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けれども大地は・・・

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今日は、新川和江の詩を紹介しましょう。


けれども大地は・・・

秋が
たえまなく木の葉を降らせて 
ものがたりしている

遠い森で 谷間で
公園で
窓のすぐ外で

そのものがたりに
人びとは耳を傾けはするが
とてもいちどきには
聞きとることも 読みとることもできない

けれども大地は
のこらずすっかり
おしまいまで聞いてやって
母親のようにいちばんあとでやすむ
                「わたしを束ねないで」より



素敵な詩である。

「秋が たえまなく木の葉を降らせて ものがたりしている」
という表現が素敵である。

木の葉のものがたりとは、どんなお話だろうか。

はらはらと、絶え間なく散るので、聞き取ることも読み取ることもできないのだろう。

けれども、大地はのこらず聞いて、聞き終ってから休むという。

すべてを受け入れてくれる。

まさに、母なる大地である。

It's a nice poem.

The expression of the first stanza of this poem is wonderful.

What kind of story is the story of the leaves?

People can't hear the sound.

It's just the mother earth.

シューマンの「献呈」をお聴きください。


ひとに手紙を・・・

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今日は、新川和江の詩を紹介しましょう。


「ひとに手紙を……」

ひとに手紙を書こうとして
書きなずんでいると

灯を慕ってか クサカゲロウがはいってきて
白いびんせんの上に とまる

うつくしい哀しみのような
みどり色の そのうすい翅(はね)

ああ わたしが告げたい思いも
そのようなもの なのだけど

クサカゲロウは文字にはなってくれず
いよいよ翅を透きとおらせて ふるわせて……

小さないのちと 大きないのちが
ひっそりと息づいている 晩夏(おそなつ)の夜

                詩集「夢のうちそと」より



とても美しい詩である。

クサカゲロウの繊細な薄い翅。

それは、詩人の告げたい哀しい思いと重なる。

白いびんせんの上に透きとおるような思いとともに・・・

This is a beautiful poem.

A lacewing is delicate with thin feather.

It overlaps with her sad feeling what she wants to say.

On the white letter paper with delicate feelings…

'' SECRET GARDEN - ADAGIO '' をお聴きください。


詩の世界・・・

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今日は、新川和江の詩を紹介しましょう。

詩作

はじめに混沌(どろどろ)があった
それから光がきた
古い書物は世のはじまりをそう記している
光がくるまで
どれほどの闇が必要であったか
混沌は混沌であることのせつなさに
どれほど耐えねばならなかったか
そのようにして詩の第一行が
わたくしの中の混沌にも
射してくる一瞬がある

それからは
風が来た 小鳥がきた
川が流れ出し 銀鱗がはねた
刳(く)り舟がきた ひげ男がきた はだしの女がきた
木が生えてみるまに照葉樹林ができた
犬が走ってきた 驟雨がきた 修行僧がきた
砂糖壺がきた スズメバチがきた オルガンがきた
室内履(スリッパ)がきた 白黒まだらのホルスタインがきた
急行電車がきた…

脈絡もなくやってくるそのものたちを
牧人のように角笛を吹き
時にネコヤナギの枝の鞭をするどく鳴らして
選別し 楡の荷を負わせ
柵の中に追い込んで整列させる 一日の労役
それが済むと
またしても天と地は
けじめもなく闇の中に溶け込み
はじまりの混沌にもどる
だから 光がやってくる最初の日のものがたりは
千度繙(ひもと)いても 詩を書くわたくしに
日々あたらしい



素晴らしい詩である。

聖書の創世記の始めのような書き出しである。

新川さんが詩を書く時、混沌とした中から生まれてくるのだ。

その後、いろいろな人や犬や雨やオルガンが来た…

そして、書き終ると混沌に戻る。

詩は日々、新しい物語としてやって来る。

It's a wonderful poem.

It starts like a bible with Genesis.

When she writes a poem, it is born from chaos.

And various characters come.

And it returns to chaos.

Poetry comes every day as a new story.

'' A Trip to the Islands '' をお聴きください。


赤ちゃんに・・・

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今日は、新川和江の詩を紹介しましょう。

「赤ちゃんに寄す」

うす紅いろの小さな爪
こんなに可愛い貝がらが
どこかの海辺に落ちていたならば
おしえてください

光る産毛 柔らかな髪
こんなに優雅な青草が
はえている野原があったら
そこはきっと神様の庭です。

赤ちゃんのすべて
未完成のままに
これほど完璧なものが
ほかにあったら
見せてください

<わたしが生んだ!>
どんな詩人の百行も
どんな役者の名台詞も
このひとことには
適いますまい

吾子よ
おまえを抱きしめて
<わたしが生んだ!>
とつぶやく時――

世界中の果物たちが
いちどきに実る
熟した豆が
いちどきにはぜる

この充実感
この幸せ



素晴らしい詩である。

赤ちゃんの愛らしさ。

美しさ。

そして、その赤ちゃんを生んだ誇らしさが行間から溢れている。

幸せいっぱいだった詩人である。


今月10日、新川和江さんは、心筋梗塞で亡くなられたそうだ。

95歳だった。

沢山の素晴らしい詩を書かれた。

そして、私たちに感動を与えてくれた。

心からご冥福をお祈りいたします。

It's a wonderful poem.

Baby loveliness.

Baby beauty.

And she is filled with pride that she gave birth to a baby.

She was a happy poet.

Kazue Shinkawa passed away on the 10th at the age of 95 due to a myocardial infarction.

Her poetry moved us.

I pray for her soul to rest in peace.

「カッチーニのアヴェ・マリア」をお聴きください。


母の歌

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今日は、新川和江の詩を紹介しましょう。



はじめての子を持ったとき
女のくちびるから
ひとりでに洩(も)れだす歌は
この世でいちばん優しい歌だ
それは 遠くで
荒れて逆立っている 海のたてがみをも
おだやかに宥(なだ)めてしまう
星々を うなずかせ
旅びとを 振りかえらせ
風にも忘れられた さびしい谷間の
痩せたリンゴの木の枝にも
あかい灯(ひ)をともす
おお そうでなくて
なんで子どもが育つだろう
この いたいけな
無防備なものが
              「新川和江詩集」より



とても素晴らしい詩である。

母は子どものために優しい歌を歌う。

その歌は、どんなものも宥め、うなずかせ、振りかえらせる。

そして、痩せたリンゴの木の枝に赤い灯をともす。

母の愛情は深く、優しく、大きい。

母の歌は子どもを守るための歌である。

It's very nice poem.

Mother sings a gentle song for her child.

The song soothes all, makes everything nod and makes everybody look back.

And the song turns on the red light on the thin apple tree.

Mother's love is deep, gentle and big.

Her song is a song to protect her child.

ブラームスの子守歌(チェロ)をお聴きください。


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