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十代の体力低下は「加糖飲料」「スクリーンタイム」が関連か 中国で8千人超の13~18歳を横断研究

加糖飲料の摂取頻度が高いこととスクリーンタイムが長いことが、十代の未成年の体力に対して、相加的に負の影響を及ぼしていることを示すデータが報告された。中国で行われた横断研究の結果であり、体力テストの結果が下位に属するオッズ比が、男子では最大で約3倍になるという。

十代の体力低下に「加糖飲料」「スクリーンタイム」が影響 中国で8千人超の13~18歳を横断研究

ティーンエイジャーの健康と体力を蝕む二つのリスク因子

加糖飲料の摂取量の増加は、世界中のさまざまな国で若年者の公衆衛生上の問題となっている。すでに、肥満や心血管代謝疾患、う蝕(虫歯)のリスク増大との関連が明らかであり、さらに癌リスクとの関連も示唆されている。また、加糖飲料の摂取により体重増加を来せば、体力への負の影響も生じると考えられる。ただしこの点についてはまだ十分検討されていない。

一方、スマホやパソコン、テレビなどの娯楽での視聴時間、いわゆるスクリーンタイムの増加が近年、やはり世界各国で若年者の公衆衛生上の新たな問題となっている。スクリーンタイムの増加に伴う身体活動量の減少によって、若年者の体力が低下してきていることが報告されている。また、スクリーンタイムの増加によって身体活動量が減少すれば、さまざまな疾患のリスクが増大することが考えられる。ただしこの点についてはまだ十分検討されていない。

さらに、加糖飲料の摂取頻度とスクリーンタイムの影響が相加的なものなのか否かという点も、まだ十分検討されていない。今回紹介する論文の著者らは以上を背景として、加糖飲料の摂取頻度の増加、そしてスクリーンタイムの増加と、若年者の体力との関連について、横断的な解析を行った。

中国のティーンエイジャー8千人の横断的解析

この研究の対象は、中国の13~18歳の未成年8,542人。広大な土地に膨大な人口を擁する中国においてサンプルバイアスを抑えるため、まず、地理的に離れた6カ所を選び、その中で都市部と農村部を分け、さらに中学生と高校生が等しくなるようにサンプリングした。データ欠落者を除外し、解析対象は8,136人となった。

解析対象者の平均年齢は15.50±1.71歳で男子が50.22%だった。加糖飲料の摂取頻度は、週1回以下が26.45%、週2~5回が52.78%、週6回以上が20.77%であり、スクリーンタイムは1日60分未満が51.24%、60~120分が31.53%、1日120分超が17.23%だった。

加糖飲料摂取頻度と体力、および、スクリーンタイムと体力との関連

体力は、握力、腹筋運動、立ち幅跳び、座位前屈、20mスプリント、および計算式に基づくVO2maxで評価。それらを基にZスコアを算出し「体力指数(physical fitness index;PFI)」と定義したうえで解析に用いた。

前記の加糖飲料の摂取頻度のカテゴリー別に体力指数(PFI)のスコアをみると、週1回以下は0.30±2.45、週2~5回では0.03±2.44、週6回以上は-0.47±2.68であり、摂取頻度が高いほどPFIが低いという有意な関連があった(傾向性p<0.001)。スクリーンタイムとの関連も同様であり、1日60分未満では0.20±2.49、60~120分では-0.16±2.52で、1日120分超では-0.31±2.50だった(傾向性p<0.001)。

加糖飲料摂取頻度とスクリーンタイムの体力に対する相加的な影響

次に、体力指数(PFI)が対象全体の平均に該当するスコア0をカットオフ値として2群に分類。交絡因子(年齢、朝食・間食・乳製品の摂取頻度、身体活動量、通学の手段、両親の教育歴)を調整したうえで、加糖飲料摂取頻度が週1回未満で、スクリーンタイムが1日60分未満の群を基準として、PFIスコアがマイナス(体力が平均以下)であることのオッズ比を計算した。

その結果、以下の表1〜表3のように、加糖飲料の摂取頻度が高いこととスクリーンタイムが長いことによって、PFI低値群に該当するオッズ比が相加的に上昇することがわかった。とくに男子においてはすべてのカテゴリーで有意なオッズ比上昇が認められ、加糖飲料摂取頻度が週5回以上でスクリーンタイムが1日120分超の場合のオッズ比は2.95となった。

これらの結果を基に著者らは、「学校や家族および地域社会が協力して、若年未成年者の加糖飲料摂取とスクリーンタイムを抑制していく必要がある」と述べている。

表1 男子の解析結果
加糖飲料の摂取頻度
(週)
スクリーンタイム
(日)
オッズ比
(OR)
95%信頼区間
(95%Cl)
p値
1回以下60分未満1.00
1回以下60~120分1.441.07〜1.950.016
1回以下120分超1.631.15〜2.320.007
2~4回60分未満1.331.08〜1.630.008
2~4回60~120分1.541.23〜1.92<0.001
2~4回120分超1.751.36〜2.25<0.001
5回以上60分未満1.651.27〜2.16<0.001
5回以上60~120分2.351.74〜3.18<0.001
5回以上120分超2.952.14〜4.06<0.001
表2 女子の解析結果
加糖飲料の摂取頻度
(週)
スクリーンタイム
(日)
オッズ比
(OR)
95%信頼区間
(95%Cl)
p値
1回以下60分未満1.00
1回以下60~120分1.070.83〜1.390.016
1回以下120分超0.980.68〜1.410.007
2~4回60分未満0.950.78〜1.150.008
2~4回60~120分1.220.99〜1.50<0.001
2~4回120分超1.431.09〜1.89<0.001
5回以上60分未満1.10.87〜1.40<0.001
5回以上60~120分1.651.23〜2.21<0.001
5回以上120分超1.71.16〜2.50<0.001
表3 全体の解析結果
加糖飲料の摂取頻度
(週)
スクリーンタイム
(日)
オッズ比
(OR)
95%信頼区間
(95%Cl)
p値
1回以下60分未満1.00
1回以下60~120分1.221.01〜1.490.016
1回以下120分超1.250.97〜1.600.007
2~4回60分未満1.10.95〜1.260.008
2~4回60~120分1.341.15〜1.56<0.001
2~4回120分超1.531.28〜1.84<0.001
5回以上60分未満1.321.10〜1.57<0.001
5回以上60~120分1.931.57〜2.38<0.001
5回以上120分超2.271.78〜2.89<0.001

文献情報

原題のタイトルは、「Associations of sugar-sweetened beverage consumption and screen time with physical fitness index: a multicentre cross-sectional study among Chinese adolescents」。〔BMC Public Health. 2024 Sep 28;24(1):2656〕
原文はこちら(Springer Nature)

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