今日は告知。11月15日に新刊『ヒットの崩壊』が、講談社現代新書より発売になります。(amazonでは16日発売ですが、書店では15日あたりから並び始めるはずです)
「激変する音楽業界」と「新しいヒットの方程式」をテーマに、各方面に取材して半年くらいかけて書き下ろした一冊です。このブログでも発売までいくつか記事をアップしていこうと思いますが、まずは、ざっくりと内容を。以下が目次です。
■目次
はじめに
第一章 ヒットなき時代の音楽の行方
1 アーティストもアイドルも「現役」を続ける時代
- 「音楽不況」は本当か?
- CDは売れなくともアーティストは生き残る
- 「ブームはいつか終わるもの」だった90年代
- 「遅咲きバンドマン」が武道館へ
- 終わらなかった「アイドル戦国時代」
- 音源よりもライブで稼ぐ時代に
- 失われた「ヒットの方程式」
- 2010年代の前提条件
2 みんなが知っている「ヒット曲」はもういらない?
- 小室哲哉はこうしてヒットを生み出した
- タイアップとカラオケがもたらしたもの
- 「刷り込み」によってヒットが生まれた
- 宇多田ヒカルの登場と20世紀の大掃除
- AKB48とSNSの原理
- 動員の時代
- いきものがかり・水野良樹が語るJ-POPの変化
- 音楽は社会に影響を与えているか
- バラバラになった時代を超えるために
- 「共通体験」がヒットの鍵を握る
第二章 ヒットチャートに何が起こったか
1 ランキングから流行が消えた
- 異様な2010年代の年間チャート
- オリコンチャートからは見えない「本当の流行歌」
- 音楽は特典に勝てない
- オリコンはなぜ権威となり得たか
- 「人間の対決」が注目を集める
- ヒットチャートがハッキングされた
- そもそもCDを買う意味とは
- オリコンの未来像
2 ヒットチャートに説得力を取り戻す
- ビルボードが「複合チャート」にこだわる理由
- 「ヒット」と「売れる」は違う
- ランキング1位の曲を思い出せるか
- 懐メロの空白
- カラオケから見える2010年代の流行歌
- 定番化するカラオケ人気曲
- J-POPスタンダードの登場
- ヒット曲が映し出す「分断」
第三章 変わるテレビと音楽の関係
1 フェス化する音楽番組
- 東日本大震災がテレビと音楽の歴史を変えた
- 各局で超大型音楽番組が拡大中
- フェス文化を取り入れて進化した
- 「入場規制」が人気のバロメーター
- スマホでフェスが生中継される時代に
- 制作者の意識はどう変わったか
- 「メディアの王様」ではなくなった
- 「音楽のお祭り」を作る
2 テレビは新たなスターを生み出せるか
- 狙いは「バズる」こと
- 人気を測る尺度が複数になった
- テレビの役割は紹介になった
- 『ASAYAN』以降の空白
- 世界的なスターは今もテレビから生まれている
第四章 ライブ市場は拡大を続ける
- ライブビジネスが音楽産業の中心になった
- 音楽体験は「聴く」から「参加する」へ
- 「みんなで踊る」がブームになった時代
- 時間と空間を共有する
- 前代未聞の「事件」がもたらしたもの
- アミューズメント・パーク化したフェス
- スペクタクル化する大規模ワンマンライブ
- ピンク・フロイドとユーミンがライブを「総合芸術」にした
- ライブの魅力は「五感すべて」の体験
- メディアアーティストがライブの未来を作る
第五章 J-POPの可能性――輸入から輸出へ
1 純国産ポップスの登場
- 洋楽コンプレックスがなくなった
- J-POPの起源にあった「敗北の意識」
- ニッポンの音楽の「内」と「外」
- 演歌も「舶来文化」から生まれた
- 『風街ろまん』が日本のロックの起点になった
- はっぴいえんどのイノベーション
- アメリカへの憧れと日本の原風景
- 洋楽に憧れない世代の登場
- J-POPが「オリジン」になった
- なぜカバーブームが起こったか
- ブームの仕掛け人は誰か
- 大瀧詠一の「分母分子論」
2 新たな「日本音楽」の世界進出
- なぜBABYMETALは世界を熱狂させたのか
- 「カレーうどん」としての発想
- 「ミクスチャー」から生まれた発明
- 「過圧縮ポップ」の誕生
- 「パンク」としてのきゃりーぱみゅぱみゅ
- 原宿の元気玉
- 中田ヤスタカが作る次の「東京」
第六章 音楽の未来、ヒットの未来
- 過渡期の続く音楽業界
- 所有からアクセスへ
- 拡大するグローバル音楽産業
- 世界の潮流に乗り遅れた日本の音楽業界
- 変化を厭い「ガラパゴス化」した
- この先に何が訪れるのか
- 音楽を“売らない”新世代のスター
- アデルの記録的な成功
- 「ニッチの時代」は来なかった
- ロングテールとモンスターヘッド
- サブカルチャーとしての日本音楽
- 小室哲哉の見出す「音楽の未来」
- unBORDEの挑戦
- 健全な「ミドルボディ」を作る
- 水野良樹が語る「ヒットの本質」
- 「歌うこと」が一番強い
- 音楽シーンの未来
おわりに
ヒット曲は、かつて時代を反映する”鏡”だった。果たして、今はどうだろうか?
――というのが、本の全体のテーマ。「コンテンツ」から「体験」へと消費の軸足が移ってきたここ10数年の変化を経て、音楽ビジネスのあり方はどう変わってきたのか? そして日本の音楽シーンのこの先はどうなっていくのか? というのを、ミュージシャン、プロデューサー、マネジメント、ヒットチャート、テレビ、カラオケ……という各方面のキーマンに取材して書きました。
取材に快諾いただいた小室哲哉さん、いきものがかり・水野良樹さん、オリコン株式会社の垂石克哉さん、ビルボード・ジャパンの礒崎誠二さん、株式会社エクシングの鈴木卓弥さんと高木貴さん、フジテレビの浜崎綾さん、ヒップランドミュージックコーポレーションの野村達矢さん、牧村憲一さん、ワーナーミュージック・ジャパンの鈴木竜馬さんには心から感謝をしております。
手前味噌ですが、音楽ジャーナリストとしての勝負作のつもりで書きました。発売はもう少し先ですし、まだ書影も出てないくらいの段階ですが、ぜひチェックよろしくお願いします。