ゆめラジオのブログ

1945年（昭和20年）５月に帝国海軍
鹿屋基地から飛びたった特攻隊。
その中に石丸進一少尉の姿が
ありました。

石丸は佐賀出身。佐賀商野球部
所属。投手として頭角を表して
名古屋軍（中日ドラゴンズ）入団。
大東亜戦争は既に始まって
いました。

すぐに名古屋軍エースとなり、
1943年（昭和18年）10月ノー
ヒットノーラン達成。その名を
とどろかせます。

1944年（昭和19年）招集。石丸は
海軍飛行隊を選びました。訓練を
終えた1945年（昭和20年）２月に
特攻隊に志願します。

４月27日に鹿屋基地到着。菊水
六号作戦。雨が降り続いて出撃
延期。自分の死と向きあう日々。

やがて５月11日、鹿児島の空が
晴れわたりました。出撃前に
少しの時間。

石丸は野球の心得ある同僚を
捕手にして投球練習。基地の
誰もが見にきました。

全員が見守る中で投げた10球。
どれもすばらしいストレート。
ミットに大きな音を立てて
吸いこまれました。

10球投げ終わった後で石丸
投手は晴れやかな顔でグローブを
空に放り投げました。もう必要
ないということ。

そして出撃。22才でした。

石丸の名は東京ドーム端の
「鎮魂の碑」に沢村栄治たちと
共に刻まれています。


waterfall

今は１万人ほどですが「国柱会」
という宗教団体があります。

日蓮宗一派で戦前は大きな
影響力を持ちました。

宮沢賢治も国柱会所属。賢治は
冬夜に「寒修行」と称して太鼓を
打ち鳴らし法華経を唱えて
花巻を練りあるきました。

賢治は奇行で素封家だった父の
顔に泥を塗りました。故郷にいられ
なくなって上京。東京で頼った
組織は国柱会本部。

賢治が描いた幻想童話は
国柱会思想が根幹。

国柱会には軍人も多く入信。
最も著名な軍人こそ石原莞爾。
山形出身で陸士21期で
陸大30期。

陸大は首席卒業のはずでしたが、
石原では昭和天皇の前でなにを
言いだすか分からないということ
で２位に。

30才の時に国柱会入信。国柱会
は日蓮宗らしく末法思想。

もともと神がかっていた石原が
見た世界最終戦争ビジョン。
国柱会入信は運命的でした。

石原の世界最終戦争は日米戦争。
時期は1970年代。その前に
日本はソ連と戦って米国は
ドイツと戦います。勝ちあがった
日米間で世界最終戦争。

当面の敵はソ連だから満州を
押さえることが必要。1931年
（昭和６年）の満州事変はこんな
思想の下で実行されました。

石原中佐は板垣大佐を説得。
板垣征四郎は石原の未来ビジョン
にぞっこん惚れこみ決行を許可。

板垣は生涯石原に
振りまわされました。

戦争指導も強かった石原。
事変拡大で中国軍に対峙しても
20倍する敵を圧倒。その名を
高めました。

満州事変こそ日本が破滅へ
向かう発端。1933年の国際
連盟脱退。1937の支那事変。
1941年の対米戦争。これらの
遠因です。

今も多数いる石原信奉者は
これをどう考えているの
でしょうか？

満州事変は満州国建国という
目的を達して石原は国民の
間で絶大な人気。

佐官が将官を焚きつけて
自分たちにおもしろい方向へと
政治や軍事を勝手に動かす
先例となりました。この点で、
板垣や石原の罪は重い。

石原は関東軍から東京の参謀
本部に戻って作戦部長という
要職に就きました。

ちょうど廣田内閣が倒れて宇垣
一成が組閣しようとした頃。

宇垣は軍縮派。宇垣内閣が
成立すれば対ソ戦準備ができなく
なると考えた石原は宇垣つぶしに
動きます。

陸軍が陸相を出さず宇垣は
大命降下あっても組閣ができ
ませんでした。いわゆる
「宇垣流産内閣」。

宇垣内閣が誕生していれば
大東亜戦争もなかっただろう
とはよく言われます。

宇垣は軍縮派。蒋介石とも
対等に話せた器量。石原自身
「宇垣を潰したことは生涯の
不覚」と後に述懐。ここでも
石原の罪は重い。

林内閣や近衛内閣という無能
内閣が続いて日本と中国そして
米国の関係は険悪に。

石原にとって対米戦争は
遥か先の話。まずは対ソ戦。
支那事変など論外。北支
戦争などやめろと説いて
まわります。

耳を傾ける者など一人もいません。
下僚で作戦課長だった武藤章は、
北支不拡大を唱える石原に
平然と。

・・・石原閣下が満州でおやりに
なったことを、我々は北支で
やっているだけであります。

他の課員哄笑。石原絶句。こんな
口のきき方は帝国陸軍で許される
ものではありません。この時、
石原は既に梅津や東條のラインに
睨まれて出世コース逸脱。

機を見るに敏な武藤はそれを
意識してこの返答。石原もこの時、
自分には陸軍内で発言権がない
ことを悟ったでしょう。

ほどなく予備役編入。石原は
支那事変や対米戦争をただ
見ている他ありませんでした。

日本は破滅。その発端を作った
大罪人ながら、対中戦争や対米
戦争に奇妙に反対したことから、
石原は東京裁判不起訴。
戦後すぐに死去。

帝国海軍の山本五十六と同じく
日本に仇なす軍人でありながら、
戦後に祀りあげられて今もファン
が多い石原。その評価は
再考すべきです。


Feld

1945年（昭和20年）２月に米艦隊
が硫黄島に攻めてきました。
日本守備隊司令官は栗林忠道
中将。

栗林中将は安全な父島から指揮を
執るはずでしたが、あえて
硫黄島着任。

米軍が来れば日本からの援軍
ありえず戦死必定。栗林司令官
は覚悟してやって来ました。

守備隊２万1000名。朝鮮人労務者
1000名。計２万2000名。生きて
帰れると思っていた人は一人も
いなかったでしょう。

1944年（昭和19年）６月にサイパン
落ちて本土空襲が避けられなく
なりました。

サイパンと本土の往復5000㎞は
B29航続距離。

サイパンと本土の中間にある硫黄島
に米軍が来ることは時間の問題。
米国勤務長く米軍を熟知する栗林
中将に白羽の矢が立ちました。

栗林司令官はまず民間人避難。
サイパンや沖縄の民間人悲劇が
ここでは避けられました。

まともに戦っても勝ち目はないと
判断。地下に潜ることを決意。
総延長18㎞地下壕を
作りあげました。

計画では30㎞の予定でしたが、
その前に米軍来襲。

高射砲は砲身を低くして海岸に
向けました。戦車も地下に置き
砲台にしました。

地下壕建設にあたって大本営に
要求した掘削機が十分に届かず、
事実上の手作業。

硫黄島はあちこちから硫黄臭気が
噴きでる灼熱。地下壕は70℃。

そんな場所で手作業の地下壕
建設。日本人でなければでき
ないことだったでしょう。

やって来た米軍艦隊。上陸前に
３日３晩艦砲射撃。すりばち山の
４分の１が吹きとびました。

地下壕こもる日本軍にほとんど
被害なく米軍を待ちうけました。

米軍は万端整えての上陸だった
はず。艦砲射撃の後で続々と
上陸する米兵。

栗林司令官の「攻撃開始！」

鳴りを潜めていた日本軍の臼砲や
迫撃砲そして速射砲が米兵頭上
に炸裂。

日本兵は陣地から海岸までの
距離を頭に叩きこんでいました。
突然の攻撃で砂浜に
釘づけの米兵。

ここを見計らってさらなる鉄の雨。
米兵は倒れていきます。硫黄島など
５日で落とせると豪語した米軍
司令官は上陸初日で2400名の
戦死者を出して真っ青。

日本兵はどこから撃っているのか
全く分かりません。

すりばち山に星条旗を立てる
米兵の写真が有名ですが、
あの後も戦闘継続。

日本守備隊はなんと１カ月以上
持久。日本本土空襲が遅れて
殺される民間人も減る。それが
硫黄島守備隊の思いでした。
そのためなら自分が死んでも
かまわない。

灼熱の中を日本兵は１日水筒
１本の水で戦いました。米軍
被害は日を追って累増。

米軍は２万9000名死傷者。
日本軍２万1000名戦死者。

戦争では死傷者を数えますから、
米軍被害が日本軍被害を
上回りました。

日本軍で生き残った者は1000名。
半数は朝鮮人労務者でしたから
日本軍兵士損耗率95％。

栗林司令官も戦死。その戦功が
認められて大将昇進。53才の
大将就任は帝国陸軍最年少記録。
栗林司令官がそれを知ることは
ありませんでした。

合理的で冷静な戦いぶりは米軍の
度肝をぬき、感嘆の声を上げさせ
ました。

硫黄島の戦いは世界戦史で今も
稀に見る敢闘として記録されて
います。

今は海上自衛隊の基地である
硫黄島。一般日本人は立ち入り
できません。

赴任した隊員たちは異口同音に、
冷蔵庫の水やジュースがカタカタ
鳴る現象を経験。日本兵の水への
執念は今も残っているようです。

負けることと死ぬことが分かり
きった戦いを前に栗林司令官は
訓示。

後世の日本人は必ずや
我らの犠牲に頭を垂れん！

この言葉を聞いて末端兵士に
至るまで故郷に残した家族の
ために自分が捨石になることを
決意。自らの死を受けいれました。

彼らの尊い犠牲あればこそ戦後の
日本は曲りなりにも国家を維持し、
経済繁栄を築くことができました。

硫黄島だけではありません。
極寒の孤島で灼熱の密林で、
そして米軍の猛烈な対空砲火を
浴びて海に散っていった先人
あればこそ、日本は戦後に国家
の体を保つことができました。

本来なら日本の修学旅行生。
必ず１回は硫黄島訪問して祖国の
ために犠牲となった先人に一礼し、
合掌すべきです。


Geshichte

第二次山縣内閣で「軍務大臣は
現役武官でなければならない」と
定められました。政党政治に
対する山縣有朋の危機感が
背景です。

山縣は政党が統帥に影響を及ぼす
ことを嫌いました。第二次山縣内閣
直前は隈板内閣でしたが４カ月で
瓦解。

軍務大臣現役武官制はやがて
陸相を出す出さないで未来の
内閣に揺さぶりをかけ、陸軍の
意向を通す手段に使えると判明。

軍務大臣現役武官制が国民の
意識に明確に上った時期は
第二次西園寺内閣。

日韓併合後に陸軍は朝鮮半島
に２個師団増設要求。

世論は日露戦争後の軍縮。
政友会総裁の西園寺首相も
２個師団増設など認めることは
できません。

陸軍は上原勇作陸相に辞表を
提出させて後任の陸相も出し
ませんでした。

これで第二次西園寺内閣は
倒れます。

後継した第三次桂内閣も短期間
で崩壊。世に言う「大正政変」。
国民は陸軍の横暴を許しません
でした。

第一次山本内閣で現役武官制は
いったん廃止になります。

それから二十数年経った1936年
（昭和11年）に二・二六事件勃発。
荒木や真崎など予備役大将を
尉官たちが担いだクーデタ。

予備役武官が力を持つことは
やはり良くないということになり、
軍務大臣現役武官制復活。
廣田内閣です。

この現役武官制復活が1937年
（昭和12年）に勃発した支那
事変の解決を難しくしました。

廣田内閣の後で大命は陸軍の
宇垣大将に降下。宇垣が組閣
すれば外相に幣原を起用して
蒋介石と和解できたでしょう。
対米戦争も回避できます。

陸軍は軍縮の宇垣など認められ
ないとばかり、陸相推挙拒否。
宇垣大将は大命降下あっても
組閣できませんでした。

これで支那事変解決は不可能。
宇垣内閣を潰す画策をしていた
人物が石原莞爾です。

廣田内閣の現役武官制復活こそ、
大東亜戦争の原因。東京裁判で
廣田弘毅が唯一文官として死刑
になった理由もこれです。


October

大阪船場の繊維問屋にすぎなかった
伊藤忠商事。どうして５大商社の
一角を占めるまでになったの
でしょうか？

南青山の本社ビル。前を通る
たびに、この会社はいつから
こんなに大きくなったんだろう、
そう思う人は多いでしょう。

伊藤忠の戦後発展を調べれば、
瀬島隆三に当たります。瀬島は
帝国陸軍軍人。陸士44期卒。
作戦課配属のエリート。上司には
服部卓四郎や辻正信がいました。

瀬島は終戦時に関東軍参謀として
シベリア抑留され10年間帰って
きませんでした。

10年経って帰国しましたが、
軍隊以外なにの経験もない
瀬島。

40才を超えていました。そんな
彼を迎えた会社が伊藤忠。
瀬島の満州人脈や陸軍人脈を
期待してのこと。

山崎豊子の「不毛地帯」では
主人公がシベリアから帰国後に
商社に入って航空部門で辣腕を
ふるったように描かれていますが、
あれはフィクション。

瀬島の伊藤忠での役割は人脈を
生かすこと。辻政信や児玉誉士男
そして岸信介。こうした満州人脈が
戦後に大きな意味を持ちました。

日本は戦後アジアの国々に賠償。
金銭賠償もあれば日本企業の
ビジネス賠償もありました。

官民をつなぐ商社に大きな利権。
人脈を生かして伊藤忠に巨額の
賠償ビジネスを引っぱってきた
人物が瀬島。伊藤忠大躍進の
スタートです。

たとえばインドネシア。瀬島と
児玉はスカルノ大統領に取りいる
工作。赤坂のスナック人気No.1
だった17才女子をスカルノに
差しだしました。

スカルノは大いに気をよくし、
伊藤忠はインドネシアの
賠償ビジネス獲得。

韓国のパク・ジョンヒ大統領。
パクは満州士官学校出身。瀬島を
知らないはずありません。という
より満州士官学校で学んだ軍人
なら瀬島は仰ぎみる存在。

瀬島はパク大統領の側近キム・
ジョンピルと話をつけて韓国の
賠償ビジネスを獲得。キムは公式
には大平外相と国交正常化会談
のため来日ということになって
いますが、裏では瀬島と交渉。

伊藤忠が今も中国や東南アジア
に大きく投資している理由もこれ。
すべて瀬島の満州人脈や
陸軍人脈。

南青山の伊藤忠本社ビル。
この会社がここまで大きくなれた
背景に瀬島の暗躍。

賠償ビジネス獲得など人前で
話せる案件ではありません。

瀬島は「不毛地帯」の作者である
山崎豊子にシベリア抑留に
ついては饒舌に語っても、賠償
ビジネスにはついては一言も
触れませんでした。


October

永田の前に永田なく
永田の後に永田なし

陸士16期と陸大23期の永田
鉄山はその優秀さを陸軍内で
こう表現されました。

ずば抜けた頭脳で試験勉強
せずともいつも首席。

陸士16期は永田の他に小畑
敏四郎や岡村寧次といった逸材が
いたのですが、彼らも勉強では
全く永田に歯が立ちません。

陸士首席卒業。陸大次席卒業。
陸大首席は梅津美治郎。
終戦時の参謀総長です。

軍政に進む者は試験秀才が重宝
されました。永田は同期の中で
最速出世。

その過程でしだいに「統制経済」
にのめりこみます。

経済の成長と軍の近代化。永田
にはソ連に歩兵で突入しよう
という皇道派がいかにも時代遅れ
に見えました。永田はいつしか
統制派トップに。

永田の主張はソ連と戦うなら
まず飛行機や戦車を拡充しようと
いうもの。この軍近代化論は
正しいでしょう。

ソ連は極東に大型爆撃機を
数十機そろえていつでも満州
各都市を爆撃できる体制。

1931年（昭和６年）に関東軍が
満州事変を起こした理由も、ソ連
極東空軍の戦力が看過できる
レベルを超えたからです。

永田は対ソ戦をめぐって皇道派
トップの小畑と陸軍幕僚会議で
大激論。1933年（昭和８年）
のことです。

永田の出世は止まらずに1934年
（昭和９年）には軍務局長就任。

国家予算の半分が軍事予算。
陸海軍で折半するとして陸軍
予算は国家予算の４分の１。
その予算を差配できるポスト。

軍務局長は将来陸相は確実。
情勢しだいでは首相も。

永田は軍務課長だった1932年
（昭和７年）に皇道派領袖の真崎
甚三郎教育総監を更迭。

後任に統制派の渡辺錠太郎を
送りこみました。

そんな永田が1934年（昭和９年）
に軍務局長になったとあって
皇道派が動きました。

剣道達人だった中佐を使って軍務
局長室で永田暗殺。白昼堂々に
軍務局長室で日本刀で斬りかかる
という前代未聞。

このような大事件が中佐一人の
判断でできるわけはないでしょう。
1935年（昭和10年）８月の
ことです。

永田をなきものにした皇道派。
意気が上がります。翌1936年
（昭和11年）２月には二・二六
事件を決行。

昭和天皇の不興を買って失敗。
青年将校銃殺。小畑も予備役に。
統制派天下となりました。

統制派だった武藤章が中国進出
推進。日本は泥沼の支那事変
へ突入することになります。


nature

昭和初頭に「昭和維新」を掲げた
陸軍軍人一派がありました。
皇道派です。

彼らは真崎甚三郎や荒木貞夫の
大将を担いで天皇親政を目ざし
ました。

政党や財閥に任せていては
日本は滅びるという強い危機感。
1929年（昭和４年）からの金融
恐慌が彼らを動かしました。

天皇親政など既に不可能だった
のですが皇道派はそれができると
信じました。

実質的に皇道派を仕きった軍人
は小畑敏四郎少将。陸士16期の
秀才。

天皇親政を掲げるからには、
皇道派は徹底的な反共。ソ連を
まず倒そうと主張。

明治期の「帝国国防方針」以来、
帝国陸軍の仮想敵国はソ連
だったわけですから、これは
当然の主張。

財閥と組んで統制経済で日本を
強くしようと主張した一派もあり
ました。統制派です。

統制派は満州に渡って統制
経済を実行。満州国で実績を
積みました。

統制派はレーニンやスターリン
そしてヒトラーに心酔。彼らは
ファシズムに憧憬。

陸軍内で猛烈な路線対立が
生じました。皇道派と違って
統制派は「対支一撃論」。

ソ連と戦う前に中国を倒すべしと
主張。軍務課長だった永田鉄山が
林銑十郎大将を担いで中国進出
を説きました。

振りかえればあの時、皇道派の
主張が通っていれば日本はソ連と
だけ戦争。ドイツと挟み撃ちして
ソ連を降伏させることも
できたでしょう。

支那事変も対米戦争も
あり得なくなります。

統制派が陸軍の覇権を握って
ファシストみたいな軍人が権力を
取ってから日本は破滅に
向かいました。

皇道派が二・二六事件さえ
起こさずに覇権を取っていれば、
日本は悲惨な対米戦争を
経験せずにすんだのです。

今の教育ではテロリストみたいに
教えられる皇道派が少し別の
視点で見えてきます。


histoire

山縣有朋と桂太郎と続いた
長州陸軍閥。それを後継した
人物が寺内正毅。

1916年（大正５年）の第二次大隈
内閣の後で寺内内閣は組閣。
第一次世界大戦のまっただ中。
山縣が推挙して大命下りました。

成立過程が山縣の推挙とあって
立憲とは呼べません。「非立憲
内閣」と言われました。

長州や陸軍の期待を背負ったわり
には寺内内閣は大した成果も
挙げられませんでした。

1917年（大正６年）のロシア
革命後にシベリア出兵を決め
ましたが、これを成果とは
言いがたいでしょう。

富山主婦が起こした米騒動で
退陣するという情けない幕引き。

この体たらくを見て陸軍後輩の
田中義一は長州閥に頼れない
と判断。立憲政友会の原敬に
接近し始めます。


feather

大正から昭和にかけて、立憲政友会に
代わって立憲民政党が政権担当。

幣原喜重郎を外相に起用し、
平和協調の外交を展開。同時期、
陸相として軍縮を推進したのが
宇垣一成。宇垣は今、もっと
評価されていい軍人政治家です。

日露戦争から二十年も経つと、
日本に目前の敵もなく、帝国陸海軍は
いつしか無敵。

ワシントン会議、ロンドン会議で
英米六割、七割の制限を義務づけ
られたのも、もし日本が十割だったら、
帝国海軍が圧倒的に強くなるからです。
それほど恐れられていました。

強い軍隊。高い道徳性。そして
勤勉な国民。日本は極東にたてこもり、
貿易だけ続ければ、それだけで世界の
覇権を握れる立場にありました。

当然、英米は警戒。
日本に軍縮を要求。

軍縮は日本にも決して悪い話では
ありませんでした。軍備増強が国家予算を
圧迫していたからです。

陸軍の中で政治家と話ができる宇垣に、
白羽の矢が立ちました。宇垣も期待に
よく応え、陸軍予算を削り、人員を
減らしました。いわゆる「宇垣軍縮」。

しかも宇垣。単なる予算縮小でなく、
来るべき航空戦争に備え、陸軍の
航空予算は逆に増やしました。
今、振りかえっても、みごとな先見性。

一機の戦闘機が百名の歩兵に勝る。
確かに、第二次世界大戦はそんな戦争。
日本が米国に負けたのも飛行機の
性能が劣ったからです。

いつの世も既存体制には利権。
宇垣軍縮に陸軍は猛反対。
宇垣はまだ現役だったので、
陸軍に戻るべき立場が
なくなりました。

清浦、加藤高明、第一次若槻の内閣で、
軍縮を進めた宇垣。その後、陸軍で
立場がありません。

昭和十二年、廣田内閣の崩壊後、
次は宇垣大将でということになり、
大命降下。けれど陸軍が「宇垣なら
陸相は出さない」と言いだし、
組閣できず。

宇垣は第一次・近衛内閣でも
入閣しましたが外相。なにもできずに、
日本が大東亜戦争に突入するのを
見るだけ。やはり軍縮は予備役に
やらせるべきです。


autumn sky

日本の学校教育はなぜシベリア抑留を
教えないのでしょうか？昭和二十年の
八月九日、ソ連が日ソ中立条約を破り、
満州に侵攻。関東軍上層部は既に
逃げだし、残りは使いものにならず。

ソ連の近代兵器を前に日本の
民間人が丸腰で立たされました。
逃げる日本人。子供は足手まとい
ですから、泣く泣く現地の中国人に
預けるケースが続出。残留孤児の
悲劇となります。

大人だってソ連兵に捕まれば、
ただではすみません。男子は
シベリア抑留。抑留数はおよそ
六十万名。十年後、鳩山内閣で
日ソ国交回復するまで、抑留は
続きましたから長い人だと、
十年以上。

粗末な食事。劣悪な住居。
シベリアの極寒。そして奴隷労働。
壮健男子が多かったはずですが、
六万名がシベリアで斃れました。

これこそ強制連行。日本人はもっと
国際社会にこの事実を
告発すべきです。

ソ連は帰国者に徹底的な共産教育、
反日洗脳を施して返してきました。

人間など弱いもの。食事、睡眠を
制限され、隔離されれば、実際にやって
いなくても、簡単に自分がしたと
思いこみます。

この場合、強力なカウンター洗脳を
しないと、思いこみは消えません。
注意すべきは満州国境付近で行われた
「三光作戦」を証言する元日本兵が、
ほぼすべてシベリア抑留組であること。

奪いつくし、殺しつくし、焼きつくす、
という三光作戦。命令書もなければ、
証拠もない話ですが、こうした
元日本兵が帰国し、騒ぎたてたため、
今も話題になります。

その内容たるや残虐そのもの。
一体、七十年前の私たちはそんな
狂気集団だったでしょうか？

三光作戦の残虐さはとても、
こんなブログでは書けません。

日本史のどこを探しても、今の日本の
どこを見ても、そんな残虐さは
ありません。

一方、中国では、歴史上も今も
残虐例にこと欠きません。

チベット、ウィグル、南モンゴルの人々、
そして法輪功学習者に対する言語を
絶する虐待。

三光作戦なるものが実は誰の所業か、
分かろうというもの。

南京大虐殺、三光作戦、慰安婦の
強制連行・・・嬉しそうに報じた
朝日新聞。無批判に受けいれた
日本共産党、そして日教組。

日本の学校教育で嘘ばかり教えられ、
肝心のシベリア抑留が無視される
理由もここにあります。


late summer

米内光政と山本五十六そして
井上成美は帝国海軍の平和
主義者３人組として小説で
描かれました。

この３名は三国同盟に最後まで
反対。米内は終戦時に御前会議
で講和主張。米内は一見すれば
平和主義者です。

米内は開戦前に戦争惹起の方へ
いつも動いていた人物でも
あります。

彼の動きをつぶさに見るなら、
平和主義者でないどころか
「国賊」と呼びたくなる軍人だった
ことが分かってきます。

林内閣で海相になった米内。
第一次近衛内閣と平沼内閣で
留任。

海軍行政を仕切りました。この時に
起きた事件が盧溝橋事件です。
これは第二次上海事変にも
なりました。

米内は盧溝橋事件では「陸軍の
ことだから」とノーコメント。上海で
海軍士官が殺害されると激昂。
海軍陸戦隊を派遣して本格的
な戦闘状態に。

海軍介入によって、それまで
「北支事変」と呼ばれていた戦い
が「支那事変」に拡大。日本は
泥沼にはまっていきます。

米内は1938年（昭和13年）に近衛
首相を突きあげて「国民党政府を
相手とせず」という声明を
出させました。

支那事変早期収拾は不可能と
なり、日本の国際的立場は
どんどん悪化。この動きの、
どこが平和主義者でしょうか？

米内は1940年（昭和15年）に
組閣しますが、陸軍妨害にあって
半年で瓦解。

首相経験者としての発言力は
隠然たるもの。その言動に
注目が集まりました。

米内は対米戦争へと進んでいく
過程を傍観。三国同盟には反対
しましたが、対米戦争には
終始無言。

そして対米開戦。日本はガダル
カナルの戦い以降劣勢に回り、
1944年（昭和19年）６月には絶対
国防圏の要サイパン島陥落。
指導部は敗戦を意識しました。

サイパン島陥落を受けて東條内閣
は倒れて後継内閣をどうするか
という話になりました。

後継内閣は敗戦処理内閣となる
ことは明らか。対米戦争の大部分
は海軍所管だったわけですから、
米内が再び登板して講和に動き
だすべきところ。

ところが米内は平和主義を発揮
する絶好の時に再登板を固辞。
小磯国昭が組閣することになり、
戦争は続きました。

小磯内閣で海相となった米内。
講和に動くわけでもなく、時局悪化
の成りゆきを傍観。終戦前の御前
会議で講和案に賛成しただけに
とどまりました。

米内は1945年（昭和20年）８月９日
にソ連参戦と長崎原爆投下を耳に
しました。この報を聞いて米内は、
「天祐だ」と漏らしたとか。

天祐とは「神の助け」。戦争を
終わらせるための天祐と言い
たかったのでしょう。

満州や長崎の地獄に思い致す
ことなく、神の助けと呼ぶこと自体、
米内の本質が見えるというもの。

「米内は平和主義者」という一般に
流布したイメージが全くのまちがい
であることは確かです。

米内については今後さらなる史料
発掘で真実が見えてくるかもしれ
ません。その時を待ちましょう。


navy

第三次攻撃隊発艦準備完了！

空母赤城艦橋に山口多聞少将
から意見具申が届いたの時間は
ハワイ作戦の第一次と第二次
攻撃隊の戦果に司令部が沸き
たっていた時。一方的な
勝利でした。

山口少将は港の燃料タンクや
艦船修理ドックが無傷であること
を見逃さず、第三次攻撃隊発艦
を南雲忠一長官に具申。南雲
部隊には第三次攻撃の余裕は
十分にありました。

ワシントンでの宣戦布告手交が
遅れてハワイ作戦は騙し討ち。
当時の日本搭乗員の腕をもって
すれば、米国艦隊上空に到達
できれば成功したも同じ。

淵田少佐の有名な「トラトラトラ」は
第一次攻撃が始まる直前に
発せられました。

ハワイ作戦では第三次攻撃
については状況しだいと
決められていました。

第一次と第二次攻撃が成功
すれば、やってみるという予定。

大戦果が出たわけですから山口
少将の具申通りに第三次攻撃も
敢行すべきところ。

南雲長官は退却命令。これだけ
がんばったのだからやめよう
という決断。

米空母が近海にいて攻撃される
可能性もありました。

山口少将具申に従って艦船修理
ドックを破壊しておけば、半年後に
珊瑚海海戦で大破した米空母
ヨークタウンが直後のミッドウェー
に出てくることはなく、戦史も
大きく変わったはず。

山口少将はミッドウェー作戦にも
参加。空母飛龍に乗りこみ
ました。第二航空戦隊司令官。

ミッドウェーの南雲司令部。艦上
攻撃兵装をいったん陸上攻撃兵装
に替えて再び艦上攻撃に替える
という失態。

１回目の兵装転換の後「敵空母
見ゆ」の電文を受けとって２回目
兵装転換。洋心でこんなことをして
いるうちに米軍機がやって来れば、
空母はひとたまりもありません。

山口少将は１回目兵装転換で陸上
攻撃となった攻撃機をそのまま
発艦させるよう具申。

この具申が通っていれば、日本の
攻撃機は米空母を沈められ
なかったかもしれませんが、
少なくとも味方の空母格納庫で
誘爆することもなかったはず。

山口少将の具申は通りません
でした。

米空母レキシントンとエンター
プライズそしてヨークタウンから
飛びたった攻撃機が日本の
３空母に殺到。

味方艦載機が誘爆を起こして
赤城と加賀そして蒼龍はあっと
いうまに炎上大破。加賀は
すぐに沈み始めました。

米空母の存在を危惧していた山口
少将の飛龍は難を逃れました。
艦上から３空母の惨状を見て
「われ今より航空戦指揮を執る」
という電文を発して飛龍攻撃隊に
発艦を命じました。

飛龍攻撃隊はヨークタウンに攻撃
を集中し大破。一矢報いました。

この時の飛龍攻撃隊には援護の
戦闘機なく、多くが撃ち落され
ました。

それでも飛龍隊が薄暮攻撃を
準備していた頃、米軍機が上空
に殺到。飛龍も航行不能に。

ミッドウェー作戦は夜襲も想定して
いたので夜には美しい満月が海上
に浮かびました。

傾き始めて燃えさかる飛龍艦上で
山口少将は総員退去を命じました。
加来艦長に向かって。

・・・艦長、今夜は月でも見よう。

二人で司令室に入って中から鍵を
かけたとか。飛龍は日本潜水艦
によって沈められました。

ハワイ作戦でもミッドウェー作戦でも
山口少将の意見具申は実に的確。
それが聞きいれられることはなく、
ハワイで勝ってもミッドウェーで
大敗北。

日本はこれ以降押されっぱなしと
なります。戦局を挽回することは
できませんでした。

山口少将は独断専行にも
かかわらず、戦いぶりが認められて
死後中将進級。

後のマリアナやレイテで「ここに
山口あれば」と多くの将官が悔し
がったほどの名提督です。


admiral

やってみせ　言って聞かせて
させてみせ　ほめてやらねば
人は動かじ

今は少なくなったでしょうが、戦後
長い間、多くの日本人経営者の
座右の銘が山本五十六の
言葉でした。

部下思いで知られ、海軍にあり
ながら航空兵力の価値にいち早く
気づき、機動部隊を世界で初めて
駆使した名将。そう謳われた山本
の言葉に経営者が憧れたことも
無理ないでしょう。

東京裁判の結果として海軍
善玉で陸軍悪玉というイメージが
定着。山本が三国同盟にずっと
反対したことが知られるにつれ、
名将でありながら冷静な平和
主義者でもあったという評価が
広がりました。

2000年代になる頃から山本への
こうした評価も変わってきました。
山本は愚将だったのではないかと
言われ始めたのです。

理由の第一はミッドウェー敗北。
作戦範囲が広い割に作戦目的が
曖昧。帝国海軍は４隻空母を
失って大敗北。

山本は「すべての責任は私にある」
と言いましたが、連合艦隊司令
長官を辞するわけでも自決する
わけでもありませんでした。

開戦直前に近衛首相に勝算を
聞かれた山本は。

・・・半年か一年は
暴れてみせます。

早期講和の予定でハワイ作戦を
策定して真珠湾攻撃。騙し討ち
となって日本の一方的勝利。

たいていの日本人は開戦の臨時
ニュースを明るい気持ちで聞いた
と歴史書は伝えます。

ミッドウェー作戦も成功させて
ハワイ占領した時点で講和に持ち
こむことを山本は考えていた
でしょう。

ミッドウェー敗北によってそんな
目論見も不可能。山本が真に国士
なら、この時点でもう勝てる見こみ
がないことを命を賭して上奏すべき
でした。

山本は無謀なニューギニア作戦を
決定。半ば自死のように出かけて
いって機上攻撃され戦死。

日本の暗号が解読されていた
ことを山本はおそらく知っていたと
私は考えています。

自決する勇気もなく米軍に殺して
もらったというあたりが、およその
真相でしょう。

対米戦争指揮する将官がいなく
なり、責任の所在も曖昧。帝国
陸海軍は統率の取れない無定見
な作戦を次々に繰りだします。

日本指導者は戦争の終え方も
分からず、世界史上稀に見る悲惨
な終戦となりました。責任の多くは
山本にあります。

情に厚いといわれながら、晩年は
新橋の芸者に溺れて軍艦同乗
させようとして部下にやっと
止められた山本。

ハワイ作戦もミッドウェー作戦も
そんな弛緩した精神から
発案されました。

ゼロ戦搭乗員として知られ坂井三郎
はラバウル作戦の頃から、母艦
搭乗員をひたすら戦死させる
上層部に疑問を持ったと回想。

山本司令長官戦死を聞いても
なんの感慨も湧かなかったと
記しています。

目の見える現場兵士には山本の
実体が見えていたということ
でしょう。


May