大腸がん・大腸カメラ(大腸内視鏡検査)について | 書写西村内科
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大腸がん・大腸カメラ(大腸内視鏡検査)について

[2020.08.24]

目次

新内視鏡室の造設工事が終了し2020年12月1日からはついに大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を開始いたしました。電話やネットでの大腸カメラの予約も受け付けております。
今回の院長コラムでは大腸がんおよび大腸カメラについて解説いたします。

大腸がんについて

日本人でがんによって亡くなる方の数は2017年の統計では約37万人でした。種類別に分けると大腸がんが2位で、約5万人の方が大腸がんによって亡くなっていました(国立がん研究センターがん対策情報センター「がん登録・統計」より)。また、2014年に新たに大腸がんと診断された患者さんの数は約13万人でした。

欧米食の普及に伴って大腸がんの患者様が増え、死亡数も多くなっています。

ただ、大腸がんは早期のうちに治療すれば非常に予後はよく、Stage(病期)Ⅰの方では5年生存率98.1%と良好な結果が出ています。5年生存率はStageⅡでは89.8%、StageⅢでは83.2%、StageⅣ(遠隔転移を認めている場合)では5年生存率 20.5%とStageが進むごとに予後は悪くなっていきます(いずれも全がん協加盟施設の生存率共同調査(2006~2010年)より)。早期の段階で発見して適切な治療を行うことが非常に重要になります。

大腸がんの検査について

大腸がんの症状としては血便や便秘、腹痛、貧血といったものがありますが、基本的には進行がんにならないと症状は出ないことがほとんどです。

大腸がんの検査としては便潜血検査、注腸造影、大腸カメラ、大腸カプセル内視鏡検査(カプセル内視鏡という小型カメラを内蔵したカプセル状の内視鏡を飲んで大腸内を撮影する検査です)、CT colonography(CTから3D画像を作って大腸内を見る検査です)があります。今回は一般的によく行われている便潜血検査と大腸カメラについて述べます。

便潜血検査(2日法)による診断感度(病変を見つけることができた確率)について以下のような報告があります(松田尚久ら, 日消誌 2016; 113 :1176-1185より)。

  • 10mm以上の腺腫(良性のポリープ):45.6%
  • 粘膜内がん(粘膜層という一番浅い所までのごく早期のがん):48.1%
  • 進行がん:91.5%

進行がんまで進むと高い確率で見つけることができますが、良性のポリープや早期のがんでは半分弱の確率でしか陽性になりませんでした。

大腸がんの検査として現時点で一番優れているのは大腸カメラになります。下剤を飲んだり、洗腸液(便を洗い流すして腸をきれいにする薬です)を飲んだり、検査自体も痛みが出ることがあったりと患者さんからするとハードルが高いとは思いますが。。。

ただ、大腸カメラでは小さいポリープでも発見することができ、病変があった時には表面を詳しく観察することで診断をつけることもできます。また、一番のメリットはポリープや早期がんの切除もできることです。

アメリカからの報告で大腸カメラを行って大腸ポリープ(腺腫)をすべて切除することで大腸がんによる死亡率が53%低下したという報告がありました(Zauber AG et al, N Engl J Med 366; 687-696: 2012)。

検診の便潜血検査をしっかりと受けること、便潜血検査で陽性であれば詳しく調べるために大腸カメラを受けること、そして、できれば便潜血検査に関わらず定期的に大腸カメラを受けることが大切になります。

また、便潜血検査もポリープや早期がんに対しては見つける能力があまり高いわけではないので、検査が陰性であっても気になる症状がある場合は大腸カメラをするかどうか医師に一度ご相談下さい。

大腸カメラ(大腸内視鏡検査)について

いい大腸カメラとはどのようなものでしょうか?私見にはなりますが、私が重要と考えている項目について述べます。

・合併症のない安全な検査

患者様に安全に検査を受けて頂けることが一番大事になります。どんなに慎重に検査を行っても一定の頻度で合併症が起こることがありますが、その確認を限りなくゼロに近づける努力が大切です。

・病変を発見し、適切な診断や治療を行えること

 内視鏡を施行する医師によって病変の発見率は異なってきます。また、病変を見つけた際には適切な診断を行って、治療方針を立てることができなければいけません。

・可能な限り患者様が痛くないように検査を行うこと

 手術後の癒着や体格などの問題でどうしても痛みが出てしまう場合もありますが、内視鏡技術の向上や麻酔の使用などで極力苦痛のない検査を提供できるようにする努力が重要です。

大腸カメラ(大腸内視鏡検査)の質について

近年、大腸カメラの質をはかる指標としてadenoma detection rate(ADR:大腸内視鏡検査時に腺腫というポリープを発見した割合)が提唱されています。

アメリカでのADRの目標は男性で30%、女性で20%とされています。このADRが1%上昇するごとにがんが見逃されている危険性が3.0%低くなるとの報告があります(Corley DA, et al; N Engl J Med. 2014;370(14)1298-306より)

そこで私自身のADRを計算してみました。2019年の1年間で447件の大腸内視鏡検査・処置を行っていました。処置などを除外した348件の通常の大腸内視鏡検査で164人の患者様で腺腫というポリープを発見しました。ADRは47.1%になります。先ほどのADR 20%と30%というのはアメリカでの目標になるので一概には比較できませんが、質の高い内視鏡検査を行えているのではないかと思われます。

患者様に検査を受けて頂くからには安全で質の高い検査をご提供できるよう今後も内視鏡技術や診断力の向上に努めていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

 

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