例年通り、紅白歌合戦を見ながら書いてます。
今年はいつにもましてあっという間に過ぎていった一年でした。2016年は『ヒットの崩壊』、2017年は共著の『渋谷音楽図鑑』と、自分にとって大きな仕事を形にすることができたんですが、2018年はどちらかと言えば仕込みの時期というか、次に向けていろいろと考えを深めていく時期だったと思います。
今年もいくつかの媒体で2018年を振り返りました。
海外の最先端の音楽シーンの動きにアンテナを張っているクリエイター、アーティストおよびプロダクションが一番ヒットしている曲を作っている。そういう流れが明らかに起きているんですよね。
ストリーミングサービスの普及前は『すでに名のあるアーティストに有利なサービス構造だ』と言われていましたが、実は起こっているのは世代交代だったということも改めて証明できたのではないでしょうか。
アメリカ大陸全体に音楽シーンの発信源が点在する状況に変わっているような気もします。
今って、アメリカのヒップホップやR&Bのトレンドと、それをきっちり追いかけていったK-POPと、ガラパゴス化的な進化をしてきたJ-POPと、それを全部フラットに聴いてきた世代の人たちが新しい扉を開けている時代なんだって思ったんです。
年間ベストについては、『ミュージック・マガジン』に寄稿しました。
そちらで選んだのがこの10枚。
● XXX Tentacion/?
● Joji/Ballad 1
● tofubeats/RUN
● 三浦大知/球体
● Post Malone/beerbongs & bentleys
● Jorja Smith/Lost & Found
● 小袋成彬/分離派の夏
● RM/mono.
● THE 1975/ネット上の人間関係についての簡単な調査
● 中村佳穂/AINOU
音楽に関しては、総じて、すごく充実した一年だったように思います。
■2019年に向けて。
「平成最後の~」というキャッチフレーズが食傷気味になるくらい巷に流れた一年だったわけですけれど、そのムードは2019年も、もう少し続くんだと思います。
本当は「とっくに終わって次に行くべきなのに生き残っているもの」が沢山あるという実感もあるんですが、きっと、いつの時代もそうやって移り変わっていくんでしょう。
取材を担当した『さよなら未来』のインタビューで若林恵さんが語っていたんだけど、僕もまったく同意で、音楽という分野は世の中における「炭鉱のカナリヤ」だと思っている。
世の中で起きる変化というものは、特にデジタル以降のテクノロジーの分野においては、音楽が最初に直撃するんです。なので、そこを見ておくと、だいたい何が起こるかわかる。炭鉱のカナリヤのようなものですよね。
もう少し世の中の人は音楽業界で起こっていることが何なのかというのを見ておけばいいのになとは思います。
音楽を出版や映画が後追いして、その後にものすごく遅れて重工業や他の業界で同じことが起こっていく。だから、時代の試金石として音楽を見るべきなんです。
そして、そういう視点で音楽を通して社会を見ていると、今後、数十年かけて「国」という枠組みが溶けていき「都市」がそれを代替するような予感がしています。
そして、「企業」という枠組みも溶けていき、様々な物事が断片化して「個人」同士のゆるやかな結びつきの中で巡っていくようになる予感がしています。
まあ、そこについては長いスパンの変化なので、また今度ゆっくり考えを深めていくとして。
来年も、正直に、足元を見失わないように、やっていこうと思ってます。