本年、2025年はヘビ年。
前回のヘビ年(2013年)から今年まで良い記憶が無かったことを前回の記事で綴ったが、何もしていなかった訳ではない。
そこで12年を振り返ることで、これからのヒントを得よう。
2014年(ウマ)。大学を卒業してやることを見つけられなかった自分はメキシコを偏愛していて、この年をメキシコの地で迎えた。メキシコ料理を探求し、テキーラ畑をオートバイで駆けた。このままメキシコに居続けたい気持ちもあったが、所持金が底をつきはじめてきた。メキシコで効率的な職に就く方法も思いつかないし、何しろ言語習得が苦手だった。一旦日本に帰って、少し働いて金が貯まったらまた来ようという軽い気持ちで帰国、地方にあるフツーの会社に就職した。数カ月ぶりの日本は何をしても気持ちの高ぶりに欠けて、白黒映像を見ているような味気なさを感じた。この感覚はつい最近まで治らなかった。
2015年(ヒツジ)。今の若者(いわゆるZ世代と言われる人たち)はワークライフバランスを大切にしているらしい。仕事の選び方は、時間と体力を極力奪われず責任が分散されているものを好む。自分は10年以上も前から同じような考え方だった。良く言えば先進的な考えの持ち主だ。仕事をはじめるにあたって、モチベーションは「隠居」だった。なめている。
2016年(サル)。仕事をなめているとは言え、やるからにはより良く、公のために効率を考えて取り組んだ。趣味では渓流のフライフィッシングに挑戦し、あのめんどくさいシステムで自家製の毛鉤を飛ばし、魚をだまくらかすなどした。
2017年(トリ)。渓流釣りは楽しかったけど、虚しい一面もあった。渓流釣りとは自然との対話をイメージしていたが、その実態は地元の漁協が毎年放流する魚を釣り人が入漁料を払って釣るシステムだ。渓流釣りは今も人気の趣味で、放置しておけば魚は絶滅するくらい釣られてしまうらしい。そこで漁協が介入するのである。メキシコの大自然で投網を習った身としては興ざめである。
仕事の方は、今日の価値観で典型的なダメ上司に当たってしまい、参った。だが10年前である当時は、それほど価値観が発展していなかったのだろうか。日本の悪習が近年まで残る生き証人として、ある意味で好材料を目の当たりにできた。酒の量はこの頃から増えたかもしれない。
2018年(イヌ)。そろそろ仕事も潮時かと思ったが、県外に派遣される提案が人事からあった。良くわからず受けてみた。派遣先は、山あいの厳寒地。農作物のみならず、趣味や文化までもが乏しい地域だった。日本昔話をイメージしてほしい。こんなところがまだ存在するんだなと関心した。
趣味の方は、オートバイに夢中になっていた。古いハーレーに乗ることが生きがいで、氷点下でも喜んで乗っていた。そして酒も飲んだ。
2019年(イノシシ)。派遣先での仕事はきつかった。他会社への人事交流という名目だから、自分はある意味お客様的な扱いを受けるものと呑気に構えていた。しかし蓋を明けてみれば、一挙集中の使いっぱしりで、とにかく全部やらされた。上司同僚は楽そうである。文句のひとつでも言いたいようだったが、会社同士の関係が悪くなってはいけないと、我慢してこなした。いわば逃げられないように両手両足を縛られたままサンドバッグにされているような感覚だった。
おかげで個人的には力がついて、先方の情報もたくさん得た。結果的に、今後この業界で仕事するにはとても楽になった。
ちなみにこの年にハーレーを降りた。ハーレーも楽しいけれど、10分の1の排気量でもメキシコをオートバイで走ったワクワクには敵わなかった。
2020年(ネズミ)。バイクを降りて、次は車だと思って空冷ビートルに乗り換えた。空冷ビートルはメキシコでよく見かけており、いつか乗ろうと決めていた。派遣中は手当も残業代も貰えたので、この頃は勢いがあった。思えば、今日の物価高になる前に趣味を謳歌し尽くせて良かったと考えている。機械いじりやプロダクトの勘所を味わえたのは、車関係の趣味を一生懸命やったおかげだし、今の仕事にも役立っている。
仕事は派遣任期を終えて元会社に戻るが、戻った先の女上司はヒステリック感があった。私は地方や田舎を好むが、田舎は文明が遅れている分、民度が低いのかもしれないと思い始めた。都会かぶれの妹によると「都会ほど洗練され、変な人は少ない」と言う。私自信は変な人の自負があるので、田舎がお似合いだと思っている。
2021年(ウシ)。この頃から先輩に勧められたアガベ園芸にハマっていった。アガベはメキシコの植物だし、テキーラの原料でもあるので、これまで何度も対峙していた。先輩に勧められたのは鑑賞用のアガベだったが、すぐに気に入った。気に入りすぎてユーチューバーデビューもした。ユーチューブは俺の黒歴史になるだろう。
2022年(トラ)。アガベとユーチューブを一生懸命やった。一生懸命やれば多くのことを学ぶことができる。このような熱を持てることを仕事にできたなら、その人生は幸せであっただろう。その面では、私は人生の選択を失敗したと現時点では思っている。ただ、終わってみるまではわからないとも感じている。
ちなみにユーチューブで気が大きくなっていたせいか、この年に家も建て結婚した。熟考はせず半ば勢いであった。今思うと物価上昇直前の良いタイミングだったかもしれない。
2023年(ウサギ)。この頃から職場では無敵になってきた。威張る訳ではないけど、アホには付き合わなくても仕事を進められる裁量がもてるようになっていたし、自分が考えた案はだいたい通るようになった。こうなると仕事にストレスを感じない。ついでに辞め時もわからなくなってしまう。ちなみに一度だけ転職を考えたがうまくいかなかった。転職すれば現職の無敵タイムを放棄する結果になってしまうので、失敗して良かったのかもしれない。
2024年(タツ)。新年早々に1カ月の入院。肝臓がイカれた。体力の衰えを感じる。一日一日を丁寧に生きることを意識した。そしたら更にストレスなく生きれることがわかった。アガベもユーチューブも過熱しすぎていた感があった。これらを少し控えることにした。年末には大学の同級生に会った。楽しすぎて酔っ払ってしまった。俺はこいつらが好きだ。大学時代が妙に楽しかったのも、こいつらのお陰だったことを改めて実感した。
2025年(ヘビ)。この年は自分にとって転機となる。これまで枯れた土地で粛々と生き延びた成果が実を結びはじめるような気がする。
乾いた土地の植物はだいたいかっこいいはずだ。