知的財産法の攻略法
1 知的財産法を選択した理由
選択科目として知的財産法を選択した理由として、当該法分野に興味があったことと、試験科目としての性質が自分に合っていると感じたことが挙げられます。
弁護士を目指そうと思ったきっかけが、知財関連紛争に関するニュースに触れたことだったため、もともと知財を勉強してみたい、という興味がありました。興味があること自体と試験で点数が取れることには直接の関連はないのですが、興味がある法分野は、勉強がそう苦でないため、短い期間で一定程度の完成をみる必要があった選択科目を学習する上では、興味があるということは、一定程度重要なことだと思います。
また、後述するとおり、知財は用いる条文が豊富で、条文操作および要件該当性の検討に相当の配点があるように見受けられます。他の科目と異なり、単科目で科目足切りのある選択科目では、高得点が狙えることよりも、大失敗をしないことの方が重要であると考えていました。私はこのようなやや細かな条文操作は嫌いではありませんでしたし、分量を多く書くことにもあまり抵抗はありませんでした。そこで、このように科目の性質と自分のタイプが合っている知財を選択すれば、大失敗することはないだろう、と考えて、選択に至りました。
2 知的財産法のメリットとデメリット
知財の特徴は、条文操作が重要となること、(近年はそうでもありませんが)当てはめがあまりないこと、検討事項が多いためある程度定型的な議論が可能なこと、あたりだと考えていました。
条文操作については述べた通りです。勉強を始めると分かりますが、頻出条文だけでも相当の数があるほか、民法、行政事件訴訟法等、基本七法を参照することさえあります。条文操作に苦手意識があると、デメリットに感じるかもしれません。
当てはめもそう多くありません。要件の該当性が問題文に直接に書かれていることもしばしばあります。そのため、おのずと法解釈に勝負の重きが置かれることになります。理論面について考えるのに抵抗がない方の場合、この点はメリットになりそうです。
検討事項が多いことは、書く分量が多くなるという意味ではデメリットになりそうです。しかし、ちょっとした検討漏れが致命傷となりづらい点で、点数が安定しやすいというメリットがあるように思います。また、重要条文の要件該当性を検討する部分で一定の点数が獲得できる、というように、定型的な議論の部分で点を確保しやすいということもメリットだと思います。
その他、よく言われることとして、勉強量が多くて大変だ、というようなことがあります。たしかに、学習範囲はもちろん狭くはないのですが、後述のとおり、3ヶ月ほどの学習で上位に食い込むだけの準備ができたので、勉強量の多さは特に感じませんでした。科目の特性以上に、科目との相性の方が苦労の度合いを決定するのではないかと思います。勉強量が多い、と一般に言われているような科目(労働法や倒産法等)と比べる際には、あまり細かな量の差にとらわれず、相性が合うかどうかを吟味すると良いと考えます。
3 予備試験合格後の学習状況
予備試験合格後、他の予備校でインプット講義を受講しました。そののち、市販の演習書である知的財産法演習ノートと、他の予備校の司法試験過去問の解説講義を受講しました。これらの問題を解き終えたのち、辰已の選択科目集中答練という、選択科目の答練を受講しました。ここまでで知財を集中的に学習するのは終え、以降は、演習ノートと過去問の問題を何度も復習して、答案での作法を学んでいきました。集中的に学習していた期間は3ヶ月間くらいで、聞いていたほど長くはかからない科目であるように感じました。
4 私がやって成功した選択科目攻略法
過去問を、実力試しのために大事に取っておくようなチャレンジ問題とせず、日頃から何度も解いて、丸暗記する勢いで周回するための演習素材としたことがよかったように思います。もう14年分も知財の過去問が存在するので、主要な論点については、過去問を素材にすれば十分な理解ができるようになりました。
また、演習量を十分に確保したこともよかったように思います。選択科目は、基本七法と比べると対策が後回しになり、過去問と模試くらいでしか演習の機会がなかった、という人の話を聞くことがあります。私は、演習書の関連問題も含めた問題の答案構成と、選択科目の答練の受講により、過去問以外の問題を50問近く解くことができました。司法試験本番では、今まであまり過去問で検討したことがないタイプの問題が出た(と思っている)のですが、選択科目集中答練で似たような頭の使い方をした問題があったため、そこまで焦らずに検討ができました。
5 使用した本
知的財産法は、あまり近年の改正を反映した参考書がないため、演習書である前述の知的財産法演習ノート(弘文堂)と、基本書である小泉先生の特許法・著作権法(有斐閣)以外にあまり候補がなかったように思います。この二冊を用いました。
辰已のハイローヤーという、受験応援雑誌があり、選択科目大ヤマ当ての回は購入して、一読しました。
判例集については、直近の重要判例が素材判例になることも少なくないことから、百選を購入して解説を読んでもよかったな、と反省しています。短答対策の意味で直近3年分の重要判例解説を買っていたため、知財の部分はざっと目を通していました。
6 辰已講座の利用方法とその成果
辰已の講座で知財に関連するものとしては、全8回の選択科目集中答練と、2回の選択科目の回があるスタンダード論文答練、全国公開模試を受講しました。いずれも演習の機会を用意するのに有用で、特に選択科目集中答練は、繰り返しになりますが、周りの受験生より選択科目が得意になったきっかけとなったので、知財選択か否かに関係なく、強くオススメしたい講座です。
7 自己の反省を踏まえ、これから受験する方へのアドバイス
7.1 知的財産法初学者へのアドバイス
特許法であれば、特許権の一生(出願から登録まで、登録以降の侵害について)のどこが問題となっているのか、著作権法であれば、著作物・著作者・支分権・権利制限規定、という体系をそれぞれ意識することが重要です。論証等を暗記する上でも、実際に答案を作成する上でも、この点の意識が思考をクリアにするのに役立つためです。
7.2 次回受験する方へのアドバイス
基本的には初学者の方へのアドバイスと同様のことが言えると思います。それに加えて、一定程度理解が進んでいて、演習も進んでいる状態であれば、直近の重要判例の理解を深める勉強をしてみてもいいかもしれません。判例の射程を問うような問題がよく出題されているため、その対策になるためです。
辰已法律研究所 受講歴
【予備受験】
・予備スタ論
・直前予想答練
・短答模試
・論文模試
・口述模試
【司法受験】
・司法スタ論
・過去問答練
・公開模試
・選択科目集中答練