1 現況
現在、高齢者の方による犯罪の割合が増加し、現在では10%を超える程度となっています。
特に、窃盗罪と占有離脱物横領罪(道に落ちている物を拾った場合です)が9割近くを占めています。
高齢者の方の中には、認知症が原因となって、自分の行動や社会のルールが十分理解できていない方が居られます。
2 刑法39条
【刑法39条】
1 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
刑法39条は、心神喪失・耗弱者の刑について定めています。
「罰しない」というのは、文字通り罰しないことを意味し、「減軽する」というのは法定刑を2分の1することを言います。例えば、詐欺罪の場合は10年以下の懲役という法定刑になっていますが、これが半分になると5年以下の懲役ということになります。
3 心神喪失・耗弱者とは?
心神喪失とは①物事の良い・悪いを判断する能力②その判断に従って行動する能力のどちらかが欠けている状態を指します。①②の両方が欠けている必要はなく、どちらかが欠けているだけで構いません(もちろん両方欠けていても構いません)。この①か②が欠けている状況のことを、責任能力がないなどと言います。
心神耗弱とは、①②の両方とも完全に欠けているわけではないが、①②のいずれかが著しく減退している状況にある場合を指します。
4 認知症の場合
被疑者・被告人の方が認知症を患っている場合には、①②に影響が出ていると考えられます。しかし、「認知症」という診断があるからという理由で、例えば心神喪失であるとして無罪になるとは限りません。もちろん、病名が重要な要素にはなってくるのですが、責任能力の有無はそれ以外の要素も考慮して、検討するとされています(詳しくは下記をご覧ください)。
5 Q&A
①心神喪失かどうかはどのように判断するのですか?
判例では、病名だけではなく、犯行当時の病状・犯行前の生活状態・犯行の動機・態様等総合考慮して判断するとされています。
その中で、医師の判断は、不合理でない限り尊重すべきであるとしていますが、責任能力の有無は法律上の判断なので、究極的には裁判所が判断するとしています。
②認知症はどのように考慮されるのでしょうか?
責任能力の有無で考慮されますが、それ以外の情状でも考慮されます。
認知症であれば、物の善悪を判断する能力や、善悪の判断に従って行動する能力が失われている可能性があります。そのため、責任能力がないという判断になる可能性があります。
また、認知症が犯行に影響している場合には、たとえ責任能力があると判断されたとしても、通常の犯行とは異なるとして、処分・刑を決定するのに有利な影響を与えていることとなります。
~責任能力の弁護~
1.早期に示談交渉に着手して、不起訴処分・略式罰金など有利な結果を導けるように活動します。
認知症の方が起こした犯罪が窃盗や占有離脱物横領罪の場合は、被害者がいる犯罪であるため示談解決がポイントとなります。示談は契約ですので、被疑者と被害者が合意することにより作ることになりますが、相手の被害感情を考えると直接被疑者が被害者と交渉を行うのは困難であり、示談ができたとしても不相当に過大な金額での示談解決になる可能性が大きいと考えられます。
一方、弁護士を通じれば、冷静な交渉により妥当な金額での示談解決が図りやすくなります。
2.早期の身柄開放を目指します。
逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。
3.窃盗・占有離脱物横領罪が成立しない主張
認知症の方が窃盗・占有離脱物横領罪を犯した場合、責任能力がないとして無罪になる可能性があります。そのため、客観的な証拠に基づき、責任能力に関する主張をする必要があります。
弁護士は、客観的な証拠に基づいてご依頼者の立場に立って主張・立証し、不起訴処分・無罪判決の獲得を目指します。
4.更生環境の整備
認知症の方が罪を犯した場合には、処分を決めるにあたり、再犯可能性がどの程度あるかが問題となります。
弁護士を通じ、福祉事務所と連携し、再犯を行わない環境づくりを行うことが重要になります。
事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部へお問い合わせください。
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被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く初回接見サービスもご提供しています。
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