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被害者対応

1 捜査機関に対して可能なこと

(1)被害届の提出

犯罪の被害に遭われた場合、まずは被害届を警察に提出することが必要になります。

警察は、被害届が出ていない事件について、基本的には捜査を開始することはありません。

犯罪の被害に遭われたら、まずは警察署に行きましょう。

(2)告訴状の提出

一定の犯罪(名誉棄損罪や器物損壊罪)の場合には、告訴状というものを、被害届とは別に提出しなければ、犯人を裁判で処罰することができないとなっています。

そのため、警察に対して、被害届とは別に告訴状を提出する必要があります。

(3)検察審査会制度

犯人が見つかったものの、最終的に起訴猶予処分とされてしまうことがあります。起訴猶予処分の場合には、犯人は刑事罰を受けることがありません。また、場合によっては嫌疑不十分などで不起訴にされることもあります。

これらの不起訴処分に不服がある場合、検察審査会に申し立てを行うことができます。

検察審査会に申し立てを行うと、一般市民が記録を精査し、起訴すべきでないか再度検討することになっています。また、場合によっては検察官の意向に反して強制的に起訴することも可能です。

(4)Q&A

  1. 被害届と告訴の違いは何?告訴は、犯人の処罰を求める意思表示です。告訴を受理した捜査機関は捜査を開始しなければならず、捜査開始の有無が警察の判断にゆだねられる被害届とはこの点で大きく異なります。
  2. 自分の子どもが犯罪にあったのですが、親が告訴できますか?できます。刑事訴訟法231条1項は、「被害者の法定代理人は独立して告訴をすることができる」と規定されています。但し、お子様の2次被害を考えると、お子様の意思を尊重すべきであり意に沿わないような告訴を行うことには熟慮が必要と考えます。
  3. 告訴は取消しできるの?公訴の提起があるまでは取下げができます。ただし、告訴の取消しをした場合は、更に告訴をすることができないので取下げには慎重
  4. 被疑者がどうなったかは知れるのですか?はい。可能です。検察庁に対して、処分通知の送付を依頼すると、最終的にどのような処分となったかを教えてもらうことができます。

2 裁判で可能なこと

(1)事件の情報を知りたい(記録の閲覧・謄写請求)

裁判で提出される証拠を、一定の場合に見ることが可能です。

(2)加害者に対して自分の思いを伝えたい(心情意見陳述、被害者参加制度)

【心情意見陳述】

被害者の方は、裁判の場で、現在の気持ちや、処罰感情について意見を陳述することが可能です。ここで述べた内容は、情状に関する証拠として利用することができます。

【被害者参加制度】

一定の犯罪(※)について、①情状に関する事項についての証人(情状証人)に対して尋問すること(被害者による情状証人に対しての弾劾を認める規定)、②被告人に対する質問(心情意見陳述などの実効性を確保するための規定)、③事実・法律の適用に関する意見の陳述が可能となります(被害者論告といい、被害者自身の立場から求刑意見を述べることが可能)。

なお、被害者やその法定代理人から委託を受けた弁護士もかかる制度の申し出をすることができます。

※一定の犯罪

  1. 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
  2. 不同意わいせつ(旧 強制わいせつ、準強制わいせつ)、不同意性交等(旧 強制性交等、準強制性交等)、監護者わいせつ、監護者性交等の罪
  3. 業務所過失致死傷、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱(無免許の場合を含む)、過失運転致死傷の罪(無免許の場合を含む)の罪
  4. 逮捕および監禁の罪
  5. 略取誘拐、人身売買の罪
  6. ②~⑤の犯罪行為を含む犯罪
  7. これらの未遂罪

3 損害の回復

【示談】

示談をし、一定の金銭の支払いを受けることで、被害回復を受けられます。

もちろん、示談をすれば、一般的には加害者の処罰は軽くなります。

しかし、示談をしなければいつまでも事件が長引きますし、場合によっては証人として裁判への出廷が求められる場合もあります。

一概には言えませんが、早期に解放されたい場合には、示談をするのも一つの方法ではあります。

【犯罪被害者等給付金制度】

殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死を遂げた犯罪被害者の遺族または重傷病または障害という重大な被害を受けた犯罪被害者に対して、国が給付金(遺族給付金等)を支給する制度です。なお、申請は捜査段階に限りませんが時効消滅(※)との関係で期間制限はあります。

国からの給付金ですので、加害者の資力の有無はといません。
ただし、不支給事由、給付制限、時効消滅の問題等がありますので、犯罪被害者等給付金制度については一度ご相談ください。

【刑事和解】

被告人と被害者が、示談等の内容を刑事裁判の公判調書に記載することを共同して求める制度です。

これにより、裁判所を通じて示談が成立したのと同様の効果を得ることができ、もし、加害者が支払いを怠った時などに、強制執行をすることが可能となります。

【損害賠償命令】

一定の犯罪について、簡易・迅速な手続きによって、被告人に被害者への損害賠償を命じるよう裁判所に申立てることができます。民事訴訟に比して労力と費用の負担が少ない点がメリットとして挙げられます。刑事裁判の証拠等を利用するので、改めて民事訴訟を起こすことなく、民事訴訟を行ったのと同じ効果が得られます。

(※)一定の犯罪

  1. 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
  2. 不同意わいせつ(旧 強制わいせつ、準強制わいせつ)、不同意性交等(旧 強制性交等、準強制性交等)、監護者わいせつ、監護者性交等の罪
  3. 逮捕および監禁の罪
  4. 略取誘拐、人身売買の罪
  5. 上記②~④の犯罪行為を含む犯罪
  6. これらの未遂罪

4 加害者に個人情報を知られない方法

法律・実務上、例えば下記のような制度・運用があります。

(1)被害者情報秘匿

性犯罪等では、加害者に住所・氏名を知られると再び被害が発生する可能性等が心配されます。

しかし、示談をする場合には、どうしても氏名や住所を記載しなければなりません。

そのため、実務上は、弁護士にのみ氏名や住所を教え、加害者には直接教えない形で示談を行うという運用がなされています。

また、逮捕状や勾留状発付時も被害者の情報が記載されないままで発付されることもあります。

(2)被害者特定事項の秘匿

一定の犯罪(性犯罪等)に関しては、被害者の情報が公開の法廷で明らかにされると被害者の方に2次被害が生じてしまいます。

そこで、裁判所は一定の場合、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができます。

この場合、起訴状には実名が書いてありますが、法廷では「被害者」や「Aさん」と呼ぶこととなります。

(3)被害者が証言する際の保護(「付添い」、「遮蔽」、「ビデオリンク」、「退廷」制度)

【付添い制度】

裁判所は、証人を尋問する場合において、証人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を
与えるおそれがないと認める者を、その証人の供述中、証人に付き添わせることができます。

被害者の両親が横にいた状態で供述するようなことがあります。

【遮蔽制度】

裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が被告人の面前において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、被告人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができます。

【ビデオリンク制度】

訴訟関係人等が、テレビモニターを用いてその姿を見ながら、マイクを通じて証人尋問を行うものです。現行法は、同じ裁判所構内の別室に在席する証人に対して行われていましたが、改正法では同一構内以外の裁判所(別の裁判所)でも、一定の場合にビデオリンク制度が導入されることとなりました。

【退廷制度】

裁判所は、証人が充分な供述をできないと判断するときは、「被告人」や「傍聴人」を一時退廷させることができます。

上記事項は被害者対応の一部です。また、各制度には細かな要件が設けられているため、被害者の方の具体的な事情・犯罪の内容等によって利用できる制度が異なってきます。

被害者対応に関して疑問点やご相談がある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までお問い合わせください。

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