られた経験がある。
当時は、何をすべきで、何をすべきでないのかも
わからなかった。日本では何でも自分でしていたから。
といっても、これも人それぞれだし、近頃は
こういう「良き」習慣も、少なくなっている気がする。
昔風の男性というか、伝統やマナーにこだわる男性は、
今もコートを着せ掛けてくれるけれど、
もうそんなことに頓着しない男性も女性も多い。
私のパートナーはそんなこと、思いもしないみたいだ。
昔、母が笑いながら話してくれた。
ある時、男性にコートを着せ掛けてもらったら、
自分のコートの袖に通すはずの手が、
的を外れて、なんとその男性の上着のポケットに入ってしまったとか!!
この話を毎回、思い出すので、
たまに誰かにコートを着せ掛けてもらうときは、緊張しちゃうよ。
やっぱり自分のコートは自分で着た方がいい鴨。
席もね。パートナーの方が年寄りだから、
立たせるのは可愛そうになったりする。
まあ、重い買い物を当然のように運ばせることができるのは、
ありがたい。
大昔、母と父が結婚したての頃。
デパートでの買い物から帰ってきた二人を見た父方の祖母、
あの祖母(祖母に離婚を勧めた話)が、
「この子はこれまで重い物など持ったことがないのに、
買い物の荷物を運ばせるなんて」と
咎められたそうだ。
母はその瞬間、「ああ、なんでこんな家に嫁いで来たのか」
と後悔したそうだ。後の祭り。
たまに、ジェントルマンライクな扱いをしてくれる人に出会うと、
それはそれで嬉しいね。
それとも、こっちが明らかに婆さんだから、
年寄りをいたわっているだけだったりして。あーあ。
by Solar18
| 2019-03-06 01:44
| ヨーロッパの国民性
|
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Comments(4)
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hananokubikazari at 2019-03-06 16:43
国民性の違い、面白いですね。
日本では、女は男の後をついてくるものというのが
当然だったようですが、それにはこういう話も有って。
自分の前を歩かせれば、いざと言うとき連れの女を守れない。レディファーストなど言語道断。扉を開けた向こうに
敵がいたら真っ先にやられてしまう。
女が先と言うのは、武士道にもとる行為である。
というわけで。考え方もいろいろですよね。私は日本男子の
この考え方、とても好きです^^
重い物は持ってもらったほうがいいですよね、腕力が違うんだから。
「後の祭り」はよ~~~~く分かります^^
日本では、女は男の後をついてくるものというのが
当然だったようですが、それにはこういう話も有って。
自分の前を歩かせれば、いざと言うとき連れの女を守れない。レディファーストなど言語道断。扉を開けた向こうに
敵がいたら真っ先にやられてしまう。
女が先と言うのは、武士道にもとる行為である。
というわけで。考え方もいろいろですよね。私は日本男子の
この考え方、とても好きです^^
重い物は持ってもらったほうがいいですよね、腕力が違うんだから。
「後の祭り」はよ~~~~く分かります^^
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Solar18 at 2019-03-06 20:16
本当に守ってくれるのなら、もちろん大賛成。
そもそも楽ですもんね、後からついて行くの。
一度、こちらのラジオに数分出て、日本についてのことを聞かれたので、この話をしたら、アナウンサーに「なるほど」と言われました。
後の祭りで、昔の女性は耐えたのですね。現代の若い女性はすぐに出て行ってしまうかも。
そもそも楽ですもんね、後からついて行くの。
一度、こちらのラジオに数分出て、日本についてのことを聞かれたので、この話をしたら、アナウンサーに「なるほど」と言われました。
後の祭りで、昔の女性は耐えたのですね。現代の若い女性はすぐに出て行ってしまうかも。
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otenbasenior at 2019-03-07 23:33
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Solar18 at 2019-03-08 00:37
> otenbaseniorさん
私も30年以上知っている悪友(ドイツ人男性)から、「君もドイツに来たての頃は楚々としてエキゾチックだったのに、今ではその影もない」と言われたことがあります。
イギリスジェントルマンは今も健在なのでしょうかね。20年ぐらい出かけていないので、わかりません。行ってみたいなあ。状況が落ち着いたら。
私も30年以上知っている悪友(ドイツ人男性)から、「君もドイツに来たての頃は楚々としてエキゾチックだったのに、今ではその影もない」と言われたことがあります。
イギリスジェントルマンは今も健在なのでしょうかね。20年ぐらい出かけていないので、わかりません。行ってみたいなあ。状況が落ち着いたら。