政府の地震調査委員会は、兵庫県沖から新潟県沖にかけての日本海にマグニチュード(M)7以上、最大M8級の地震が想定される海域活断層や断層帯が25カ所ある、としてそれぞれの位置や長さ、推定地震規模を公表した。
今年1月に起きた能登半島地震後に作業を急いだ評価結果で、自治体などの大地震への備えに活用してもらうために発生確率の算出を待たずに前倒しで公表した。調査委は今後30年以内の発生確率を来年前半にも公表するとしている。
調査委のこの作業は、宮崎県沖を震源とする最大震度6弱の地震が起きて初の南海トラフ臨時情報「巨大地震注意」が出される前に行われた。プレート境界で起きた宮崎県沖の地震と日本海側の活断層型地震は発生のメカニズムが異なる。気象庁などは直接の関係はないとの見方だが、連動する可能性は完全には否定できないと指摘する専門家もいる。日本海側も引き続き注意が必要だ。
調査委は政府の地震調査研究推進本部(地震本部)の下に設置された組織で、海溝型、活断層型いずれの地震についても長期評価している。今回の評価は日本海側の活断層評価の一環で、兵庫県北方沖から新潟県上越地方沖の範囲の海域活断層を調べた。
海域活断層の評価は日本海南西部(九州、中国地域の北方沖)に次いで2例目。調査委は音波などを使った反射法地震探査で海底の地下構造を調査。このデータなどから活断層かどうかを評価し、これまで大学や研究機関が指摘していた22カ所に加えて新たに活断層と認定した3カ所を含む計25カ所の位置や形状などをまとめた。
調査委によると、25カ所は単独の活断層のほか、複数の活断層をまとめた「断層帯」も含む。評価対象は長さ20キロ以上。過去に地震が繰り返し発生しており、今後もM7以上の地震が発生して沿岸部では震度6弱以上の大きな揺れや、高さ1メートル以上の津波となる可能性がある。
25の活断層、断層帯のうち、M7.8~8.1の大地震を起こし得るとされた長さ94キロ程度の「能登半島北岸断層帯」が最長で、能登半島地震の原因になっている。この大地震では同断層帯とともに長さ38キロ程度「門前断層帯」の一部のほか、長さ61キロ程度の「富山トラフ西縁断層」の一部も動いた可能性がある。震源域は約150キロにも及ぶ。
調査委のこれまでの調査によると、能登半島西方沖から北方沖、北東沖にかけて主に北東-南西方向に延びる複数の南東傾斜の逆断層が活断層として確認されている。また、能登半島北部の活断層帯の猿山沖セグメントと珠洲沖セグメントでは海底でそれぞれ約4メートル、約3メートルの隆起が観測され、能登半島地震に伴う変動を示している可能性が高いとされている。
調査委は2017年4月に分科会を立ち上げて日本海側の海域活断層の評価作業を開始した。22年3月には日本海南西部の長期評価をして、M7以上の地震を起こす可能性がある活断層を公表している。
その後能登半島周辺を含む海域についても評価作業を進めていたが、能登半島地震が発生。評価の遅れを指摘する声も出たことなどから、今回断層の位置や形状などが分かった段階で、発生確率の算出を待たずに公表に踏み切った。
海域活断層の長期評価として今後、新潟県中越地方沖から東北沖、北海道北西沖にかけての日本海東縁部の評価も進める予定だ。
関連リンク
- 政府・地震本部「日本海側の海域活断層の長期評価」