住宅の売買には、不動産仲介担当者、買い手、売り手、住宅診断業者、融資担当者などの間で多くのやり取りや調整が発生します。こうした複雑な状況ではすばやい対応が不可欠ですが、重要なやり取りの多くは、メールや電話といった従来のチャンネルで行われているのが現実です。そのため、情報のサイロ化や最新情報の伝達遅れが起こりやすく、結果的に商機の喪失やミスコミュニケーション、不要なストレスにつながっています。
こうした状況に立ち向かったのが、カナダのデジタル不動産会社 Wahi です。同社は、住宅購入者が多様な選択肢から自由に住宅を売買できるエンドツーエンドのプラットフォームを提供しています。Wahi が力を入れるのは、透明性の高い住宅購入プロセスの実現と、それによって買い手に知識(と自信)を身につけてもらうこと。そうすれば、買い手は十分な情報に基づいて最適な判断を下せるようになるからです。同社が提供するツールには、リアルタイムの物件アラート、近隣データ、市場の動向、価格設定のためのインサイト(過去の販売データを含む)などがあります。
60 人の従業員からなる少数精鋭のチームをすばやく動かすために、Wahi は会話などを一元化するビジネスの基本システム Slack を利用してコラボレーションを強化し、コミュニケーションを促しています。それだけでなく、人間の担当者を補佐するAI 搭載のカスタムボット「Jean-Michel」を構築し、Slack から直接アクションを実行して顧客にリアルタイムの情報を提供し、販売を加速させています。「全員が Slack を利用するようになったことで、皆の仕事がとても楽になりました」と、Wahi の Head of Product Delivery を務める Rishi Vaswani 氏は語ります。「今までこの種のツールに縁がなかった不動産業界にとって、Slack は画期的な存在です。電話やメールが不要ですぐにやり取りできると、時間を節約して仕事を効率的に進められますから」。
テクノロジーにあまり詳しくない業界の人々でも、Slack ならすぐになじめます。「Slack なら、学習コストや準備期間がかかりません」と、Wahi の Head of Customer Success を務める Dan Miller 氏は話します。「直感的な操作ですぐに使えるので、業務のハブとして最適です」。
重要なトピックがあるときは、きまって Slack のチャンネルやメッセージ、ハドルミーティングを開始して解決策を探します。そうすれば会議の必要がなくなり、時間を大幅に節約できるのです
Slack で仕事を一元管理し、時間を節約&生産性を向上
Wahi のアプリは、顧客と Wahi の社内リアルター(不動産仲介人)をリモートでつなぎ、住宅購入者にシームレスな不動産サービスを提供します。顧客は、現地にいる Wahi の内覧アシスタントと一緒に物件を訪問することもできます。Wahi には、オンタリオ州、ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州、ノバスコシア州など各州の MLS(Multi Listing Service)リスティング情報などが取り込まれています。
常に数百人の顧客を抱えている Wahi のカスタマーサクセスチームは Slack チャンネルを使って常に機敏に対応しています。「誰かがほかのチームメンバーの仕事をカバーしている場合や、担当リアルターの不在時に顧客がオファーの提示を希望している場合でも、やり取りや調整が途絶えることはありません」と、Miller 氏は言います。
こうした反応の速さは、顧客満足度にとって大切です。例えば、顧客がオファーを提示しようというときには HubSpot インテグレーションが#realtor-team という Slack チャンネルに通知を出すので、Miller 氏のチームは最適な対応ができます。「Slack のおかげで密に連携できます」と Miller 氏。「顧客が『Yes』を押してオファーを出すと Slack にメッセージが届くので、どこに注力すべきかが明確にわかるんです」。
Wahi の Head of Marketing for Campaigns and Customer Experience を務める Lydia Ku 氏は最近、共同購入者向けアプリのリリースを中心とした大規模なプロジェクトを担当していました。このカップル向けの住まい探しアプリでは、やり取り、お気に入り物件リストの確認、内覧の予約を 1 か所で行うことができます。「共同購入者向けアプリを成功させるために、Slack チャンネルにあらゆるコラボレーションを集約させ、スムーズに進めました」と、Ku 氏は語ります。
共同購入者向けアプリを無事にリリースしたあとも、共同購入者同士がつながると Slack にアラートが届きます。そのたびにチームは自分たちの頑張りを称え合うことができるんです
チームの方向性をそろえて、コンテキストの切り替えを削減
Slack は、プロジェクト、コミュニケーション、タスクの一元的な管理において中心的な役割を担っています。Google Workspace や HubSpot などの既存のインテグレーションをそのまま Slack に連携できるため、部署やプロジェクトをまたいだコラボレーションが可能です。Wahi で最も利用されているインテグレーションの 1 つは、Asana です。マーケティングチームはこれを使って、アラートの受け取り、プロジェクトステータスの確認、コメントへの返信を行っています。
エンジニアリングチームでは、スピードや予測可能性などの主要パフォーマンス指標にインテグレーションを役立てています。「納期を提案したからには、期待に応えたいのです」と、Wahi の Head of Engineering であり同社初の技術担当者である Rémi Flament 氏は語ります。各チームに 1 つの Slack チャンネルを用意してリアルタイムのコラボレーションを実現し、さらに Jira で社内のインシデントを追跡して、Datadog で本番環境の安定性を監視しています。「Jira でコメントやステータスが変更されると Slack に送られるので、全員が状況を把握できます」と、Flament 氏。さらに、デプロイを頻繁に行うために GitLab も利用しています。こうしたインテグレーションにより、Flament 氏のチームは全員が同じ方向に向かって問題を迅速に解決しています。
プロジェクト管理のほかにも、Wahi では Slack のハドルミーティングや canvas を活用して簡単なディスカッションをしたり、To-Do リストや会議メモを作成したりしています。「有意義な会話が必要なときには、ハドルミーティングをさっと開始します。すぐに会話を始められるので時間を節約できます」と、Vaswani 氏は述べています。「canvas を開いてメモを取り、ミーティングのメンバーを追加するだけで、会話を瞬時に共有できます」。
インテグレーションのおかげで、Slack から離れることなく情報をチェックしたり、調整を行ったり、先の計画を立てたりできるんです。必要なものがすべてそろっているので、仕事に全力で集中できます
リアルターと AI エージェントが協力して最高の顧客体験を提供
Wahi は、今後 1 年間でリードを 10 倍に増やすことを目標の 1 つに掲げていますが、同じ割合で従業員数を増やす予定はありません。これを実現するために、同社は自動化と AI を採用。独自のカスタム AI ボット「Jean-Michel」を構築して Slack 内に実装し、リアルタイムの最新物件情報を送信することで、顧客満足度の向上と成約件数の増加を図っています。
Jean-Michel は RAG(検索拡張生成)を使って、緊急性の高い詳細情報をリアルターと顧客にシームレスに提供します。例えば、Wahi の顧客が興味を示していたある物件に対して誰かがオファーを提示した場合、全員でその情報を共有する必要があります。「手作業に頼るのではなく Jean-Michel を利用することで、情報が発信されるのと同時にその内容を確認し、それを Wahi アプリ内のリアルターと顧客間のチャットに自動的に表示できます」と、Flament 氏は言います。「これらはすべて、Jean-Michel と Slack がなければ実現できません」。電話やメールを待つ必要はありません。人間の担当者とシームレスに連携する Jean-Michel のおかげで、Wahi が情報を取得した瞬間に顧客にもその情報が伝わるのです。
Flament 氏は特に、Jean-Michel の構築がいかに簡単だったかを強調しています。このボットの構築は、人間の不動産仲介担当者に複雑なテクノロジーや変更管理について教えるよりもはるかに簡単でした。「複雑に見えますが、Slack で Jean-Michel を開発するのはとても簡単でした」と Flament 氏。現場の担当者は、Slack メッセージに物件住所の略称、通知相手、そして「オファー」という言葉を入力するだけ。それさえ終われば、あとは Jean-Michel が処理します。
Jean-Michel の活用方法はそれだけではありません。Slack で人間の担当者に返信の候補を提示したり、日常業務をさらに自動化したり、対応までの時間を短縮したりすることも可能です。「Slack では、自動化によってアクションを実行するためにさまざまなことができます。私たちは、Slack で Jean-Michel などの AI ボットの開発を進める計画をしています」と、Flament 氏は付け加えています。
Slack 内の AI ボット「Jean-Michel」のおかげで、顧客が閲覧した物件にオファーが入ると、すぐに顧客に通知できます。「この物件に興味をお持ちでしたら、すぐにご対応ください」と通知してくれるのです。
Slack コネクトでグローバルな仕事も現場の仕事も効率化
さらに大胆なプロジェクトに乗り出す Wahi にとって、外部のパートナーやベンダーとのシームレスなコラボレーションは欠かせません。Wahi は Slack コネクトを利用して、シンプルかつ強力な方法でチーム間の仕事や時差がある地域間の仕事を効率的に進めています。「私たちはさまざまなパートナー企業とともに仕事を進めており、彼らはそれぞれ独自の Slack ワークスペースを利用しています。Slack コネクトのおかげで適切な相手と適切な時間に仕事ができ、時間を大幅に節約できます」と、Vaswani 氏は語ります。
2022 年 11 月の入社時、Ku 氏は Wahi の CMS(コンテンツ管理システム)の移行を担当しました。移行の終了期日は 12 月でした。「世界各地の複数の企業や外部のパートナーとともに仕事を進めましたが、Slack コネクトのおかげでコミュニケーションが可能になり、すべてを取り仕切ることができました」と、Ku 氏は述べています。「短い納期のわりに、とても大きなプロジェクトでした。迅速に仕事を進めなければなりませんでしたが、Slack のおかげでチームとしての一体感を感じることができました」。
Wahi はまた、従来から SMS メッセージや電話、メールを使っている独立請負業者とのコラボレーションにも Slack コネクトを活用しています。「今では全員が Slack を使っており、SMS でメッセージをやり取りするよりもはるかに楽だと感じています」と、Vaswani 氏は述べています。SMS の場合、誰かが iOS ではなく Android を使っているとグループチャットは中断してしまうことがありますが、Slack はどんなデバイスでもシームレスにやり取りできます。「顧客に物件を案内する内覧アシスタントは、細分化された Slack チャンネルを使ってコミュニケーションを取っています」とVaswani 氏。
Slack でのコラボレーション、コミュニケーション、チームワークは、私たちの成功にとって欠かせないものです。
チームの達成を賞賛する文化を強みに、カナダ全土に拡大
常に迅速な対応が求められる業界で、Wahi では分散したチームが主にリモートで働いています。こうした状況のなか、同社は Slack を使って従業員のつながり、意欲、効率性を維持しています。「事業を拡大し、新たな人材を引きつけるうえで、文化が重要な役割を果たします」と、Miller 氏は言います。「その助けとなるのは、Slack です」。
Wahi では、あらゆる成果を褒めることでモチベーションの高さを維持しています。例えば、Slack チャンネル #wahi-shipped では、営業部門、技術部門、外部の請負業者まで、全員が毎週達成した事柄を共有します。このように皆に認められる場を設けることで、やる気を高め、チームの達成感を強めています。さらに #pr-at-wahi チャンネルでは、メディアで Wahi が言及されるとアラートが送信されます。「ブランドの権威や信頼性が構築される様子を目にすることができ、とても嬉しいです」と、Ku 氏は語ります。「自分たちの頑張りが結実するのを、全員が視覚的に確認できるのです」。
リーダーにとって Officevibe などのインテグレーションは、従業員エンゲージメントを把握し、フィードバックを収集して、全員の声が届いていると確認してもらうのに役立ちます。「Slack があれば、職場がさらに楽しくなり全員がつながった状態を実現できるため、強力なスタートアップ文化を育てることができます」と、Vaswani 氏は言います。個人のつながりを育むために、カスタム BirthdayBot や Donut インテグレーションが活用されています。
成長と革新を続けるなかで、Wahi のチームはリーチの拡大に専念するだけでなく、買い手と売り手双方にとっての不動産体験を変革しようとしています。Jean-Michel ボットのような AI インテグレーションにより、Wahi は業界に新しい基準を打ち立て、プロセスを自動化し、これまでにない方法で効率を高めています。こうしたテクノロジーに関する強みは、つながりを重視する力強い文化と相まって、「カナダの不動産業界で誰もが知る企業になる」という Wahi のミッションの原動力になっています。[# /]