児童は成人と比べて特に性的搾取や虐待の被害に会いやすく、児童の心身に与える悪影響は極めて大きいことになります。
そこで、児童の保護のため、特別な定めがあります。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を規制し、及びこれらの行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的としております。
この法律において「児童」とは、18歳に満たない者をいいます。
児童買春
この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいいます。
一 児童
二 児童に対する性交等の周旋をした者
三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
児童買春をした者は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されることになります。
児童本人以外の大人にお金を渡しても児童買春に当たります。
16歳未満の児童に対して性交等やわいせつ行為をすれば、お金のやり取りの有無に関係なく不同意性交罪や不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
16歳以上18歳未満の児童とお金のやり取りなく性交等をすれば、淫行条例違反となる可能性があります。
児童買春の周旋をした者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されることになります。
児童買春の周旋をすることを業とした者は、7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金に処されることになります。
児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されることになります。
児童買春周旋の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金に処されることになります。
児童ポルノ
この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいいます。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。
自己の性的好奇心を満たす目的で、上記各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。
児童ポルノを提供した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。
電気通信回線を通じて上記各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。
児童ポルノ提供の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。
児童ポルノ提供の目的で、児童ポルノの電磁的記録を保管した者も、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。
児童に上記各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。
ひそかに上記各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。
児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。
電気通信回線を通じて上記各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。
児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供する目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。
児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供する目的で、児童ポルノの電磁的記録を保管した者も、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。
児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供する目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。
児童福祉法
児童に淫行をさせる行為をした者は10年以下の懲役もしくは300万円以内の罰金に処されるか、この両方を科されます(児童福祉法34条1項6号・60条1項)。
児童は満18歳に満たない者です。
「淫行」については「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり、児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は、同号にいう「淫行」に含まれる。」とされています。
「淫行させる行為」とは、「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をも包含する」とされています(最高裁第二小法廷決定昭和40年4月30日)。
「そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断する」とされています(平成28年6月21日最高裁第一小法廷決定)。
学校の教師が自分が担任をしている生徒に性交をする場合などが当たります。
16歳未満の児童に対して性交等やわいせつ行為をすれば、不同意性交罪や不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
淫行条例
北海道青少年健全育成条例は、青少年の健全な育成に関し、基本理念を定め、道、保護者、事業者、青少年及び道民の責務等を明らかにし、並びに道の施策の基本となる事項を定めることにより、青少年の健全な育成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るとともに、青少年を取り巻く社会環境の整備を促進し、及びその福祉を阻害するおそれのある行為を防止し、もって次代の社会を担う青少年が健全に育成される社会の実現に資することを目的としております。
18歳未満の青少年に対し、淫行又はわいせつな行為をしてはならない、と定められております。
違反したら、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されることになります。
この条例の違反行為をした者が青少年であるときは、この条例の罰則は、青少年に対しては適用しない、とされております。
最高裁判所が「「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。」(最高裁昭和60年10月23日大法廷判決)との判断を示し、その後の条例の適用も最高裁のこの解釈に従っています。
16歳未満の児童に対して性交等やわいせつ行為をすれば、不同意性交罪や不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
16歳未満の者に対する面会要求等罪
わいせつの目的で、16歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金となります。
一 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
二 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。
三 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。
被害者が13歳以上16歳未満の場合は、被害者と加害者の年齢差が5年以上の場合に成立します。
上記の面会要求をして、実際にわいせつの目的で被害者と面会をした者は、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金となります。
16歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金となります。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
被害者が13歳以上16歳未満の場合は、被害者と加害者の年齢差が5年以上の場合に成立します。