ロースクール成績底辺者でも合格可能です!
1 司法試験の受験を決意した経緯・合格までの道のり
弁護士というものを明確に意識しはじめたのは中学三年生の頃、私が幼い頃から通い続けている美容院の店長が、系列の経営陣とちょっとした揉め事に発展した時でした。そのトラブルを、税理士の父と、父の提携先の弁護士先生とが協力して、何とか解決できたのを目の当たりにし、身近な人のためになれる士業という業種によりいっそく注目し、かつ、それら士業の頂点に立つとでも言うべき弁護士という職業に強く惹かれるようになりました。
そうして、私の父が営む税理士法人をいずれは継がなければならないのならば、弁護士+税理士の、いわばダブルライセンスとして、家業の税理士法人をさらに発展させてみよう、と決意し、司法試験を目指すに至りました(弁護士の資格を有していれば税理士等の他の士業にも登録できることはこの時知りました。)。
2 法科大学院受験前の学習状況(法律学習)
ご存知の方もいるとは存じますが、私の出身の中央大学は、法曹志願者のための施設、いわゆる「炎の塔」があります。そのため、大学在学中の司法試験勉強は、専ら炎の塔内の講座やゼミの予習復習、そして普段の大学の授業で賄っており、特に予備校に費用をかけることもありませんでした。このように、他の大学と比較しても、法曹志願者に対して群を抜いて手厚い中央大学の施設環境は大変ありがたいものでした。
また、試験勉強一辺倒というわけでもなく、サークル活動とも両立し、かつ、趣味(TVゲーム)の時間に没頭する時間もありました。そうして、ロースクールもそのまま中央大学の法科大学院に進学し、学費半額免除で入学しました。
今振り返ってみても、ここまでは順風満帆な受験生生活だったと思います。少なくともコロナが直撃するまでは。
3 法科大学院入学後の学習状況(法律学習)
ところが、ローに入学した2020年4月、そう、みなさんご存知、新型コロナウイルスがはじめて世界で流行した時期に直撃すると一変します。その頃(少なくとも2020年度前期の授業まで)は、ロー側も、オンライン学習の環境は全く整っておらず、課題提出形式の授業でした(例えば、教科書のここの部分を読んで、今週はこの課題を提出して、翌週以降で講評のPDFファイルが配布される、といった感じです。)。わざわざ高い学費を払ってまでやる授業がこれかと思い、ローの授業ひいては司法試験に対するモチベーションはどん底にまで尽きて、ローの授業をこなす以外の試験勉強は一切やりませんでした。幸い、単位は全て取れたものの、GPAは留年スレスレになり、さすがにまずいと思い、後期以降は必死でローの授業の予習復習に取り組み、何とか留年は免れました。もっとも、ここでの半年間の遅れが災いして、この2年次(既習1年目)での試験勉強は、専らローの授業を中心とし、過去問に取り組む猶予は全く取れませんでした。
そして、3年次(既習2年目)になってからは、そろそろ過去問を解きはじめないと遅いと思い、過去問学習に重点を置きました。重い授業の単位は2年次の時点で全て消化しきっていたため、比較的、過去問に時間を割く余裕ができました。しかし、この年に、私の父が、悪性の脳腫瘍(グリオーマ)と診断されます。年明けの2月以降からは専ら父の介護の手伝いに時間を割かれました。当然、家につきっきりで、自習室や図書室など行く余裕もありません。また、それ以上に、介護に伴う精神的負担も大きく、ここで再び、司法試験のモチベーションが消失してしまいました。本来であればこの追い込みの時期にたくさん勉強しなければならないところ、勉強の時間も、その気力も全くありませんでした。ダメ元でロースクール修了後初回の令和4年司法試験を受験するも、案の定不合格でした。そして、私の父も、令和4年8月に永眠致しました。
と、改めて振り返ってみても、波瀾万丈のロースクール生活だったと思います。残り受験回数は4回あるものの、母子家庭になってしまった家族の金銭的負担にも鑑みれば、そこまでの回数は受験できない、実質次の令和5年が最後かもしれないと、まさしく背水の陣のような状況でした。もっとも、幸いにも、私に足りていないものは明確に見えていたため(下記の「4 受験対策として)」で後述)、この状況ほど、絶望していたわけではありませんでした。
4 受験対策として
(1)辰已講座の利用方法とその成果
(ア) スタ論第1・第2クール 全国公開模試
上述した私に足りていなかったものの1つ目が「他の受験生との相対的な位置を把握する視点の欠如」です。ご存知の通り、たしかに司法試験は最難関の国家試験ではありますが、”試験”である以上、相対評価で合否が決まります。仮に試験本番で素点40点しか取れていなくても、他の受験生が皆20点しか取れていなかったら、40点でもA評価が取れてしまうのです。辰已のスタ論や模試は、数百人規模の母数がいて、なおかつ、他の予備校と比較しても詳細な採点基準が設けられているため、それらの数をこなしていくうちに、自ずと、そういった相対評価の肌感覚がわかってきます。
(イ) 短答完璧講座
私に足りていなかったものの2つ目が、「短答対策に本気で取り組まなかったこと」、詳述しますと、「短答式試験については、受験者平均点さえ取れればいい」とたかをくくっていたことです。中には、短答は論文の1/8しかないのだから、論文で挽回すればいいとお考えの受験生もいることでしょう。しかし、逆に考えれば、試験科目が全部で9科目あるうちの1科目を棒にふっていることも意味するとも言えます。そして、短答式で高得点(140点)をマークできれば、論文の負担を大きく減らすことができます。私が受験した令和5年を例にとって考えてみましょう。仮に短答で140点を取ることができた場合、令和5年の合格最低点は770点ですので、論文の合計点は360点取ればいいことになります(短答の合計点140点+(論文式の合計点×1.75)=770の計算です。)。つまり、8科目ごとに45点を取ればいいことになります(360÷8=45)。そして、令和5年の各科目ごとの平均点(累計割合が50%の点数)は、選択科目(私が選択したのは租税法です。)が46点、公法系が96点、民事系が145点、刑事系が96点となります。すなわち、各8科目の平均点は、だいたい47~48点となります。各科目45点でいいわけですので、各科目ごとに平均点を3点下回ってもいいのです。ただでさえ最高峰のレベルの司法試験受験生層から少しでも平均点から多く点を取って、他の受験生と差をつけるということの困難さに鑑みれば、この平均点-3点という猶予のもつ重みが理解いただけるのではないでしょうか。そして、ただ闇雲に過去問を周回するだけでは、高得点をマークするのは不可能です。短答を足切り回避のためではなく、一つの試験科目と捉えて”真剣に”取り組みましょう。そのためには、論文でも頻出の出題事項から、根抵当権などの多くの受験生が手薄になりがちな出題事項まで、どの知識が、どのように出題されるのかを満遍なく、かつ、効率よく確認できる「短答完璧講座」は、最適な短答対策になりえます。
(2) 私のノート作成術
私は、一元化のまとめノートやロースクールの授業のノート等の代用として、MicrosoftのOneNoteというデジタルノートのアプリケーションを利用していました。ノートやルーズリーフによる紙での管理だと、数が多くなるにつれて管理が大変になり、また、図書室等の自習室に教材を持参する際にも、更に荷物が重なってしまいます。これをデジタルノートとして管理することで、そういった紙での管理の煩雑さから解放され、よりコンパクトに試験勉強ができます。また、このOneNoteはiOS版もあります。そのため、電車のちょっとした移動時間でまとめノートを見返したいときや、体調がすぐれない日で過去問起案等をする気力はないけど、何かしらの勉強はしておきたいといった日にも活用できます。
(3) 私が使用した本
(ア) 短答パーフェクト
短答対策のためには、パーフェクトか、肢別本かは、諸説あるかと思われますが、私は、パーフェクトの方が適切であると考えます。正答率が30%~40%程度しかない過去問でも、他の過去問と比較対照してみると、正解を導くために必要な知識は、実は既に過去に何度も出題されている知識ではあるものの、それが紛らわしい形で出題されていたりすることが圧倒的多数です。そういった”気づき”とそのための対処を積み重ねていくことが、短答で高得点を取るためには必要だと考えます。これは、肢別ではなく、過去問ごとに掲載されているパーフェクトならではの利点です。
(イ) ぶんせき本
月並みなことではありますが、過去問学習の際に、合格者の再現答案が手元にあるか否かで効果に大きな差異が生じます。たしかに、他の受験生の出来不出来を分析できる資料として、採点実感があります。しかし、採点実感における講評は、高望みしがちな傾向にあります。そのため、例えば、採点実感では、ある論点について不十分な論述しかできないことに対して辛口な評価がなされているものの、そのような不十分な論述しかできていない再現答案でも、A評価を取れていた、ということは多々あります。このように、採点実感と再現答案の両者をうまく組み合わせて有効活用することが、効果的な過去問学習に繋がります。
(ウ) Live本
前述のとおり、採点実感は必ずしも十分ではないことから、過去問の解説についても、別途、補う必要があります。そこで、信頼できる教授の先生や実務家の先生などが丁寧な解説を執筆してくださり、また、適宜、採点実感に対する批評などもしてくださる本書はとても役に立ちます。
5 自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス
司法試験を揶揄する言葉として「司法試験は資本試験」という言葉があります。これは、司法試験は、法科大学院の高い学費に加えて、司法試験予備校の高い講座を受け、高いお金を惜しみなく使える受験生こそが、結局は楽して合格できるという意味です。なかなか合格できずにいる複数回受験組の受験生には、この言葉とは反して、あまり費用をかけていない人であるように思われます。実際に、初回の令和4年試験に不合格だった当初の私もそうでした。予備校の講座や答練などが高いということは、上手くこなせばそれだけ高いリターンが見込めるということの裏返しでもあります。ご家庭の事情等により、なかなか高いお金を払うことが躊躇われる受験生もいることでしょう。しかし、そのような高いお金は、弁護士になった際の初任給でお釣りがくる程度の額です。ここはひとつ腹をくくって、司法試験合格のために投資してみてはいかがでしょうか。
最後になりますが、法科大学院を成績下位で修了した私をわずか1年で合格まで導いてくれた辰已法律研究所の講師の先生方に、この場を借りて、お礼申し上げます。誠にありがとうございました。