林鼓子「どん底を味わったからこそ、今のすべてがありがたい」【声優図鑑 by 声優グランプリ】 | seigura.com
林鼓子

林鼓子「どん底を味わったからこそ、今のすべてがありがたい」【声優図鑑 by 声優グランプリ】

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キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。

今回登場するのは、『キラッとプリ☆チャン』の桃山みらい役、『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』の椎名立希役、『ラブライブ ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の優木せつ菜役などを演じる林鼓子さん。歌が大好きだった子供時代、吹奏楽部に熱中した中学生の頃……。声優3〜4年目でどん底も経験したという林さんが、初のミュージカル出演であらためて気づいたこととは?

林鼓子
はやしここ●5月15日生まれ。静岡県出身。mitt management所属。主な出演作は『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』(椎名立希)、『キラッとプリ☆チャン』(桃山みらい)、『ラブライブ ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(優木せつ菜)ほか。

公式HP:https://hayashicoco.com/
X:https://x.com/cocohayashi515?lang=ja

人生の半分以上は歌っています!

――今日は爽やかなワンピースですね。

撮影の時期が夏なので、爽やかな雰囲気がいいなと思って。私の中では、夏といえばワンピース。それに、スカートのデザインがきれいなので、写真映えするだろうなと。声優図鑑さん、外で撮影しているのもよく見るので、外の風景にも合うだろうなと思って選びました。

――普段もワンピースが多いんですか?

ワンピースは多いですね。でもプライベートってなると、ありがたいことにライブをやらせてもらうことが多いので、リハーサルに行くときはジャージがすごく多いですね。お休みの日はちゃんとワンピースを着るけど、普段はジャージばっかり……(笑)。

――というと、ジャージを何着も持っているのでしょうか?

すごくありますね。そのまま出かけても変じゃないセットアップみたいなジャージがとっても増えました。ジャージにほぼすっぴんで、帽子をかぶって、マスクをしているので、多分街を歩いていても気づかれないと思います。

――記事に書かせていただいちゃうかもしれませんが……。

絶対にバレない自信があります(笑)。

――では、声優になったきっかけを教えてください。

父親がすごくアニメが好きな人で、小さい頃から一緒にアニメを観ながら育ったんです。水樹奈々さんや南條愛乃さんのライブにも連れていってもらって、アニソンも好きになって。アニソンを歌う人になりたいっていうのが私の最初の夢でした。

じゃあ、アニソンシンガーになるにはどうしたらいいんだろうって考えて、いろんなオーディションを受けていたら『ラブライブ ! 』に出会いまして。μ’sさんがアニメで声をあてながら、ライブでキャラクターと同じように歌って踊る姿を見て、キャラクターとのシンクロ率というか、一心同体な部分にすごく惹かれたんだろうなと思います。2.5次元というか、2次元と3次元の狭間にいる感じを見て、私もそうなりたいなって。

――アニメを観ながら育ったということですが、小さい頃はどんな子供でしたか?

歌うことがすごく好きな子供でしたね。マンガや映画を観て真似をするのが好きで、家のちょっとした段差やダンボールの上に乗って歌ったり、お芝居したり。昔から、ステージに立ちたい子でもありました。母親も舞台やミュージカルが好きだったし、両親の影響を受けて自然とエンタメに親しんでいるような子供でした。

――歌の上手さはファンのお墨付きだと思いますが、歌を習うこともあったんですか?

習っていました。母親がピアノ講師で、母が言うには、私は子供にしてはピッチ感というか、音程の取り方がすごく上手だったんですって。それで歌を習わせてくれて。5歳頃から教室に通っていたので、人生の半分以上は歌っています。

アニメに憧れて吹奏楽部に入りました

――順調にエンタメの道へ向かっていたわけですね。10代になってからは、どんなことに熱中していましたか?

中学3年から声優の活動をやらせてもらっているので、それより前となると、やっぱり部活。吹奏楽部で打楽器を担当していて、毎日そればかりでした。朝練をして、授業を受けて、放課後も暗くなるまで練習して。その後に歌やダンスのレッスンに行って……。みんなで一つのものを作り上げるのが好きなんですけど、その気持ちを育ててくれたのが吹奏楽だったなって思います。

――打楽器を選んだのは理由があったんですか?

小学校の頃から金管バンドに入っていて、ボーカルをしていたので、管楽器を吹くことで呼吸法が変わったらやだな……っていう勝手な思い込みがあったんです(笑)。

――最初から管楽器が目当てではなかったんですね。かといって、中学校では軽音部がない学校も多そうですし。

そうですね。軽音部はなくて。中学に上がるタイミングでちょうど『響け!ユーフォニアム』のアニメ化が決定して、その原作小説も読んでいたので、すごくはまってしまい、うわ、吹奏楽部?やりたい!って思ったんですよね。

――タイミング抜群じゃないですか。

そうなんです。アニメが4月に放送スタートして、ちょうど吹奏楽部の当時の課題曲と同じ曲が、アニメで流れていたんですよ。主人公の久美子は高校生なので、私からするとお姉さんでしたけど、リアルタイムで一緒の時代を生きているみたいな感覚になれてすごく楽しかったです。『響け!ユーフォニアム』から受けている音楽の影響はすごく大きいですね。

――周りにも同じような理由で吹奏楽部に入った同級生が多かったのでは?

みんな観てましたね、当時は。「先週観た?」みたいな話にもなったし、私は原作を持っていたから、それをみんなで読む、みたいなこともしていました。

――青春を謳歌していたんですね。

そうですね。中学3年の夏の大会は、ちょうどデビュー時期とかぶって出られなかったし、高校に入るとお仕事、お仕事、お仕事……だったので、私の10代の青春は吹奏楽部、という感じです。

――正直、もう少し学生生活を楽しみたかった。という気持ちはありますか?

ありますあります。特に私が通っていた高校は芸能をやっている子が多かったので、少し特殊というか、文化祭も内輪で行うような行事だったので、みんなで買い出しに行くとか、クラスによって出し物をするなどにすごく憧れました。お仕事のために早退するとか、午後から学校に来るとか、そういう生活だったので、私にとっては一般的な学校生活のほうがファンタジーです。

でも、同じ環境の子がたくさんいるから悩みを共有できるし、自分は声優や舞台だったけど、ほかの子たちは映像やモデルだったりとか、違う分野で頑張ってる子たちがいることが励みになっていたんです。けど、マンガみたいな高校生活ってどこにあるんだろう…ってすごく思ってましたね。

――逆に、アニメ作品の中でそういう学校生活を擬似体験しているような。

ほんとにそうですね。現場で「高校生の間でいま何がはやってる?」っていう質問があると、すごく困っていました。お、わかんないぞ、みたいな。「はやりって何だろうね」ってクラスで話して、一度「若者っぽい放課後を経験してみよう」といって、みんなで制服を着て街に遊びに行ったこともありました。「チーズハットグってこういう味なんだね」みたいに話したりとか。

どん底を経験したからこそ、今のすべてがありがたい

――人気作品に多数出演されて、順風満帆な声優人生を送っている印象がありますけど、大きな壁にぶち当たったような経験もありましたか?

いやもう毎日です(笑)。もっとこういうお芝居がしたいのに……とか。それに役者って、オーディションに受からない確率のほうが高いので、毎日が就活。来年のスケジュールどうなるんだろうっていう不安がいつもつきまとう感じです。

声優になって3〜4年目くらいの時期にコロナがあったのも苦しかったですね。高校3年で進学に悩み、仕事をもっと頑張りたいのにイベントがなくて、アフレコは分散収録だったし、新人が活動できるような機会が減って。わ、私どうなるんだろう……みたいな絶望感がすごくありました。

――つらい時期でしたね。

でも、私は恵まれていて、周りに優しい方々が多かったので、現場で苦しい想いをしたことは正直ないんですよ。どちらかというと、自分自身との戦いでした。今までは“どうやったら売れるんだろう”って漠然と考えていましたけど、そうではなく、私は何のために今の活動を続けてるんだろうって考え直してみたら、芝居をしたかったからだと気づいて。

そう考えると、演じるにもいろんな手法があって、アニメはもちろん舞台やライブも演じることの一つだし、役者の仕事は無限大だなって思えました。

――コロナ禍は何をして過ごしていましたか?

自宅待機しながら、映画やアニメをたくさん観て、そこで聴いたセリフをマネージャーさんに送って、フィードバックをもらったりしていました。あらためて、自分がこれから役者としてどうしたいのかをじっくり考える機会もありました。ネガティブな気持ちにもなりましたけど、逆に言えば、あの時期が自分を強くしてくれたというか。そういう意味では大事な時期だったなって思いますね。

兄と一緒に住んでたんですけど、全然仕事がないどん底の時期もあって、このままだと生活厳しいぞって。ファンの方に言うことじゃないと思いますけど、どん底を経験しているからこそ、今すべての事象にありがたいって思えるところはあります。

初のミュージカル出演であらためて感じたことは…

――大きく成長できた、と感じられる役を挙げるなら?

そうですね……、今二つ思い浮かんでて……。一つはやっぱり『キラッとプリ☆チャン』の桃山みらい。ほぼアフレコ経験のない2作目で、初主演させていただいて、いちばん長く一緒にいる子。主演の責任感だったり、周りに助けていただいたり、真ん中に立つっていうことの意味を勉強させてもらったなって。私もプリティシリーズを観て育ったので、小さな子供たちにどれだけ夢を届けられるかっていうことも、すごく考えさせてもらった作品でした。

自分自身というより、桃山みらいがどうやったらみんなの憧れの存在になれるのか、すごく考えた作品だったと思います。

――そこまで考えていると、普段の行動まで変わってしまいそうですね。

そこが役者の難しいところですね。生身の自分でキャラクターを演じさせていただく機会が多いので、本当の林鼓子ってどんな人だろう……ってわかんなくなるときがあって。たとえば、『ラブライブ ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の優木せつ菜は自分と似すぎていて、たまに役柄が抜けないときがありますね。ライブの後もずっと興奮した感じになっちゃったりとか。

――たしかに役の抜き方っていうのも難しいですね。二つ目に思い浮かべたのはどんな作品ですか?

昨年初めて『Neo Doll』という作品でミュージカルに出させていただいて。私、宝塚とかミュージカルが大好きで、キャストの中には舞台系の方もいらしたので緊張したんですよ。私だけ生っぽくないお芝居になって、お客さんを置いてけぼりにしたらヤダなって思ったりもしたんです。でも、いざ舞台に立ってみたら毎日楽しくて。

お稽古が終わってからも、みんななかなか帰らず、自主練をしたり、お芝居の話をしたりして、ある種の青春ですよね。同世代の子も多いのに、一つひとつの役に向き合っているのが素敵だったし、こんなに真剣にお芝居に向き合っている人たちがいるんだと。あらためて、お芝居が好きだなって思える作品でした。

――貴重な体験でしたね。

先輩の斎賀みつきさんにいつもお世話になっているんですけど、舞台を観ていただいた時に、「舞台上でちゃんとスズランちゃんだったし、鼓子ちゃんでもあったから、すごく素敵だったよ」と言っていただいて。もちろん役より前に出ることはしちゃいけないけど、役の中に自分らしさを乗せる大切さにも気づいて、勉強になりました。

役者として自分の“色”を見つけていきたい

――お仕事のことを聞いてきましたが、プライベートではまっていることは?

舞台がほんとに好きで、宝塚も好きだし、いわゆるグランドミュージカルと呼ばれるミュージカルも好きで好きで。そればっかりですね……。

――休みさえあれば、舞台に行って。

そうですね。お休みの日に行ける舞台を探すこともあるし、前々から「この時間だけは……」とマネージャーさんにお願いして行くこともありますね。それが癒やしになるし、勉強にもなるので。最近ありがたいことに、お友達にも誘っていただいて、今月は4本観ます。

――なかなかいいペースですね。遠方に行くことも?

宝塚は関西まで行くときもありますね。私の好きな朝美絢さんが梅田芸術劇場で主演されると決まって出かけたりとか。

――では、声優さんでよく遊ぶ方を教えてほしいです。

すごく会うのはニジガクやMyGO!!!!!のメンバーですけど、プライベートでよく遊ぶのは、佐々木李子ちゃん、高尾奏音ちゃんかな。伊藤彩沙さんや大地葉さんもけっこう会いますね。

――何かしらの共通点があったりとか?

彩沙さんとは宝塚の鑑賞会をよくしていて、この間もタカラジェンヌのディナーショーに行ったりして。大地さんは好きな作品が一緒で、それを語るためだけに集まったりしますね。奏音ちゃんとはアフタヌーンティーに行ったり……。あ、この間は李子ちゃんと奏音ちゃんの3人でお休みを取って京都に行きました。マネージャーさんを交えながら、お休みが合う日を相談して(笑)。

――貴重な3人旅行でしたね。昨年は初ミュージカルにも出演して、ますますお仕事の幅が広がっていると思いますが、これから声優として叶えたいことを挙げるなら?

ずっと役者でいたいので、これからもいろんな作品で皆さんに名前を見ていただける機会があったらいいなと思いますし、自分だけの“色”を持つ役者でありたいと思います。模索しながらですけど、それを見つけるためにもいろんな作品、いろんな役に出会いたいし、自分の強みで作品に貢献していきたい。芝居が好きだっていう気持ちだけは絶対になくさないでいたいなと、すごく思います。

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