あまいものの日のこと

MX-1
Q:これはなんでしょう。
A:チューブワーム。
……うそです。
2月に入って、電話で、「今年、どんなチョコレートがいい?」と訊かれ、「なんで?」と訊き返してしまうほど、僕は野暮な野郎です。
オレンジピールのチョコ、オランジェットというやつです。
思えば、去年これをもらって、うまいうまいと言ったのを憶えてくれていたんだな、ありがとうよ。
うちにはテレビがないので、テレビがどうなってるのかはわからないのですが、いつも流してるラジオ、特にFMはバレンタイン特集でずっと甘ったるいラブソングの奔流。
サムスミスのステイウィズミー、変なアイドル、家入レオ、パフュームなど、何度も聴かされるのでザッピングしますが、なんだろうああいう部類、おのろけラップ、あれだけは勘弁してください(苦笑)。
俺とお前の世界観に笑いが止まらなくなって運転失敗しそうになるじゃないですか。
笑うな。
笑えなかったのは、10数年前、僕は今はなき新宿ルミネの成城石井でせっせとアルバイト生活をしていたのですが、あの時のことです(ちなみに、駅内アネックスはまだある)。
バレンタインデー前のああいうスーパーマーケットは戦場の他何物でもない。
「これを、このチョコ50個をラッピングして頂戴、30分したら取りにくるから」
そういうのが次から次へと。
事前に内職的に包んでおいたものはすぐ絶滅するし、一度包装台に向かい合ったら半日くらい解放されない。
海外の、円筒状で切り口がナナメになってるようなやつとか、完璧な円錐形とか、三角柱立体とか、そういうのを綺麗に包装紙で包むテクを当時は身につけていたのですが、今は多分もう忘れた。
ブラドック大佐はナムの映像を流すテレビを破壊してましたが、古傷を疼かせながらデッキジャケットの襟を立てて2月の街を流す僕も、バレンタインの喧噪を見かけるたび、カラテ・チョップで襲いかかりそうになるのです(←PTSD)。
あの義理チョコってのは、どうにかならないものでしょうか。
考えてもみてください、そこには少しでも愛があるの? きれいに包んであったとして、それを包んでいるのは、どっかの心がささくれた野郎だったりするんですよ。
バレンタインデーに、ほんとうの愛を!
チョコレートに、ほんとうの心を!

しかし、これはうまいな。
とっておいて、明日も食べようっと。