LINDA SMILESが掲げる思い。「女子がサッカーを諦める理由があってはならない」

LINDA SMILESが掲げる思い。「女子がサッカーを諦める理由があってはならない」

LINDA SMILESが掲げる思い。
「女子がサッカーを諦める理由があってはならない」

本企画では「好きなことを続けよう。スポーツを続けよう」をテーマとするKeep Playingの一環として、女子サッカーまたはバスケの選手や指導者を対象に、現在のそれぞれの取り組みへの思いや競技環境についての現状などをお伺いします。

サッカーをやってみたいけれど、気軽に始められる場所がない。そんな女子中高生の声に応えるクラブチームがあります。2023年より横浜市を拠点に活動するLINDA SMILES。45名いるメンバーのうち、初心者が半数を占めています。

今回は、クラブを立ち上げてから改めて認識した女子サッカーの育成年代の現状をもとに、「ジムの中のスタバのような存在のクラブチーム」を志す、代表の久保田大介さんにインタビューしました。

チームをスタバに例えた理由をはじめ、他クラブにはあまり見られない特色、今後の展望などをお話しいただきます。

Keep Playing とは?

日本における女性スポーツ(※)の競技登録者数は高校を卒業後、大きく減少してしまいます。どんな競技レベルやライフステージでも、スポーツの持つ魅力に惹きつけられ、仲間と出会い、プレイを楽しみ、続けて欲しいと考えています。このメッセージが多くのスポーツをする人・みる人・支える人に届くことで、興味・関心につなげ、スポーツを継続する環境がより良いものになることに繋がっていくことを目指しています。

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※2022年バスケットボール、サッカー、ハンドボールの女性競技登録者数を参照
高校生から18歳以上になると競技登録者数はバスケットボール74%、サッカー29%、ハンドボール80%減少。

サッカーを始めたい女子中高生は多いのに…

ーまず、LINDA SMILESを作られた経緯から教えてください。

私はいくつかのクラブチームや学校部活のコーチを歴任し、10年以上女子サッカーに携わってきました。その中で、自分が理想とする女子サッカークラブをいつか作りたいという思いがずっとあり、2年前に具現化させたという感じです。

コンセプトは、無理なく続けられる、いい意味で“ガチすぎず、緩すぎない”クラブチーム。ただ、最初からこれを理想としていたわけではありませんでした。

チーム運営を始めてみて、女子サッカーが抱えるある課題に改めて気づいたのです。それは、サッカーをやりたい気持ちがあるのに、できないでいる子たちが存在することです。
学校に女子サッカー部がなかったり、いわゆる競技志向の高いクラブチームは敷居が高いと感じたり。自分に合う環境がないがゆえに、サッカーを諦める子が多くいます。

というのも、うちのチームに入ってくれた子の半分が初心者だったんです。サッカーを今から始めたい中高生がこんなにも多くいることに驚きました。

JFA(日本サッカー協会)は、サッカー少年少女の受け皿を増やすことを推進しています。ですが、協会が目を向けているのはすでにプレーしている子たちで、意欲はあるのに実行にうつせない子たちまでは拾えきれていないと思うんですよ。であれば自分が、中高生がわちゃわちゃ楽しみながら気軽にサッカーができる環境を作ろうと思いました。

 

ー中高生でも初心者から始められる環境はとても貴重だと思います。気軽にできるということで、練習参加も割と自由なのでしょうか。

もちろん強制はしません。練習日は週4日設定していますが、全てに参加しているのは、全メンバー45人の中で3人ほど。大体週2日参加の子が多いですね。

メンバーの内訳は、高校生が10人で、あとは中学生です。

 

ー女子サッカーの競技人口は減少傾向にあります。プレーヤーを増やすために、あらためてどういったことが必要だと思いますか?

女子サッカー界を支える側の意識改革が必要だと思います。例えば、選手たちのおしゃれに対して。この年代は特に、おしゃれしたい子が多いじゃないですか。髪型に気を配り、ネイルもピアスもしたいんですよ。でも、それらをよく思わない人がまだ一定数いるんです。スポーツ選手はこうあるべきだという、古くからの縛りをなくすべきだと思います。

そのためにも、現場の私たちが活動を発信していくことも大切なのかなと考えます。ですから、SNSを積極的に行っています。

といってもSNSは今どきのセンスが大事ですから(笑)、Instagramは私ではなく選手に任せて自分たちでその日の活動について投稿してくれています。彼女たちが担当するようになってから、純粋に楽しそうな様子が上手く伝わっているのか、問い合わせが増えたんです。やはりお願いしてよかったと感じています。

「サッカーがしたい」なら、寄り添い続ける

ー練習を拝見したところ、ゲーム中心でみなさん楽しそうにプレーされているのが印象的でした。

基礎や反復練習は必要ではありますが、今の参加状況や高校生は僅か3年間しか時間がないことを考えると、ゲーム形式がいいだろうと。ゲームの中でいろいろなシチュエーションを経験し、楽しみながら上達できればいいなと思っています。ただ、基本をやりたい子がいれば、しっかり指導します。

今年度は昨年度よりも人数が増えたので大会出場も積極的にしたいと考えています。ですが、選手によって熱量に差があるので、そこがちょっとネックではあります。

顕著に現れたのが先日の選手権予選です。参加者を募ったのですが、45人中10人しか集まらなかったんです。スケジュールはアプリで共有しているので、出欠状況もみんな把握しているはず。あと1人いれば11人揃って対戦できたのに叶いませんでした。

本当はみんなに来てほしかったけれど「公式戦だから出ろ!」なんていう強制はしたくありません。彼女たちの熱量を自然に上げるには時間がかかるかもしれません。それでも向き合い続けて、サッカーが心から楽しいと感じた先に、自分から参加したいと思う選手が増えてくれたらいいなと思います。

 

ーユニフォームの支給やひとり親家庭へのサポートなど経済的負担の軽減や、女子スタッフの配置といった女子選手に寄り添った配慮など、さまざまな工夫をされています。

お金の負担をさほど感じずにサッカーをやってほしいという思いがあります。一般的なクラブチームだと初期費用で10万以上かかる場合もあるんですね。

それを理由にサッカーを諦めなければいけない子を出してはいけないと思うのです。ありがたいことに、応援していただいている方々のご協力があり、ご家庭の負担軽減が実現できています。

配慮については、当然のことだと思っています。女子サッカーは、なでしこのW杯優勝経験があるにも関わらず、自分の肌感として競技人口がちょっとずつ減っているような感じがある。でも、育成年代から環境設備を整えるだけでもその流れは変わっていくと思うんですよ。

 

ー保護者の方も安心しますね。

初心者メンバーのなかには、スポーツ自体初めてという子が結構多いです。親御さんもわからないことが多いので、任せていただいている感はありますね。みなさん、温かく見守ってくれています。

スタバのような心地いい場所でディズニーみたいなワクワク感を

ー最後に、今後の展望を教えてください。

目標が2つあります。
1つは、ジムの中にあるスタバのような存在になること。つまり、運動(サッカー)ができる居心地のいい場所になるということです。ここに来れば、好きなサッカーをするだけでなく、安らぎや心地よさも味わえる。嫌なことやつまらないことを忘れられるような場所にしたいと思います。

もう少し言うと、ワクワク感も提供したいんですよね。それは、ディズニーランドからヒントを得ました。ディズニー好きな選手が多いんですよ。千葉で合宿した際は午後のオフを利用して、ディズニーランドへ行った子もいるほどです。

彼女たちに好きな理由を聞くと、何回行ってもワクワクして面白い、非日常を体験できると言っていて。だったら同じような気持ちで練習にも参加してほしいと思ったのです。

考えた末に「同じ練習を二度とやらない」と選手たちに宣言しました。毎回内容を変えることで、どんなメニューなのか選手たちはワクワクできると思ったからです。

自分でハードルをすごく上げてしまい考えるのは大変ですが、今のところ初心貫徹しています。選手たちにも好評です。


アップとして取り組む練習メニューは毎回異なるものを実施。日々の練習メニューでも飽きないように工夫。

 

2つ目は、そのような雰囲気を保ちつつ、強さも兼ね備えること。やるからには日本一になりたい気持ちも持っています。難しいことですが、相互リンクしていきたいです。
実は初年度に、理想の実現に向けて少し焦りを感じ、先走ってしまった時期がありました。そんな私の様子を見かねて、選手の保護者の方がわざわざお電話をくれたんですね。「大丈夫ですか、余裕がなくないですか」と言ってくださり、私はその言葉で自分を見失っていたことに気づけたのです。

いろいろな人たちに救われながら、今の自分がある。私は、みんなの笑顔を絶やしたくない、みんなを幸せにしたいという一心で運営をしていますが、私自身も幸せにさせてもらっている場所だなとひしひしと感じています。

そうしたありがたさを噛み締めながら、1人でも多くの女子プレーヤーが楽しくサッカーを続けられるよう、今後も活動していこうと思います。

チームの子どもたちのコメントをご紹介!

 

ーサッカーを始めたきっかけを教えてください。

兄の影響で、小学校のチームで男子に混じって始めました。(中学3年、Aさん)

走ることが好きで、親に勧められたんです。私も、男子と一緒に地域のクラブチームで小学校2年生の時に始めました。(中学1年、Bさん)

たまたまチラシをいただいて始めました!(中学校1年、Cさん)

 

ーLINDA SMILESに入ったきっかけは?

中学では女子サッカー部に入っていて、チームメイトと「(部活だけではなくて)もっと練習して上手くなりたいね」と話していて。その時に公開練習会があるのを知って行ってみたことがきっかけです。(中学3年、Aさん)

小学校6年生の時、クラブチームのセレクションを受ける時期に骨折して出れなかったんです。治ってからまだ間に合うチームを探している中で見つけて行ってみたら楽しかったから入りました。(中学1年、Bさん)

もともとは小学校でサッカーをやめようとしていて。でも、母がInstagramで見つけてくれて、いくつか体験に行ったチームの中で一番楽しかったのがLINDAだったのでここに決めました。(中学1年、Cさん)

 

ーこれから先もサッカーを続けたいですか?練習を見学させていただいて、皆さんの楽しそうな姿がとても印象的でした。

小学校から続けているし、逆にやめたいと思わないです。やれる環境があるかぎり続けたいと思っています。(中学3年、Aさん)

ここだと練習中も試合中も笑顔で取り組めます。真顔でガチガチにプレーしているわけでもなくて、楽しみながらサッカーができる。そんなLINDA SMILESが好きです!(中学1年、Cさん)