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痴漢の被害者が恐喝未遂

痴漢の被害者が恐喝未遂

仙台市太白区に住む女性Aさんは、通勤途中の電車内で服の上からお尻を触れる痴漢被害に遭いました。
犯人は確保され、罪も認めています。
数日後、Aさんはこれらの事実について、男友達のBさんに話しました。
それに対しBさんは、
「そんな奴からは大金をふんだくってやろうぜ」
と言いました。
Aさんもその気になり、犯人に金銭を要求するよう、Bさんに頼みました。
Bさんは、釈放されていた犯人に電話をかけ、
「100万円払わないと、お前の家族や会社にばらすぞ」
と言って脅しました。
後日、AさんとBさんは宮城県仙台南警察署から、「痴漢犯人への恐喝について聞きたいことがある」と言われ、警察署に来るよう言われてしまいました。
AさんとBさんはどうなってしまうのでしょうか。
(フィクションです)

~痴漢について~

痴漢をした犯人については、各都道府県の迷惑防止条例違反として処罰される可能性があるでしょう。
本件とは違い、下着の中に手を入れて性器を触るといった悪質な態様であれば、より重い刑法の強制わいせつ罪が成立する可能性があります。

~恐喝について~

痴漢の被害に遭われた方は、大変嫌な思いをされたでしょうし、犯人に対して損害賠償請求することができます。
とはいえ、請求の方法が不適切だと恐喝罪が成立するおそれがあります。

刑法
第60条(共同正犯)
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
第249条1項(恐喝)
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
第250条(未遂罪)
この章の罪の未遂は、罰する。

相手方を畏怖させるような(おそれさせるような)害悪を告げて金銭等を要求した場合には、恐喝罪あるいは恐喝未遂罪が成立する可能性があります。

痴漢をしたことを犯人の家族や勤務先に知られることは、配偶者から離婚を要求されたり、勤務先から解雇されたりする可能性があります。
自業自得とも言えますが、犯人にとっては怖いものであることは間違いないので、AとBの要求は相手方を畏怖させるような害悪の告知にあたりえます。

ここで、Aさんは痴漢の犯人に対して損害賠償請求権があるのだから、それでも犯罪が成立するのか疑問に思われるかもしれません。
たしかに、犯人が支払いを渋っている場合には、多少強い言葉を言ってしまうこともわかります。
しかし、権利を行使する際にも、社会通念上相当ではない方法で行うと、恐喝罪恐喝未遂罪が成立するおそれがあります。

強制わいせつ罪が成立するような悪質な痴漢であれば別ですが、本件のような迷惑防止条例違反の痴漢示談金額の相場は数十万円程度であり、今回のような100万円の要求はやや金額が高いともいえます。
それでも示談交渉の際に、被害者側の要求としてはこの金額であると伝えるだけであれば恐喝とはいえないでしょう。
しかしながら、家族や会社にばらす旨を言って支払い要求していることが大きく、社会通念上相当な方法ではないと判断される可能性があります。

したがって相談の上で恐喝行為をしたAさんとBさんは、痴漢の犯人から実際に金銭を受け取れば恐喝罪の共同正犯、受け取っていなければ恐喝未遂罪の共同正犯となりえます。
なお、実際に受け取った金額が痴漢の賠償金の相場の範囲内であったとしても、恐喝行為という不適切な方法に用いた以上は、恐喝罪が成立しうることに注意が必要です。

~弁護士法違反について~

さらに友人のBさんは、弁護士ではないにもかかわらず、他人間の法律関係に介入したことから、弁護士法にも違反する可能性があります。

弁護士法
第72条
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
第77条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
第3号 第72条の規定に違反した者

~弁護士にアドバイスを受けましょう~

AさんとBさんは警察で注意されるだけで済む可能性もありますが、逮捕・勾留され、刑事裁判にかけられる可能性もあります。

警察での取調べで、必要以上に不利な供述をさせられないように適切な受け答えをするのは難しい場合もあります。
弁護士であれば取調べを受ける際のアドバイスをすることができます。
また、被害者と示談が成立すれば、執行猶予がつくなど、刑が軽くなる可能性や不起訴となる可能性が上がります。
示談交渉も弁護士が間に入ることでスムーズに行える可能性が高まります。

恐喝罪などの刑事事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件を専門とする弁護士による法律相談が初回無料で受けられます。
ぜひ一度ご相談ください。

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