のんびり、やさしく。:銀の月のものがたり

のんびり、やさしく。

ヒーリングと物語とものつくり。

Category [銀の月のものがたり ] 記事一覧

【銀月外伝】 宵闇の祈り ~ マーガレット、愛しいメグ 3

 そうして、あたしは銀髪のおじさまのお屋敷へ来たの。 誰も捕まえたり退治したりしないって言われたとおり、お屋敷の中はとても穏やかだった。 たくさんの存在がいて、人じゃないものも多かったけど、誰も誰かを責めたり、自分と違うからって追い出そうとしたりもしなかった。 おじさまは、君の家に似ているほうがいいだろうと言って、たくさんの薔薇に囲まれた小さいほうのお屋敷にあたしを連れてきた。 もとのおうちにそっ...

【銀月外伝】 宵闇の祈り ~ マーガレット、愛しいメグ 2

 けぶるような金髪の少女が浮かない顔でベッドの上に座っている。 青白い顔色を心配して、使用人がまだ幼い肩にカーディガンをかける。窓の外は明るい日差しに湖がきらきらと光って、湖畔の花が風にゆれていた。 しかし少女は窓の外を見やると、悲しげにほうと息をつく。 そのとき、バタバタと廊下を急ぐ足音がして、急に部屋の扉が開かれた。「ただいま、マーガレット、私達の愛しいメグ!」 声よりも早く抱擁の腕が少女を捕...

【銀月外伝】 宵闇の祈り ~ マーガレット、愛しいメグ 1

「……それで結局、ゴーストを退治できないままでして。まさか国王陛下がおん自らおいでになるとはよもや思いませず、まだ片付いてもいない状態で大変申し訳ございません」 館の主人が低い背をよりいっそう小さくすると、顎ひげを生やしたまだ若い国王は紅茶のカップを持ったまま鷹揚に笑った。「いや、構わぬ。我儘を申したのは妹のメアリゆえな。ゴースト退治というもの、我も一度見てみたいと思っておったのだ」「陛下、退治では...

【物語版】 夏至のシンデレラ 5

 そのうち客が大勢アイリッシュダンスを始めたため、俺たちも挑戦してみることにした。もちろん踊り方なんて知らないので基礎から教えてもらったのだが、アイリッシュダンスは手の振りがほとんどなく簡単なステップの組み合わせで、初心者でもなんとなく雰囲気で混ざることができた。ツーステップなら俺でもできる~♪とゴキゲンに飛び跳ねていたら、とても暑い。「楽しい! あっつーい!!」「単純でも結構汗をかくね」 お互い...

【物語版】 夏至のシンデレラ 4

 かけてもらったジャケットはとても暖かかった。でもそのぶんデュークが寒いのは嫌だから、腕をひっぱるようにして店まで走る。とはいっても、行きは遊歩道や公園を通りたいから経由しただけで、目的地にすぐ着きたいと願うならあっという間なんだけどね。 次の俺の望みは、デュークに服を贈ること。そうしたら、お互いに服を相手の選んでプレゼント交換することになった。 しかし着道楽の彼のことだから、たいていのものは既に...

【物語版】 夏至のシンデレラ 3

 素晴らしい図書館に案内されて息を飲む。 室内背景の雰囲気を変えるために、階段か応接室か図書室かと言われたから図書室を選んだのだ。本がいっぱいの雰囲気っていいよね、くらいの軽い気持ちだったのだが、とんでもなく予想以上だった。 壁を埋めつくす重厚な背の高い本棚、ぎっしりと詰まったとりどりの本たち。見上げる天井はゆるやかなアーチを描いて美しい天井画が描かれており、つやつやと磨かれた床の中央、空いた空間...

【物語版】 夏至のシンデレラ 2

 デュークが選んでくれたのは、淡いレモンイエローの地に白いバラが散るロングワンピースとシャンパンゴールド系のサンダル、同じくシャンパンゴールド系の、シルクサテンのヘアバンドだった。 俺や本体が選びそうにない色味から選んでみたよと言われたけれど、さすがよく分かっていらっしゃる。うん、選んだことないし、たぶん選べない。嫌いじゃないし興味もあるけど、勇気がない…という感じのやつだ。「最初に選んだのがシル...

【物語版】 夏至のシンデレラ 1

 俺、いま、なんにも持ってないよ。なあんにも。 白い足で軽く虚空を蹴ってみると、あろうことかバランスを崩した。それは俺が「男のグラディウス」であったときには決してなかったことで、思わず笑いが出てくる。煉獄一の戦闘員であった自分が、蹴りひとつでバランスを崩すなどありえない。 けれど今、この身体は夏至の夜に若い女性の姿に変わり、昔日に限界まで鍛錬し研ぎ澄ませた体術のすべてを失ってしまったようだった。身...

【陽の雫119】 ともしび

森の中の道を埋めるかのように、ほそい常緑の葉が落ちている。ショートブーツで踏むごとに、針葉樹の爽やかな香りがたちのぼった。ところどころに先日の雪が残っているが、足元のあたりはそれほどぬかるんでいない。セントラルの雪の本番はまだこれからだ。新しいクロムグリーンのコートを着たリフィアは、踊るように二、三歩進んでくるりと振り返った。控えめに広がるプリンセスラインの裾はやわらかく軽やかで、手首と襟元につい...

【陽の雫118】 調絃 tune the planet

「西が一点、成功か…」ジークはモニタに映る地図上でポインタを動かし、ひとつの点をクリックした。少し前にアルディアスに渡した八面体でもって、砂漠のただなかに古き社が復活した場所だ。点滅する緑の光点へ、東にある緑の網から光のラインが伸ばされ、幾何学図形を描き出してゆく。消えていたグリッドポイントが復活し、ラインがもどり、周辺の場所に神の恩寵がめぐるようになる。ひとけのない研究室で、ジークはふっと息をつ...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - Fireplace -

グラディウスは夜目が利く。 それは色素の極端に薄い瞳のせいだ。彼の紅い瞳は、闇のうちでもしっかりと侵入者の姿をとらえていた。 超一流ホテルの広いスイートルーム。遠い壁に埋め込まれた暖炉で、だいぶ小さくなった火が揺れている。カーテンは開いているが厚い雲が月を隠しており、他に室内を照らす光源はない。暗闇には、低い換気音と焚火のはぜる音だけがかすかに響いていた。 直接寝室の窓からも来られたら厄介だと思って...

【陽の雫117】 埋もれし柱

「新作だ。これで… 多少ましになってるといいんだが」 よれた白衣に眼鏡をかけた銀髪の長身が、親指の先程度の小さな半透明のうすい青紫色をした八面体をアルディアスに渡した。一見ただの石にしか見えない。 「いつもすまないね、ジーク。ありがとう」 寝ていないんだろう?と聞けば、寝てるように見えるかよと軽口が返ってくる。軍研究所の若き精鋭は、士官学校での気の置けない同級生だった。短くした銀髪をかきあげてコーヒー...

【陽の雫116】 尋問

なぜだ。どうしてこうなった。 ハンス・テレマン准尉は粗末なパイプ椅子の上で膝を握りしめ、震える自分の手を信じられない思いで見つめていた。 冬の物資横流し事件後に公安から接触され、隊長じきじきの目通しがあった。そこで素質を見出され、フェロウ隊のクーデター証拠をつかんで提出すれば栄転確実だったのだ。 大切な軍需物資の横流し事件からもわかる通り、フェロウ隊は平素から軍より民間を重視しがちだ。まして隊長はど...

【陽の雫115】 Trumps 8

足音を荒げ、すでに人でいっぱいの書斎の戸口まで公安部隊がなだれ込んでくる。 優越感に満ちた顔でグエンが頷いた時、突如として部屋に女性の声が響き渡った。きれぎれの震えた声で少々聞き取りづらいが、その様子から録音を最大限のボリュームで再生しているようだ。 「……教えるわ。……私もあんなことされるのかと、怖くて……。喋る、…から守って。……だって、…あんな……」 続くすすり泣きに、一度は笑んだグエン・ミン大将の顔が真...

【陽の雫114】 Trumps 7

「……こちらへ」 赤っぽい焦げ茶の髪の青年は、周囲をうかがいながら背後の男をそっと部屋へ招き入れた。きっちりと軍帽をかぶった長身が、青年に続いてドアの隙間に消える。 ドアを閉め灯りをつけると、埃のにおいが鼻をつく。フェロウ隊の備品倉庫のように使われているその小部屋には、さまざまな書類や備品が半分雑然と保管されている。狭い通路のみ残して周囲三方は無機質な灰色の棚が天井まで据えつけられており、下にはダンボ...

【陽の雫113】 Trumps 6

翌朝未明。 「どうだアウル、ハンス、バディには慣れたか?」 隣のセラフィトに問われて、アウレヒト・M・ヘムクラーケ准尉は向かいの席のハンス・テレマン准尉と思わず顔を見合わせた。 昨日はバディ訓練をするとかで、昼番夜番問わず若手はみな二人一組をつくり、どこへ行くにも何をするにも一緒、すべての情報も共有することになっていた。「小便にもついてけよ」とは彼らの班長たるケントゥリア大佐の命令だ。 当然、セラフィ...

【銀月外伝】 夏至の扉

ガキン、と鍔が鳴った。 よし、と小さく呟いてからの数合。互いに走り寄って激しく打ちあったが、鍔ぜり合いになれば筋力の強さでこちらが勝つ。本体にも昔していたような日常での基礎鍛錬を課して、毎日十キロ前後は歩かせているのだ。 しかし相手はほんの瞬間力を抜いたと思うと、猫のように細い身体をしならせて一気に間合いの向こうまで飛び退った。手元から流れ去る銀髪に、オーディンの唇が短い口笛を奏でる。相手にとって不...

【陽の雫112】 Trumps 5

招かれざる客人を帰すと、アルディアスは執務室に戻り上衣を脱いで肘掛つきの椅子に深々と腰かけた。 衣を受け取ったルカがハンガーにかけ、あたたかい薬草茶を淹れてくれる。開け放った窓から冬の冷気と森の香りが流れ込んで、ふかく吸い込めば肺の奥底まで沁みてゆくようだった。 「いくさがみ、か…」 椅子を回し、夜空を見上げて誰にともなく呟く。 現状ヴェールの国教とも言うべき星の女神の信仰は、だが唯一神による厳しい一...

【陽の雫 外伝】 Crocus vernus

お腹が痛いのかと思ったのだ。 道端に変な姿勢で蹲り、地面を見つめているようだったから。 大丈夫ですかと背後から声をかけて、近づいてそっと肩を叩こうとしてわかった。その人は、長い手足を窮屈そうに折りたたみ携帯機器のカメラを構えて、足元に咲きそめた紫色のちいさな花を撮ろうとしていた。 春の女神の爪先みたいなその花は、ぬるみはじめた土を割って地面すれすれに咲く。舗装された道路の脇は広い公園になっていて、春...

【陽の雫111】 Trumps 4

「……軍に随行する神官もいるではないですか。彼らは武器に祝福してくれます。彼らがしていることを、新年式であなたが全軍の前でやってくださればいいだけでしょう」 「そうですね……確かに、神学校で学んだ後、望んで軍に随行する者もいるようです。しかし先程申しましたように、軍隊に武器に祝福することは我々の教えの範疇ではなく、彼らは神殿公式には神職にありません。彼らを軍属神官として認定しているのは、あなたがた軍で...

【陽の雫110】 Trumps 3

ライキと母親を宿舎に帰しセラフィトと別れた後、銀髪の大神官と秘書は大股に廊下を歩いていた。 「どれくらい待たせてる?」 「半刻というところでしょうか。修道院長にお願いしてありますので問題はないかと。それより、ご衣裳を控室に用意してあります」 アルディアスは自分の身体を見下ろした。少年になるべく親しみやすくするため、軍服の上着だけを簡素な神官服に替えた状態である。スラックスは濃色の特徴ないものであると...

【銀月外伝】 星明りの音色

新月の夜。 目覚めた私はそっと部屋を抜け出し、壁際に飾られた小さなハープを抱えて外に出た。長い銀髪と白くゆったりしたワンピースをひるがえし、風が運んでくるのは木々の匂い。裸足に草原が柔らかくきもちいい。 眼を上げれば、音がしそうなほどの満天の星空。 広く澄んだ湖に星影が映りこんで、上にも下にもきれいな天の川が見える。空気はキンと澄んでいるけれど、まだ寒いというほどではない。 湖畔をしばらく歩いてから、...

【陽の雫 外伝】 水晶の鈴

リン、リィン、リィィ…ン。水に波紋をひろげるように澄んだ音が響いて、ざわついていた艦内がすうっと静かになる。壁際に立ったイェルド・ソールベリ中佐は己の判断の正しかったことを確信しつつ、音の先に視線をあてた。小さなラッパを伏せたような形の鈴は、ひとりの青年の手によって静かに奏でられている。上着を脱いだ軍支給の白シャツに、ゆったりした白いマント……に見えるシーツ。流れ落ちる長い銀髪のためなのか、とてもあ...

【陽の雫109】 Trumps 2

「…ってわけで、南部のメソラ湖の近くの坊主らしいんだけど。おふくろがえらい心配してっから、俺も遊びに連れ出すくらいはしてやろうかと思ってさ。あー、名前何てったかな」 年末進行の書類を書きあげて上司に届けつつ、セラフィトは首をひねった。人の名前を覚えるのは昔から苦手だ。 アルディアスは銀髪をかきあげて旧友を見上げた。 「訓練所に入ったのはいつ?」 「おふくろが聞いた時点で二日後とかだって言ってたからな。...

【陽の雫108】 Trumps

年の暮れも押し迫った頃。 休日出勤で面倒くさげに書類仕事をしていたセラフィトの携帯機器が、無機質な音で着信を知らせた。画面表示を見れば郷里の母親からで、彼は付属のイヤフォンを耳に入れて通話ボタンを押した。 「なんだよ。俺いま仕事中なんだけど」 「久しぶりの母親にご挨拶ねえ。あなた今日は休みじゃなかったの」 「休日出勤で書類やっつけてんの。おふくろは話長えんだから、どうでもいい電話なら切るぞ」 「書類な...

【銀月外伝】 Happy Valentine

「お誕生日おめでとう、ルナ。さ、どれでも食べてみて♪」 バレンタインの日、昼休みのステーション。 満面の笑顔でそう言うと、テーブルの向かいに座った少年が嬉しいような困ったような笑顔を浮かべた。 複雑な表情だけど、頬が赤いから嫌がってるわけではないと思う、たぶん。「ありがとうございます。マリエさん……」 テーブルの上には試作品のトリュフがたくさん。それだけじゃ可哀想だからカフェの紅茶と小さなプレゼントも並...

【陽の雫107】 白のぬくもり 3

一行が中央大神殿についたのは、昼をすこし過ぎた頃だった。 ライキにとってここは、年に一度農閑期に地域の子供会でバスをしたててきて、冬祭りの飴を貰い、出店を楽しむためにやってくる場所だ。今年はさらに夏の大祭にも、アルディアスの幼馴染である大人たちと一緒に礼拝堂に入れてもらっていた。それなりに遠い場所であるから、まさかもう一度今度は訓練所の生徒となって門をくぐろうとは思ってもみない。 物珍しそうにしてい...

【銀月外伝】 hummingbird - あなたのお部屋に歌う小鳥を

β-325。ぼくが造られたのは、機械仕掛けの時計がお茶の時間を告げた木曜日でした。材料が散らばった机にお気に入りの工具を置き、片目に填めた拡大鏡をはずして、その人は言いました。「さあ、これでお前は歌えるはずだ。歌ってごらん、hummingbird」長い器用な指がぼくの喉に細い釘で打ちつけられた金色の魔法陣を撫でると、ぼくは歌いはじめました。最初にプログラムされていたのは、その人の故郷の歌でした。歌い終わるとその人...

【陽の雫106】 白のぬくもり 2

ルカが呼び鈴を押すと、開けられた扉から楽しそうな家族の空気があふれ出てきた。金色の小さな明かりがいくつも灯された室内には、終わった食事のいい匂いと、家族のあたたかさが満ちている。 「はじめまして。中央大神殿の司祭をさせていただいております、ルカ・フィテオルと申します」 寒さが入り込まないようにドアを閉めてから一礼する。不安そうな顔で挨拶を返す両親の前に立って、その少年は白い神官服を見上げていた。 「...

【陽の雫105】 白のぬくもり 1

(すみません、ホットミルクをお願いできますか) 茶碗を豪快にひっくりかえして号泣している子供を抱き上げてゆすってやりながら、ルカは目と心話で巫女に話しかけた。心得た巫女が、微笑んで一礼しそっと部屋を後にする。 書類仕事をしていた椅子を回して腰かけ、しゃっくりが止まらないらしい小さい背中をさすってやった。ルカの神官服にぎゅっと掴ってぼろぼろと涙をこぼすから肩口はぐしゃぐしゃだが、全身で自分に頼りかかる...

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さつきのひかり

Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

エンジェルリンクファシリテーター、
レインボー・エナジー・フレイム(REF)
R.E.F.S.I.
ルシフェルの翼
Calling You
サクラワーク 開発者。

個人セッションあり


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