やまごんの未公開情報とか色々

やまごんの未公開情報とか色々

宇宙関係の趣味記事をたまに書きます

天光高らかに H3ロケット3号機 打ち上げ見学旅行記(3)

旅行大好き宇宙機ファンがH3ロケット3号機の打ち上げを見に行ったお話。

前回はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 


天光高らかに
H3ロケット3号機 打ち上げ見学旅行記(3)


 

前回は種子島への険しくも楽しい道のりと、体調不良で迎えた打ち上げ前日の朝、夜に行われたH3ロケット3号機の機体移動を紹介しました。

今回は打ち上げ見学記の最終回。H3ロケットの打ち上げとその後の模様をお伝えします。H3ロケット3号機の運命の打ち上げ時刻は12時6分42秒。お昼の打ち上げです。

 

 


天光高らかに 打ち上げ当日(2024年7月1日)


 

朝6時、長谷展望公園に停めた車の中で目を覚ます。

体調が万全ではないので8時ごろまで寝ていたかったが、目が覚めたので行動を開始。歯磨きを済ませ、カメラの設置に向かう。まず向かったのは宇宙ヶ丘公園。

 

ここにカメラをセットするのは3回目。我ながら慣れた手つきで自動撮影用のカメラをセットした。


射点方向を望む
6:25 宇宙ヶ丘公園から EOS90D 150mm F14 1/500s ISO250 

 

射点方向に目をやると、朝霧で視界が非常に悪かった。写真の真ん中にH3ロケット3号機がいるのだが、まるでわからない。打ち上げがこの時間帯でなくてよかったと感じる。

情報収集衛星なら早朝の打ち上げはほぼ無いけれど、例えばHTV-Xは早朝に打ち上げられる可能性もある。夏場の朝打ちは注意した方がいいかもしれない。

 


H3応援うちわとALOS-4のノート、打上げのお知らせと記念撮影。

 

宇宙ヶ丘の次は上里地区の「ご視察所」へ。

射点が見えるこの場所に、タイマー撮影の一眼レフカメラをセットするのだ。ご視察所は公式の見学場ではないうえ、アナウンス放送も流れないため見学者が少なそうだと見込んでいた。が、カメラをセットしていると関西弁のおっちゃんが「ここは打ち上げの30分くらい前に地元の人が来るから、置きっぱなしだと邪魔になっちゃうかも」と教えてくれた。まじか!

地元の人の打ち上げ見学の妨げになるのは避けたい。うーんどうしよう、と悩む私に関西弁のおっちゃんは無人で撮るなら近くにいい場所が近くある」と。ほほう!

おっちゃんについていくと、採石場の道端の土手の上に案内してもらった。なるほど土手の上なら誰かの見学の妨げにはならない。理想の場所ではないか!

おっちゃんに感謝を伝え、さっそくカメラを設置する。

買ったばかりのタイマーリモコンをセット。タイマーの時間を何度も確認し、準備OK。あとはうまく撮れるのを祈るだけだ。

ちなみに採石場にはダンプカーが何台も出入りしていました。


水をまくホイールローダー

ダンプカーが砂を巻き上げるのを防ぐためであろう、採石場ホイールローダーが水を撒いていました。バケットから手慣れた動きで水を撒く。打ち上げ見学者への配慮と思われる行動に胸を打たれました。

 

10:20 私は南種子町の撮影地点へ。道中の自動販売機で飲料水を2本購入し、戦いに備える。夏の打ち上げは暑さとの戦いだ。

10:40 ここにいるのは今のところ私1人だけ。山と川、田んぼ・・・新潟を思い出す景色になんだか安心する。しかし今日はロケットの打ち上げがあるのだ。

 


打ち上げ1時間前

私のいる場所は射点が見えないうえ、アナウンス放送はない。なので打ち上げタイミングの把握は時計だけが頼りだ。スマホは打ち上げ時の撮影に使うのでYouTube配信を見ることはできないし、そもそも配信はラグがあるからね。

(とはいえ最終GO/NOGO判断は聞いておけたらいいが)

 

11時 ロケットへの日の当たり方を確認するため、太陽を見上げる。
いつになく日が高いな、と感じた。

それもそのはず。この日(7/1)は太陽が天球上で最も高く上る夏至から10日しかたっていないうえ、時刻はお昼。さらに種子島は本州よりずっと南に位置しており、北緯37度の地元新潟に対して、種子島南種子町は北緯31度。太陽が高くなる条件が揃っているのだ。

 

燦然と輝く天光のなんと高いことか。

 

と、一人天を仰いでいると、若い男性の方が私に声をかけてきた。「ロケットはどのあたりから打ち上がりますかね?」と。見ると男性は息子さんと2人で打ち上げを見に来たようだ。

ここで打ち上げを見ようとするもの好き同志が他にもいるとは!!私は「二つ並んである谷の右側あたりから打ち上がります」と伝えた。親子は射点に近いこの場所で打ち上げを見にやって来たそうだ。考えることが私と同じでなんだか嬉しい。

その後地元の人とみられるおじさんも来て、この場所に男4人が集った。談笑しつつ打ち上げの時を待つ。

 

打ち上げ10分前 だしぬけに「最終GO/NOGO判断の結果はGOです」との声が聞こえてきた。振り向くと、息子さんがスマホYouTubeの打ち上げ配信を見ていたのだ。

これはありがたい!

最終GO判断が出たということは、このまま何事も無ければ12時6分42秒H3ロケット3号機が打ち上げられる。

地元のおじさんも「これは打ち上げがあるぞ」と笑顔だ。


H3♥SRB-3点火して♡

あとはSRB-3さえ点火してくれば!持ってきた応援うちわで応援する。

打ち上げ8分前 息子さんのスマホからカウントダウン音声が聞こえてきた。手元の時計と比べると、YouTube配信のカウントダウンは30秒ほど遅れているようだ。

彼らに「YouTubeは30秒くらい遅れてるので、カウント0の前に打ち上がります。気を付けて」と伝えた。

 

打ち上げ5分前 タブレットスマホ、そしてビデオカメラの録画ボタンを順次押す。
この時の心拍数は140bpmとかなり高めだが、前回(H3TF2)・前々回(H-IIAF48)のような極度の緊張感は無かった。カウントダウン音声がほぼ聞こえてこない環境だからだと思う。

 

それに今回は前回のように打ち上げ前に見学場所を離れることは無かったから、心は集中モードに入っていた。覚悟の用意はできている。

 

打ち上げ1分前 カメラを手で持ち、撮影スタンバイ。

打ち上げ30秒前 脳内でカウントダウンを開始。

 

12:06:42 打ち上げ時刻

 

+5秒経過

12:06 南種子町茎永から EOS90D 150mm F8.0 1/1600s ISO400

 

まだロケットは見えない。まさか初号機打ち上げ中止の再来か。心の中に疑念が芽生えた刹那、小さく「音」がやってきた。

 

・・・くる!

 


12:06 南種子町茎永から EOS90D 150mm F8.0 1/1600s ISO400


稜線の向こうから、H3ロケットが、ゆっくりと現れた。


12:06 南種子町茎永から EOS90D 150mm F8.0 1/1600s ISO400

 

打ち上げキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

この時を待っていたんだ!!満面の笑みでロケットを撮影する。

 


12:07 南種子町茎永から EOS90D 600mm F8.0 1/1600s ISO400

最大ズームで撮影。
光線状態は最高。機体の色がクッキリ鮮やかに写し出されている!!

下記はトリミングしたもの。


H3ロケット3号機 2024/7/1 12:07」(トリミング・微修正後)

オレンジ色のコア機体に記されているのは、日の丸と、「JAPAN」の文字。これはいいアングルだ。

ロケットの下部をよく見ると、火の粉のようなものが写っていた。ロケットからはく離した氷だろう。

 

ロケットを視認してから10秒後、爆音が全てを包み込んだ。
あたり一面が「バリバリ」という擬音になったような、「けたたましい」音だった。

音の波が繰り返し押し寄せたように感じる。周囲の山に音が反射したのだろうか。

 


12:07 南種子町茎永から EOS90D 600mm F8.0 1/1600s ISO400

 

H3ロケット3号機は加速しながら空を翔け上がっていく。

撮影しつつ肉眼でロケットを見ると、燃焼炎の眩しさで目がやられる(=撮影に支障をきたす)かと思った。


12:07 南種子町茎永から EOS90D 600mm F8.0 1/3200s ISO400
(トリミング・微修正後)

 

天光高らかに H3ロケットは宇宙を目指す。

 


12:08 南種子町茎永から EOS90D 232mm F8.0 1/3200s ISO400

 

やがてH3ロケットは雲の向こうへ飛んでいき、見えなくなった。

薄雲にまぎれたため、SRB-3の分離は撮影できなかった。

 


H3ロケット3号機のロケットロード

 

打ち上げ後、撮影した写真を確認する。山の向こうから現れるH3ロケットの写真を撮影できており、喜びがあふれる。こんな写真、見たことない!!!

 

よっしゃーーー!!!

勝利のガッツポーズ。(タブレット撮影動画切り抜き)

 

その後はおじさんと親子と、打ち上げを見られた喜びを分かち合った。みんな満足そうでした。息子さんも打ち上げが見られて笑顔でした。良い思い出ができて良かったね!


去り行く親子。縁石の上を歩いて、なんだか楽しそう


打ち上げはその後どうなっただろうか。その後の経過をTwitterで聞く。するとフォロワーさんから「だいち4号分離しました。」との返事がきた。

 

やった!!!打ち上げ成功だ!

 

笑顔でカメラと三脚を車に片づけていると、通りがかった車から声をかけられた。見ると三菱重工MILSETの作業服をきたおじさんが満面の笑みでこれで私等も食いっぱぐれないで済むと話してくれた。これから射点の点検に向かうのだそうだ。

そうだ、今回の打ち上げが無事成功したことで、これからもH3ロケットの打ち上げは続いていくのだ。HTV-XにMMXに、まだまだH3には頑張ってもらわないと!「おめでとうございます!」私も笑顔で返した。

 

打ち上げ成功、おめでとう!

 

茎永での撮影終了後、採石場と宇宙ヶ丘にセットしたカメラを回収しに行く。上手く撮れてるかな。

まずは採石場へ。

 

タイマーで撮影したカメラを確認。撮れた写真がこちら。


H3ロケット3号機 2024/7/1 12:06」(トリミング・微修正後)

 

おおっ!H3ロケットを正面から撮影出来ている。上々の出来栄えだ。

タイマーリモコンがなければこの写真を撮ることはできなかった。このリモコンをネットで見つけた自分に感謝。

 

お次は宇宙ヶ丘公園のカメラを回収しに行こう。と車に乗ると、見覚えある若い男性と目が合った。

なんと、今年1月・2月に種子島で会った学生さんだった。また来てたんか!さらに岡山のOさんもいた。この2人、たしか3月のカイロスの打ち上げも見に行ってたよな。どんだけ打ち上げが好きなんだ!?w


Oさんのテントや機材たち

学生さんはここで打ち上げを撮影したようだ。ただ低空に雲があってロケットが早々に雲ズボしてしまったそうな。打ち上げを見に遠くから見に来たもの同士、しばし雑談に花を咲かせた。

 

ってそうだ、宇宙ヶ丘公園に置いたカメラを回収しないと。せっかくなので学生さんを長谷まで送る。相変わらず大きなスーツケースを持っていたが、これでも小型軽量になったそうだ。

別れ際におみやげをもらった。再会できただけでも嬉しいのにおみやげまでくれるなんて!とても嬉しかった。


おみやげ!

「そう遠くないうちにまた会いましょう」とお別れした。今度会う時はお返ししたいな。

 

その後宇宙ヶ丘公園でカメラを回収。無事動画を撮れていることを確認。

カメラの回収を終えた後は、南種子町のAコープへ。

家族へのお土産に「ヨーグルッペ」を購入。ノーマル味は以前お土産にしたので、今回はりんご味にしてみた。

南種子町での1シーン。なんと「カメ」が道を渡っていた。流石(?)は種子島だ。

 

この日の夕食は美の吉にて「ちゃんぽん」を食べた。

ちゃんぽん。H3F3/ALOS-4のバッジと一緒に。

思ったよりしょっぱかったが大変美味でした。

 

さて打ち上げの日の夜。恒例の打ち上げ写真と動画の公開を行った。

 

今日はALOS-4改めだいち4号の打ち上げ記念日になった。打ち上げ日は宇宙機の誕生日のようなもの。用意していただいち4号のイラストと、今日撮ったロケットの写真を組み合わせて記念絵を仕上げた。

Twitterに投稿して、新たな記念日をみんなと祝福。

 

だいち4号、打ち上げ成功おめでとう!!

 

今日は長い一日だった…あとは寝るだけ。

と思いきやここでとんでもないニュースが飛び込んできた。

え、H3応援うちわがテレビに出てる!! ?! ??

 

なんとNHKのニュースに出ていた家族が手にしていたのは、私がネットプリントで配布した「H3応援うちわ」でした。すげーーー!!!

はるばる福島から種子島へ、H3ロケットのうちわを3つも作ってくれて。配布者としてこれほどうれしいことは無い!感無量でした。

ニュースに出た家族の他にも、多くの方々にうちわを作っていただきました。一部をご紹介。

 

みんなありがとう!

次回以降もうちわをネップリで配布したいな。

 


余韻を楽しもう(2024年7月2日)


 

打ち上げの翌日、特にすることも決めていなかったのでしばし悩む。打ち上げ後にしたいことといえば「宇宙センターのバスツアー参加」だが、お昼に「とあるお店」へ行きたかったのでパス。

H3ロケットの移動発射台撮影」は前回快晴の中で撮れたので今回はパス。と思ったけれど、せっかく打ち上げ後も島にいるのだし、行ってみよう!

ということで大崎海岸へ。


左から大型ロケット組立棟(VAB)、第2射点with移動発射台(ML5)、第1射点

第2射点に昨日役目を果たしたH3の移動発射台(ML5)が鎮座している。移動発射台の白と青の柱は焼けた様子もなく綺麗だった。


ヤシの実と一緒に

砂浜にはヤシの実?があった。1月・2月に見たヤシの実とは別個体みたいだ。

 

11時前 お昼にどうしても行きたかった「とあるお店」へ向かう。


道中に掲げられた打ち上げ成功ののぼり旗

それは南種子町のラーメン屋「おかざき商店」。

このお店は打ち上げ日と前後3日間(つまり1週間)限定で「ロケットラーメン」と「H3ラーメン」が食べられるのだ!!ただしH3ラーメンは1日数食限定でかつ量もめっちゃ多いとか。ロケットラーメンを注文して店内を見回す。

お店が種子島宇宙センターに近いこともあってか、店内にはロケットの打ち上げポスターがいたるところに貼られていた。(撮影許可済み)

 


ロケットラーメン

ロケットラーメンキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

見た目がロケットの形をしていて最高。味はピリ辛でとてもおいしかった!

実は種子島遠征5回目にしておかざき商店初訪問。今回食べることができて大満足でした。

 

お昼を食べた後は帰りの高速船に乗るべく西之表へ移動開始。種子島空港に寄り道し、自分用のお土産として「安納芋干し芋」(550円)を3パック購入。安納芋干し芋は私のお気に入りの種子島土産。

2月にH3ロケット試験機2号機を見に来た時は干し芋を1パックした買わなかったのを後でひどく後悔したが、こうしてまた食べられるのが嬉しくてたまらない!

 

西之表港近くのガソリンスタンドで満タンに入れてもらい、レシートに満タン証明のハンコを押してもらった。あとは西之表港のレンタカー用駐車場に車を停め、返却。

14時 西之表の高速船ターミナルの受付で事前予約メールを見せ、チケットを発行する。

帰りの高速船は「トッピー2」。トッピーとは種子島での「トビウオ」の呼び名。その名のとおり、トッピー2は海の上を飛んで進む。


高速船「トッピー2」

前回高速船に乗った時(H-IIAF48)に船酔いしたので、今回は1階席をとった。

これから長い帰路が始まる。

 

思えば、種子島への道のりは遠い。
かつて私は「一生に一度でいいから種子島でロケットの打ち上げを見たい」と願った。
それくらい果てしなく遠い地だったのに、今や半年で3度も訪れた場所になった。種子島で打ち上げを見れたのは通算4度目。つくづく人生とは分からないものである。

気軽に来られる場所ではないけれど、種子島はかつてよりぐっと"近い"場所になったと感じる。


さらば種子島 また来る日まで

私は次、いつ種子島へ行くのだろう。なんの打ち上げを見に行くのだろう。H3-24L?H3-30S?遠征計画は未定だが、きっとまた私はここに戻ってくるだろう

 

鹿児島港に到着後、高速船ターミナルから出る空港連絡バスに乗る。運賃は1400円。高速船ターミナル内の受付の左端でバスの切符を買うことができた。

 

ってそうだ、大事なお土産を買わなくちゃ。でもまだ売っているだろうか。鹿児島空港に到着後、祈る思いで空港内のファミリーマートへ向かう。

大事なお土産とは「南日本新聞」。


2024年7月2日号の南日本新聞1面。

買えた!!種子島では売ってなかったので、鹿児島空港で買えてホッとした。ちなみに種子島に住むフォロワーさんによると、種子島では新聞の販売は遅いのだそう。南種子のファミマだと14時過ぎ販売という。

紙面には昨日の打ち上げの写真が大きく載っていた。しかも1面トップ。打ち上げ成功がトップニュースになるのは、やはり打ち上げが失敗することもあるからだろう。だからこそ打ち上げ成功はニュースであるし、喜ばずにはいられない。

 

鹿児島空港からはスカイマークで羽田へ行く。スカイマークのチェックインカウンターに七夕の笹竹が飾られていた。もうそんな時期か。短冊の願い事をしげしげと眺めていると、スカイマークのスタッフさんから「書いていきませんか?」と声をかけられた。せっかくなので願い事を書くことにした。

 

鹿児島空港離脱後は、羽田空港から東京駅のバスターミナルへ移動。

新潟行きの夜行バスに乗車し、翌朝新潟に帰還しました。

 

 

天光高らかに H3ロケット3号機 打ち上げ見学旅行記

 


 

ここまで読んでくれてありがとうございました。

オマケとして、種子島遠征にかかった費用を一挙公開。

3回合計で約39万円。やべぇ…

 

今年はもうお金を使い過ぎたので、次の打ち上げ見学は2025年以降になると思います。できればH3-24か、H3-30形態の打ち上げを見たいです。

最後に私のTwitter(現X)アカウントを紹介して終わります。

宇宙に新幹線に、あれこれ呟いています。よろしくどうぞ!

https://x.com/sado_kouta

 

それでは、またの機会にお会いしましょう。

 

天光高らかに H3ロケット3号機 打ち上げ見学旅行記(2)

新幹線大好き宇宙機ファンがH3ロケット3号機の打ち上げを見に行ったお話。

 

前回はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 


天光高らかに
H3ロケット3号機 打ち上げ見学旅行記(2)


 

前回は打ち上げ見学旅行に至る経緯と旅の目的・準備について紹介しました。

今回は種子島への道のり&機体移動編。

新潟から種子島へ移動し、H3ロケット3号機の機体移動を見学&撮影します。

 


打ち上げ日発表 打ち上げ2→3日前(2024年6月28日)


 

打ち上げ予定日の2日前は、打ち上げ見学旅行者にとって冷や汗の出る日だ。というのも、この日に天候状況を踏まえた最新の打ち上げ予定日が発表されるのだ。

もしも打ち上げが3日以上延期したら。種子島滞在中の打ち上げは望めなくなり、私の旅は行く前に消失する。

 

そして、運命の6月28日。JAXA三菱重工が発表した打ち上げ日は当初予定から1日延期の「7月1日」。

1日延期は想定通りだったためホッと胸をなでおろす。( -ω-)=3
打ち上げ延期に備えて2日の予備日をとっていたので、旅程に変更はない。

また14時からの「打ち上げ前ブリーフィング」にて、H3ロケット3号機(H3F3)の機体移動が「打ち上げ前日の20:30開始」と発表された。

 

・H3TF1:打ち上げは「午前10時37分55秒」機体移動は「前日16時00分~」
→機体移動は打ち上げの約18時間前 ※2月17日及び3月7日の打ち上げ共通。

・H3TF2:打ち上げは「午前9時22分55秒」機体移動は「前日15時00分~」
→機体移動は打ち上げの約18時間前

・H3F3 :打ち上げは「午後0時6分42秒」 機体移動は「前日20時30分~」
機体移動は打ち上げの約16時間前

H3F3の機体移動は打ち上げ前日の夜。そして、機体移動から打ち上げまでの時間が試験機2号機より短くなっている。

その理由については打ち上げブリーフィングで有田PM(プロマネ)から「今回は余裕時間を短くする決心をして、作業者の負担を減らす。」との説明があった。

https://x.com/ohnuki_tsuyoshi/status/1806574080033996944

今後のH3ロケットの打ち上げでは今回と同等の余裕時間か、もっと短くなるのかもしれない。

 


鹿児島へ行こう 打ち上げ3日前(2024年6月28日)


 

6月28日(金)夜 種子島遠征スタート。
定時まで仕事をしたのち、この日は①新潟空港から飛行機に乗って福岡空港へ向かう。②福岡空港から博多駅まで地下鉄で移動し、博多駅から九州新幹線鹿児島中央駅まで移動する。博多駅に着くのは夜22時ごろ。鹿児島中央行の最終列車(22:20発)への乗り換え(博多スイングバイ)に失敗すると、本日中には鹿児島へ行けない。

 

18時に新潟空港に着いて早々、チェックインカウンターにて「乗る予定の機材の到着が遅れている」と連絡を受ける。まじか。遅延時間は25分。これくらいの遅れなら飛行中に10分遅れくらいに縮まると思っていたので大して気には止めなかった。

が、Twitter(現X)のフォロワーから福岡空港の門限(22時)に間に合わないと最悪引き返すことになるかもしれません」とコメントがきた。

 

そうか、門限があったか!

 

福岡空港は市街地のど真ん中にある空港のため、夜間の騒音対策として離着陸が22時までに制限されている。22時を過ぎて着陸する機は北九州空港等に代替着陸するか、出発空港に引き返すこととなる。


30分遅れで搭乗

結局、IBEX88便は定刻から30分遅れの19:55に出発した。ということは到着時刻は定刻(21:15)から30分遅れの21:45ごろになる。門限までの余裕時間は15分あるから、まだ慌てる時間じゃない。

 

信じてるぞ、IBEXエアライン!


CRJ700の機内で打ち上げ記念イラストを描きつつ時間をつぶす。

21:30 九州に近づいた頃合いで、機長からのアナウンス放送があった。大雨の影響で福岡空港上空が混雑して順番待ちが発生しており、当機は8番目に着陸するとのこと。

 

・・・門限までの30分で、たった1つしかない滑走路に8機とも着陸できるのだろうか。しかし私は思い出す。博多南駅近くの九州新幹線の撮影スポットで、福岡空港に着陸する機が数分おきにやってきたことを。


ギアダウンし、福岡空港に向けて旋回降下するIBEX機

 

門限までに降りられる可能性は十分ある。あとは管制官パイロットたちの連携を信じるしかない。

そして、門限の10分前。


Nice Landing!

私の乗るCRJ700は福岡空港に降り立った。やったー!!!!

 

これでめでたしめでたし。

とはいかず、30分以上遅れて福岡空港に到着したことで新たな問題が浮上する。


博多駅の新幹線発車案内板

鹿児島中央行きの新幹線がない」のである。

博多駅鹿児島中央行きの最終列車は22時20分発のみずほ215号。しかし私が博多駅に到着したのは22時25分なので、残っているのは熊本止まりのみ。

博多スイングバイに失敗。さあどうする。

 

何のことは無い。熊本まで行くだけだ。今日の宿は「ネットカフェ」と決めていたので、熊本駅近くのネカフェで寝て、明日の早朝に新幹線で鹿児島へ行けば良い。

 

スマホを叩き、スマートEXで熊本行きの自由席を購入する、乗るのはつばめ345号。

この時、正直テンションが上がっていた。鹿児島行きの予定が狂ってヤケクソになったのではなく、急きょ乗ることになった「つばめ345号」のことが楽しみで仕方が無かったのだ。


つばめ345号 800系U001編成(トップナンバー)

というのも、つばめ345号は九州新幹線でも少数派の「800系」での運行。外観はかわいく、車内は自由席でも2列+2列シートでゆったり座れる。気持ちが昂るってもんだ!

「800」を模した独特のマークも見どころの1つ。あと自由席でこの豪華さはヤバイ!

 

九州新幹線をご利用の際はぜひ800系を。と言いたいところですが、800系が主に使われる「つばめ号」は各駅停車かつ熊本止まりが多く、移動に時間がかかるのでご注意ください。


遅めの夕食

800系に揺られながら、博多駅のコンビニで買った冷やしラーメンを楽しみつつ終点の熊本駅へ。

この日は熊本駅近くのネットカフェで一泊。

 


種子島へ行こう 打ち上げ2日前(2024年6月29日)


 

朝6時に起床し、熊本駅へ。


熊本駅前にある「くりあ診療所」

駅への道中に「くりあ診療所」を発見。私の推しのVtuberである「宇推くりあ」氏と名前が同じ。朝から良いものを見た気分。

 

熊本駅発のつばめ305号(800系)に乗り、鹿児島中央駅に無事到着。天気は雨。

この日の予定は、鹿児島港8:40発のカーフェリー「プリンセスわかさ」で種子島行き、西之表市にある「あらきホテル」に一泊する。今回、打ち上げ延期後にホテルのサイトを見ると1部屋だけ開いていたので確保した。

 

バスと徒歩で「南ふ頭旅客ターミナル」へ向かう。
「南ふ頭旅客ターミナル」はジェットフォイルが発着する「高速船ターミナル」の左手奥にある。様々な乗船記でも語られているが、旅客ターミナルの場所を示す看板がほとんどないため、本当にこの先に旅客ターミナルがあるのか不安になる。GPSとマップアプリを信じて歩こう。

旅客ターミナルに入り、乗船名簿の紙を書いて受付に渡す。運賃を支払い、チケットをゲット。


チケット。なお7月から運賃が5000円に値上げする。

チケットは乗船時に船員に渡すので、チケットと記念撮影をするなら乗船前に済ませましょう。

私は初めてのプリンセスわかさ乗船。既にカーペット敷きのフロアには乗客がくつろいでいたので、椅子席に腰かける。種子島まで3時間半の船旅だ。

8時40分。船は汽笛を鳴らしてゆるやかに出発した。コンビニで買っておいたパンを食べ、船内を見て回る。


船の現在地を示すマップ。航路の半分は湾内だ。

上のマップを見てふと思い出した。プリンセスわかさといえば、デッキからすれ違う高速船(ジェットフォイル)を見られるはず。見たい!

早速、船舶の位置情報がわかる「MarineTraffic」のサイトを開き、本船とすれ違いそうな船が無いか調べる。

 

…お?

 

プリンセスわかさの右前方に水色のアイコンの船がある。水色のアイコンは私の好きな「護衛艦」や「巡視船」などの特殊船のアイコン。なんの船かタップしてみると

 

「MAYA」と出た。

 

えっ?

 

 

MAYAってまさか護衛艦「まや」か?


MarineTrafficの画面。進行方向にMAYAがいる

 

まさか。護衛艦まやは海自の最新鋭のイージス艦、まや型の1番艦。それが錦江湾にいるのか?!

デッキへ走り、右舷前方にカメラを向ける。


霧の中から

 

いた!!あの艦影はまさしくイージス艦

まや様~~!!!!

スーツケースからH3ロケットの撮影用に持ってきた望遠レンズを取り出し、カメラに装着。デッキから右舷を反航する「まや」を撮影する。

護衛艦まや(DDG-179) 鹿児島・錦江湾にて(2024/6/28)

霧の中から現れたイージス艦カッコいいなあ!護衛艦の航行シーンを撮影できてめちゃくちゃ興奮しました。

さらには巡視船「おおすみ高速船「ロケット」ともすれ違うことができました。フネ好きでもある私の脳内はフロア熱狂でヤバかったです。プリンセスわかさ最高だぜ!!

巡視船おおすみ(PL202)、高速船ロケット 鹿児島・錦江湾にて(2024/6/28)

 

デッキでの撮影後は椅子席で睡眠。目が覚めるとそこは種子島西之表港。実に快適な船旅だった!


西之表港に到着したわかさ姫

種子島も雨模様。下船して予約したレンタカー会社の看板を持った人を探すと、ちゃんと看板を持った人がいた。レンタカーの料金を支払い、カギを受領。

西之表港のロケットモニュメント

 

この日は西之表港近くの「あらきホテル」に泊まる。打ち上げが延期にならなければ見学場所の下見をする予定だったが、1日延期になったので下見は明日にして、ホテルで記念イラストを仕上げることにする。

お昼時(12:30)だったので港近くの「らーめん 濱商」でラーメンでも食べようと思ったが、店内にぎっしりお客さんが並んでおり、断念。

早めにホテルにチェックインし、新しい雰囲気が漂う「キャビンルーム」へ。

大広間を改装して24室の個室を用意している模様

打ち上げ見学者のために情報を共有する。

・キャビンルームは男性のみ利用可
・ネット予約が可能
・部屋はベッドとテレビ、冷蔵庫、机とイス、ハンガーがあるだけの狭い部屋
・部屋の上部は間仕切りが無く、他の部屋と空間が共用
・業務用クーラーがガンガン聞いて涼しい。冷蔵庫の中にいるようだ
・ドアにカギは無い。ドアはぶっちゃけカーテンです
・イメージとしてはベッドと冷蔵庫のあるネットカフェ
・キャビンルームのあるフロアの外にはトイレ、電子レンジ、電気ポットがある

 

あらきホテルの隣には温泉があり、キャビンルーム利用者は無料で利用できる。さらにホテルから徒歩1分にファミリーマートがある。利便性はピカイチだろう

 


五目ラーメン

西之表市にある「東天紅」で遅めのお昼を食べた。
店内には昨年打ち上げの「ALOS-3」ともうすぐ打ち上げの「ALOS-4」のポスターが貼ってあった。


だいち姉妹のポスターの並び。

だいち3号(ALOS-3)は打ち上げに失敗してしまったから、今度こそはうまくいってほしい。

 

ラーメンを堪能した後はキャビンルームで打ち上げ記念イラストの仕上げを数時間かけて行った。


ALOS-4の色塗り中

 

しかし、夜に重大な問題が発生。

ベッドの中で目が覚めると、身体が熱っぽい。体感温度は38度。

…クーラーの冷気で風邪をひいてしまった。

 

まずいまずいまずい。明日は下見と機体移動、明後日は打ち上げがあるというのに。こんなときに風邪なんてひいていられない。

上着を着こみ、首にタオルを巻いて身体を温め、回復に専念する。

 

 


機体移動を見よう? 打ち上げ1日前(2024年6月30日)


 

起床して体調を確認する。夜中よりはマシになったが、身体はまだだるく、風邪気味。とはいえ今日は打ち上げ見学場所の下見と、夜には機体移動撮影をせねばならん。

ホテルをチェックアウトして車に乗り込んだが、身体はまだ本調子ではない。このままでは夜の機体移動や翌日の打ち上げ撮影もままならないかもしれない。なにより旅先で全力で行動できないもどかしさがあった。

藁にもすがる思いで、中種子の「ドラッグイレブン」で総合かぜ薬とinゼリーを購入した。旅先で買うような代物とは思えず「私は何しに来たんだろう」と落胆が頭の中を渦巻く。

 

薬を服用後、駐車場で30分ほど寝ていると身体が軽くなってきた。これならいける。

最初の目的地は南種子の「広田漁港」へ。ここは打ち上げ見学場所ではないが、射点が見える(らしい)ということで一度来てみたかった場所だ。


強風で飛ばされそうになる

突堤の上を慎重に歩く。この日は南から強風が吹きつけており、台風並みの風で身体が飛ばされそうになる。帽子はつけてこない方が賢明だろう。

なお私は新幹線撮影用に買ったひも付きの帽子↓をつけていたので問題はなかった。

dshopping.docomo.ne.jp

突堤の先まで向かうと、見たかった光景が姿を現す。

 

もはや何も言うまい。

ボーっとする頭にVABと赤白の鉄塔が「ここは種子島だ、ここが種子島なのだ」って語りかけてくる、そんな気分がした。

なおここは射点から半径3km圏内にある為、打ち上げ時に立ち入ることはできません。
あと夜間に来るのはやめましょう。危ないです。

 

広田漁港の次は打ち上げ見学場所の下見として、南種子の「茎永」へ。事前調べ通り、射点の方角に田んぼがある開けた場所があった。打ち上げはここで撮ろう。

近くに咲いていたアジサイ。綺麗。  ロケットが出てくるあたりを指さす

 

ところで、田んぼの色がやけに黄色く感じるんだが。


南種子にて

まさかと思って近寄ってみると、イネはたわわに実って黄金色になっていた。…まだ6月だよね?!

頭がボーっとしているのも相まって、8月末にタイムスリップしたかと思ってしまうが、これは現実の光景。

実は、種子島の稲作は日本一収穫が早い。なので種子島ではこれが普通なのだ。

え! もう稲刈り? 炎天下、コンバインが大活躍 「日本一早いコシヒカリ」収穫始まる 南種子 | 鹿児島のニュース | 南日本新聞 | 373news.com

ちなみに田植えは3月らしい(新潟では5月)

 

種子島らしい景色をもう一つ。


"先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4) 7月1日(月)"

長谷展望公園の近くにあるロケットのモニュメントを撮影。これを見るとロケットの打ち上げを撮りに来た実感が湧く。

下見を終え、お昼に南種子のファミマで豚汁を買って食べた。梅雨+風邪気味のコンボでたくさん汗をかいたので、豚汁の塩気が身体に染みた。さあ、これから長い24時間が始まるぞ。

かぜ薬のおかげで熱も下がり、だいぶ動けるようになった。薬の力に感謝しつつ、種子島宇宙センターで夜の機体移動に備える。


宇宙センターへ続く道にて

機体移動の撮影場所は前回(H3TF2)と同じく「ロケットの丘」にした。前回は日中の機体移動だったので、同じ場所で夜の機体移動を撮ってみるのだ。

機体移動は20:30開始だ。

機体移動開始1時間前(19:30)のロケットの丘

機体移動開始まであと1時間。すでにロケットの丘の駐車場には機体移動見学者の車がずらりと並んでいる。それでも混乱はなく、ロケットの丘ではロケットファン同士で会話しながら機体移動開始までの時を過ごした。

20時 カメラをセットし、機体移動に備える。


カメラ3台構成。腕が3本欲しくなる

 

ここからは機体移動の写真を撮影設定付きで公開します。焦点距離は35mm換算していませんのでご注意ください。(カメラはAPS-C機です)

20:30 機体移動開始。風向きが良くないためか、VABからのアナウンス放送などは聞こえなかった。

さあ、H3ロケット3号機を記録しよう。


20:34 ロケットの丘から EOS90D 361mm F5.6 1/8s ISO3200

ゆっくりと、H3ロケットを載せた移動発射台(ML5)が出てきた。

 


20:35 ロケットの丘から EOS90D 361mm F5.6 1/8s ISO2500

続けてH3ロケット3号機が姿を現した。

太いコア機体に黄色の段間部。まぎれもなく、あれはH3ロケットだ。

 

H-IIAロケット48号機とH3ロケット3号機の比較

撮るのに夢中で写真をほとんど見ていなかったが、今見て、思う。夜のH3ロケットは格段に美しいと。

H3ロケットH-IIA同様、光源であるVABから離れると途端に暗くなる。


H3ロケット3号機
 EOS90D 313mm F5.6 1/8s ISO5000(トリミング済)

どこか厳かな雰囲気が漂う。

(左)20:47 ロケットの丘から EOS90D 293mm F5.6 1/8s ISO10000
(右)フェアリング部拡大・画像修正済み

ゆっくりと画像右側へ、H3ロケットは移動する。フェアリングには「JAXA」のロゴと「H3」の文字がみえる。

機体移動開始から20分。H3ロケットを載せた移動発射台が第2射点に近づく。


20:49 ロケットの丘から EOS90D 275mm F5.6 1/8s ISO10000

移動発射台の柱の間には把持機構が見える。把持機構はH3-24形態で使用されるため、今回(H3-22形態)は使用されない。

 


20:56 ロケットの丘から EOS90D 275mm F5.6 1/8s ISO1600

機体移動開始から約25分でH3ロケットは射点に到着。あとは15時間後に打ち上げを迎えるのみ。

撮影しているうちは気づかなかったが、足首が蚊に刺されていた。夏場の夜は虫よけスプレーが必須だと学んだ。( ..)φ__メモメモ

 

ロケットの丘での撮影後は、例によって宇宙センターと南種子町の撮影スポットでロケットを撮影する。

①ロケットの丘

上記。

②中型射点(へ続く坂道)


21:24 中型射点の坂道 EOS90D 150mm F5 1/4s ISO400

この場所からはフェアリングデカールを間近かつ正面で撮影可能だ。


ALOS-4/だいち4号 600mmの超望遠画像をトリミング。

私は道路わきに三脚を立てて望遠レンズを向ける。フェアリングデカールが試験機2号機の「RTF」ではないのを見て、「このロケットは3号機なんだなあ」と感慨にふける。

H3ロケット試験機2号機と3号機のフェアリング比較

この場所には私以外にも多くの見学者が来ており、みんなスマホやカメラをロケットに向けていた。すると私のそばで女性が「えっ岡田さん!?」と驚きの声を上げた。

 

まさかと思いつつ声のする方を見ると、なんとH3ロケットの前プロマネの岡田さんがいらっしゃった!なんでここに?聞くと「この後飛んでっちゃうロケットだから」と。機体移動の現場は撮影NGなので、中型射点へ続く坂道まで撮りに来たそうだ。

岡田さんはスマホをロケットに向けるが、ブレて上手く撮れない様子。すると岡田さんは私に「ちょっと三脚借りていい?」と聞いてきた。私が快諾すると、岡田さんは私の三脚にスマホを保持し、H3ロケット3号機(H3F3)を撮影した。

あの岡田さんが、私の三脚でロケットを撮っているなんて!嬉しくもドキドキしました。岡田さんは壁を感じない、フレンドリーな方だなあとつくづく思うひと時でした。

 

それにしても、「この後飛んでっちゃうロケットだから」の言葉に私はハッとなりました。私にはその認識が抜けていたことに自分で驚きました。眼前にあるあのH3ロケット3号機は、打ち上がってしまえば、もう2度と、見ることはできない。きっと、あのH3F3にとって、これが最後の夜なのだな。

 

③第4光学入口


21:56 第4光学入口 EOS90D 76mm F5.6 1/25s ISO5000


21:58 第4光学入口 EOS90D 283mm F5.6 1/25s ISO5000

 

④竹崎射点


22:20 竹崎射点 EOS90D 500mm F6.3 1/8s ISO5000

風が強すぎる

竹崎射点は海岸に近いため、海風が容赦なく吹き付ける。望遠レンズが風で揺れて揺れて撮れたもんじゃない。(シャッター速度を1/25に、ISOを10000にすれば撮れる。一応)気象状況にもよるが、夜の撮影には向かない場所といえる。

 

なおこれまで紹介した撮影場所①~④は全てロケットから3km圏内にあるので、打ち上げ時には例外なく立ち入り禁止になります。

 

南種子町上里

23:07 南種子町上里 EOS90D 600mm F6.3 1/6s ISO800

こちらも風が強く、カメラが揺れて撮るのが大変でした。粘りに粘って撮れた執念の1枚です。


H3ロケット 3号機 2024/6/30 23:07」(トリミング・微修正後)

この後は長谷展望公園に車を停めて車中泊。広い駐車場には車中泊勢の車が10数台止まっている。

今日は病み上がりの身体に鞭をうった。やりたいことができて満足だが、正直なところ、命を削ったかもしれないとも思う。

 

明日は打ち上げ。どうか打ち上がってくれますように。

 

次回「天光高らかに」

 

天光高らかに H3ロケット3号機 打ち上げ見学旅行記(1)

みなさんこんにちは。

新幹線大好き宇宙機ファンのやまごんです。

 

時に2024年6月末。私は種子島H3ロケット3号機」の打ち上げを見に行ってきました。

種子島へ訪れるのは今年3回目

そして幸運にも打ち上げを見て撮影することができましたので、今回も前回(H3F3)・前々回(H-IIAF48)と同様、旅の記録を旅行記にまとめます。

 

前々回:H-IIAロケット48号機(H-IIAF48) [2024年1月12日打上]

sado-kouta.hatenablog.com

前回:H3ロケット試験機2号機(H3TF2) [2024年2月17日打上]sado-kouta.hatenablog.com

今回は、前回とは異なる時間帯・構図H3ロケットを撮影できました。写真は旅行記内でたくさん紹介していきますので、お楽しみに。

それでは参りましょう。

 


天光高らかに

H3ロケット3号機 打ち上げ見学旅行記(1)


旅の特徴

今回の旅はこんな感じです。
・5回目の種子島旅行
・4泊4日の社会人一人旅
・旅の起点&終点は新潟
・旅の主目的は「H3ロケットを順光で撮影すること」
種子島でレンタカーを使用
種子島では一泊だけホテル泊

 

私が種子島へ行くのは今回が5回目。1人で自由に、様々な交通機関を駆使して新潟⇔種子島間を往還します。旅の目的はH3ロケットを順光で撮影すること。理由は後述種子島ではレンタカーを使って行動します。種子島では今回初めて、ホテルに1泊します。それ以外は車中泊

 

以上をふまえて、H3ロケット3号機の見学旅行記、スタートです~

 


前回の旅を振り返る(2024年3月)


 

2024年2月。私はH3ロケット試験機2号機(H3TF2)を見に種子島へと渡り、機体移動と打ち上げの模様を撮影した。

私にとって、初めて見るH3ロケットの打ち上げでした。

 

(主に新幹線の)撮影が趣味の私は、ロケット撮影も本気で取り組む。種子島から帰還後の3月に、さっそく次の打ち上げ撮影をどうするかの検討を始めた。

そして思った。

「次は順光で撮りたい」と。

 

自身が撮ったH3TF2の写真を確認する。

H3ロケット試験機2号機 2024/2/17 9:22

私が強く感じたのは、この写真が「逆光である」ということだ。

ロケットが陰になり、黒くつぶれている。太陽が向こう側にあるせいだ。

しかもH3TF2は太陽を射抜いて飛んだ。逆光も逆光、いっそ清々しいくらいのド逆光である。


太陽を射抜いて

もっとも、逆光での撮影になるのは承知の上だった。なぜなら旅の目的はH3ロケットの撮影」だったので、場所や光線状態はなんでも良かった。なので公式の打ち上げ見学場かつH3ロケットを正面から撮影することができる「長谷展望公園」で撮影した。

写真のロケット(H3TF2)の打ち上げ時刻は朝9時すぎで、太陽は南東の低空にあり、撮影場所は発射場の北西にある長谷展望公園。つまり逆光になって当たり前の環境であった。

 

逆光も悪いわけではない。

逆光の場合、黒いロケットと明るい燃焼炎のコントラストが、ロケットの重厚さと力強さをより際立たせてくれる。


H3ロケット試験機2号機 2024/2/17 9:22

 

しかしながら、逆光だとロケットの色が黒くつぶれてしまうため、写真に写るロケットがH-IIAロケットなのかH3ロケットなのか、一瞬では見分けがつかない。これが惜しい。


H-IIAロケットとH3ロケットの比較図(作者:私)

H-IIAとH3の外観上の大きな違いは1段・2段目の段間部の色H-IIAは黒だがH3は黄色なのだ。すなわち順光でH3ロケットを撮影できれば、段間部の色の違いから一瞬で「これはH3だ」と見てとれるだろう。

 

だからこそ、次は順光で撮りたいと思った。

 

ただし、打ち上げ時刻が昼から夕方でないと順光での撮影は無理だ。というのも、ロケットは種子島東海岸から打ち上げられるので、見学場所(=陸地)は射点の北・西・南しかなく、太陽が東側にある午前中の打ち上げだと基本的にどこから見ても逆光になる。夜だとそもそも太陽が居ないので順光は無い。

 

では次のH3ロケット(3号機)の打ち上げ時刻はいつなのか。それは「正午すぎ」。つまり順光で撮影できる。
事前に打ち上げ時刻が分かる理由は次の通り。

①次のH3ロケットは「ALOS-4」の打ち上げを行う
ALOS-4の打ち上げ時刻は正午すぎ

 

①次のH3ロケットは「ALOS-4」の打ち上げを行う

「宇宙基本計画工程表」から、次のH3ロケット3号機は「だいち4号(ALOS-4)」を打ち上げることが分かる。

宇宙基本計画工程表については下記記事で説明しています。

宙へ、願い届けて H-IIAロケット48号機 打ち上げ見学旅行記(1) - やまごんの未公開情報とか色々

 

ALOS-4の打ち上げ時刻は正午すぎ

ALOS-4の軌道はだいち2号と同じ。なのでALOS-4の打ち上げ時刻はだいち2号の打ち上げ時刻(12:05)とほぼ同じになると予想できる。

 

よって、ALOS-4の打ち上げなら、射点から南寄りの場所で撮れば順光で撮影できる。

これを念頭に置いて、私は3号機の打ち上げ告知を待った。

 


遠征へのGO/NOGO判断(2024年4月26日)


 

ロケット打ち上げの告知は約2か月前に行われる。

時に、4月26日。JAXAは「H3ロケット3号機を6月30日(日)に打ち上げる」と発表。ペイロードALOS-4。打ち上げ時刻は12時6分42秒~12時19分34秒。

 

お昼休みにTwitterで発表を知り、すぐに打ち上げ見学遠征に行くかどうかの判断する。(なぜなら、一分でも早くレンタカーの予約をする必要があるから。)

【遠征へのGO/NOGO判断】
お昼の打ち上げなので順光で撮影できる → GO
打ち上げ日が日曜日なので月曜・火曜と有休をとって予備日が作れる → GO
予算はなんとか捻出可能 → GO
打ち上げ見学遠征、


映画はやぶさ/HAYABUSAより

電話でレンタカーを予約し、ひとまずは安堵。ネット予約のレンタカーは満車。見なくてもわかる。JAXAより先に打ち上げ予定を報じたNHKとそのお仲間あたりが確保しているのだろう。

宿の予約はなし。種子島はお隣の馬毛島の基地化工事で深刻な宿不足だし、機体移動が仮に深夜だった場合、宇宙センター⇔宿の移動時間で宿の滞在時間が削られるのはもったいないからね。

 


行程表を作ろう(2024年5月)


 

打ち上げ見学旅行に向けてあれこれ準備をする。
まず5月初旬に種子島までの交通機関(夜行バス、飛行機、高速船)の予約を済ませた。

行程表はこんな感じ。

6月28日(金):往路日1(新潟→福岡→鹿児島)
6月29日(土):往路日2(鹿児島→種子島) 夕方~夜に機体移動を見学
6月30日(日):打ち上げ予定日
7月  1日(月):予備日1
7月  2日(火):予備日2・復路日(種子島→鹿児島→東京→翌朝に新潟着)

打ち上げ前日に種子島に上陸し、夕方か夜に行われるH3ロケット3号機の機体移動を見学。翌日のお昼過ぎに打ち上げを見学する。延期に備えて予備日を2日確保した。

 

また、前回(H3F3)・前々回(H-IIAF48)でレンタルしたレンズを、今回思い切って購入した。私は新幹線撮影も趣味なので、レンズには活躍の場がある。これによりレンズのレンタル費用(1万円/回)が不要になる。

 


お祝いと応援の準備(2024年6月)


 

旅の準備を終えた後は、「打ち上げ成功の記念絵の作成」と「撮影計画の策定」と「応援うちわの作成」を行った。

①記念絵作成

打ち上げが成功したらその日のうちにお祝いしたいのが私の想い。今回打ち上げられる衛星は「先進レーダ衛星ALOS-4」なので、ALOS-4を擬人化しようとも思った。が、ALOS-4はあの特徴的な姿こそALOS-4の魅力だと思うので、ALOS-4衛星そのものを描くことにした。

ただ今回はイラストを描く時間がほとんどなかった。理由は5月・6月に新幹線撮影で何度も東北に出向いていたため。珍しい新幹線をたくさん撮影できました。


2024年5月・6月に東北で撮影した新幹線写真たち

このためイラスト作成に使える時間はわずかしかない。だが、クオリティは妥協したくない。そこで作画時間短縮のために3DCADでALOS-4を作った。

ALOS-4の3Dモデル

3Dモデルを作るのに時間がかかったとか言ってはいけない

この3DモデルをベースにALOS-4のイラストを作成した。また、この時作った3Dモデルがこの後の「H3応援うちわ」の作成に役立った。

 

②撮影計画の策定

打ち上げをどこで撮るか決めよう。撮影場所選定で重視した点は2つ。

①順光で撮りたい
②今までにない構図で撮りたい

 

①順光で撮りたい

前述したとおり。前回のH3ロケットの打ち上げが逆光だったので、今回は順光で撮る。

②今までにない構図で撮りたい

私が新幹線を撮影するときは「今まで撮ったことの無い場所で撮る」ことを重視している。理由は、場所が違えば新幹線の写り方や印象がガラッと変わり、これまで見たことの無い新幹線の表情を記録できるからだ。

この考え方をH3ロケットの撮影に適用する。

前回私がH3ロケットを撮った場所は長谷展望公園だった。なので今回は長谷展望公園以外かつ、順光で撮れるところで撮る。大前提として、射点から半径3km以内の範囲には打ち上げ時に立ち入ることができない。


打ち上げ時の立ち入り規制区域

https://www.jaxa.jp/press/2024/04/files/20240426-1_01.pdf

今回の打ち上げ時刻は正午過ぎなので、射点の南側で撮れば光線状態はベストだ。ただし射点の南側に公式の見学場は無いうえ、基本的に射点にいるロケットを目視することはできない。射点にいるロケットを目視できる場所は、射点の真南側にある「竹崎観望台」があるが、こちらは記者専用の見学場所のため、一般人の立ち入りはできない。

そこで思った。「射点が見えないならいっそ、射点の南側で射点に近いところから撮影しよう」。近いところから鮮明なロケット写真を撮ろう!

ということで、南種子町の茎永を撮影場所に選んだ。


地図中央下の「撮影場所(H3F3)」が今回の撮影場所。

事前にGoogleMap等を確認して撮影可能そうな開けた場所を調べて、準備はOK。

 

しかしながら、射点が見えないということは、ロケットがリフトオフする光景が撮影できないことを意味する。私の身体は1つしかない。だが、一眼レフカメラはメインとサブの2台ある。もしサブカメラを射点が見える場所に置けば、リフトオフの光景を撮影できる。

ただしカメラを設置できるのは打ち上げの数時間前だ。動画撮影だとメモリの空き容量かバッテリー残量が尽きてしまう。なので撮るなら静止画だが、カメラに数時間後にシャッターを押す機能は無い。どうしたものか。だが絶対に方法があるはず。

 

といろいろ考えて調べた結果、「カメラ用のタイマーリモコン」の存在を知った。

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9%E7%94%A8%E3%83%AA%E3%83%A2%E3%82%B3%E3%83%B3/b?ie=UTF8&node=675656011

サブカメラの端子に合うリモコンを選定し、早速購入。届いたのは打ち上げ予定日の9日前。間に合って良かった!


届いたタイマーリモコン。JAXA寄附金担当からの書類と一緒に届いた。


週末にリモコンをカメラに接続し、撮影テストを実施。結果は良好。

あとは打ち上げ当日に射点が見えるところにカメラとリモコンをセットすればいい。

 

③H3応援うちわの作成

H3ロケットの応援うちわを作ることにした。

きっかけは6月15日。通信に異常の起きたボイジャー1号からのサイエンスデータ送信が復帰したというニュースを見て、以前「応援うちわ」をデザインしたことを思い出した。

・・・「こっち向いて!」があるなら、「SRB-3点火して」もありなのでは。

(SRB-3:H3ロケットの固体ロケットブースター。これが点火しないとH3はリフトオフしない。)

そうだ、H3ロケットを応援するうちわを作って、種子島にもっていこう!

デザインを考え、打ち上げの1週間前に印刷。

Twitter(現X)に投稿した所なかなか好評だったので、デザインを追加してネットプリントで配布。全国のコンビニで印刷できるようにした。これでみんなで打ち上げを応援できるといいな。

 

「H3♥SRB-3点火して」:SRB-3点火=リフトオフして!という打ち上げ見学者の切実な叫びの表れ

「GO!H3!GO!ALOS-4!」:ロケットと衛星を両方応援。衛星の画像は3DCADで作ったALOS-4モデルを流用。意外なところで役に立った。

お祝いイラスト、撮影計画、応援うちわ。すべての準備は整った。

 


お天気チェック 打ち上げ3日前(2024年6月27日)


 

遠征出発の前日。種子島宇宙センターの天気予報を確認し、打ち上げ日を予想する。

JAXA | 種子島宇宙センターの気象情報

毎度のことながら、この天気予報のチェックはとても緊張する。もし、打ち上げ日前後が雨マークだったら。もし、打ち上げ日が強風だったら。

祈る思いで週間気象情報を開く。


6月27日時点の種子島宇宙センターの週間気象情報

結果は可もなく不可もなくといったところか。

打ち上げ予定日、6月30日昼頃の天気は曇りで打ち上げに支障は無いが、前日午後の天気が雨模様かつ「雷」の予報がある。打ち上げ前日の午後はH3ロケット3号機の機体移動がある時間帯なので雨・雷があるのはまずい。打ち上げは1日延期の7月1日になりそうだ。

ただ天気と風的には7月2日の打ち上げもよさそうに見える。私は7月2日まで島にいるからなんとかなりそうだが果たして。

 

次回:種子島へ行こう&機体移動編

 

旅行記(2)へ続く

みんなの想い、天空へ H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(5)

前回(4)はこちら

sado-kouta.hatenablog.com

旅行記(1)はこちら

sado-kouta.hatenablog.com

 

新潟在住の宇宙機ファンがH3ロケット試験機2号機の打ち上げを見に行ったお話。

 


みんなの想い、天空へ

H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(5)


 

前回は長谷展望公園で見たH3ロケットの打ち上げの様子を紹介しました。

今回は打ち上げ後の「余韻編」。

打ち上げ後にしか見られない、間近で見る移動発射台やその他種子島のプチ観光について見ていきましょう。

 


余韻を楽しもう①(2024年2月17日)


 

午前中に行われたH3ロケット試験機2号機の打ち上げは無事成功。私は打ち上げ記念アートで成功をお祝いしました。

 

さてこの後どうするか。宇宙オタクが向かう先は「種子島宇宙センター

──の近くの道。

 

理由はこれ。道路に「H3打ち上げ成功」ののぼりが立っていました。

打ち上げ後数時間経つと、地元の人が打ち上げ成功ののぼりを掲げるのです。


おめでとう!

風にはためくのぼりを見つめながら、(やっとこの日が来た)と感じる。2020年度のH3ロケット初号機の打ち上げが延期になり、2023年3月の初号機打ち上げが失敗し、2024年2月の今日、遂に。

 

成功の余韻をかみしめた後は、種子島の観光地の1つ、「千座の岩屋(ちくらのいわや)」へ。波が作り出した洞窟を見に行きます。
私は2018年2月(H-IIAF38)以来、6年ぶりの訪問だ。当時は駐車場に野良猫がいたっけ。

と思いながら駐車場に車を停めると

2024年2月17日撮影

猫ちゃんがいた!
2匹の茶色い猫が駐車場で日向ぼっこをしていました。人にずいぶん慣れている様子。

2018年に訪れたときもここに茶色い猫がいました。同じ猫かもしれないと思うとなんだか嬉しいですね。


2018年2月26日撮影

同行の学生さんと「(野良猫は)打ち上げの音でびっくりしたかな」「何事かと思っただろうね」などと談笑しつつ砂浜を歩き、洞窟の中へ。


洞窟の中から

しばし洞窟の中から海を眺めました。

ロケットの打ち上げという、人類の技術が生んだ芸術を眺めた後で、自然が作り出した造形を見る。両者が対照的すぎて、なんとも不思議な気持ちになれました。

 


千座の岩屋は砂浜も美しい。

 

千座の岩屋をみた後は、近くにある恵美之江展望公園へ。目的は移動発射台の撮影。
ロケットこそいないですが、今後打ち上げを撮影するときの参考に記録しました。

 


恵美之江展望公園から EOS90D 135mm F9.0 1/500s ISO125

 

長谷展望公園と比べると、その近さを実感します。近いということは撮影に有利なだけでなく、「音」が凄いということでもある。いつかここでH3ロケットを撮ってみたいな。

 

夜、民宿テレビで打ち上げのニュースを見る。

最高のテロップと、岡田PMの把持(はじ)シーン

打ち上げ成功のニュースが見られるのも、打ち上げ後ならでは。

夜、久々にお酒を飲みつつ撮った写真をTwitter(現X)に投稿しました。ロケットの写真を撮ってみんなに見てもらうという、種子島へ来た大きな目的が果たせてホッとしました。

 


余韻を楽しもう②(2024年2月18日)


 

打ち上げの翌日、種子島滞在最終日。

民宿の出会い帳に感謝の言葉を記し、4日間お世話になった民宿のお母さんに別れを告げて、向かう先は種子島宇宙センター


中型射点の坂道から

 

第2射点の間近でH3用の移動発射台(ML5)を見学しました。白い円柱と青いラインがアクセントになっている良い発射台だと思います。欲を言えばH-IIAの移動発射台のようにロケットの号機を記してほしいなと思ったり。打ち上げの写真を見れば何号機かすぐ分かって便利ですから。

 

参考:H-IIA用の移動発射台。フライトナンバーが記されている

 

海岸を歩いていると、驚いたことに先月のH-IIAF48打ち上げ後に見たヤシの実がまだありました。感動!

←2024年1月(H-IIAF48) 2024年2月(H3TF2)→

このヤシの実は間近でH-IIA/H3ロケットの打ち上げを見れたのだろう。羨ましい。

 

そうそう、今回は移動発射台見学のために海岸へ行くということで、サンダルを持ってきました。昨月お会いしたフォロワー、Zさんからのアドバイス(サンダルがあると良い)を早速活用してみるのだ。


中種子のAコープ併設のダイソーで買ったサンダル(330円)

 

綺麗な海だ!いちど触れてみたかったんだよね!

って波早っ


あっ

 

波が思いのほか高く、ズボンが濡れちゃいました。でも冷たくてきれいな波に触れられて気分は最高でした。天気が良かったので、ズボンは気が付いたら乾いていました。

 

移動発射台見学の後はいよいよ帰路へ。種子島空港にておみやげに南日本新聞を購入しました。南日本新聞は鹿児島県の地方紙なので、打ち上げの翌日にはロケットの記事が一面に出るのだ。

一面トップ

見出しに踊る「H3 2号機成功」の文字。最高のお土産になりました。

 


帰りの飛行機(種子島空港鹿児島空港)

 

飛行機に搭乗し、JALの機内BGM「I Will Be There with You」を聴きながら、「次回」について想いを巡らせる。

私は次、いつ種子島に来るだろう?早くて半年後か、もっと後になるか。
少なくとも、これが最後だとは到底思えない。次来たら何しよう?って考えてばかりだったから。

やり残したことは次回の私のお楽しみに。

また来ます。

予定は無いが、また種子島に来ることを確信しながら島を後にしました。

 

鹿児島空港からは大阪空港行きの便に乗り換え。


星空のような夜景(大阪・伊丹上空)

大阪からは夜行バスで新潟へ帰還しました。

バスを降りた時の突き刺すような寒さが妙に懐かしかったです。

 

 


あとがき

 

ここまで読んでくれてありがとうございました。種子島やロケット打ち上げ見学について、新しい発見があれば幸いです。

 

あとがきに変えて、アドバイスを1つ。

★打ち上げ前は、無理に見学場を離れないこと。

今回の私の教訓です。

私は知り合いの送迎などのため、見学場を打ち上げ1時間半前に離脱し、50分前に戻りました。その間に長谷展望公園の駐車場は満車になり、私は臨時駐車場からカメラを抱えて駆け足で見学場に戻るという、体力的にも精神的にもしんどい思いをしました。

さらに50分では、カメラ5台のセッティングをするのが精いっぱいで、打ち上げ見学者との談笑や打ち上げ前の精神統一があんまりできませんでした。

もっと打ち上げ見学者とお話したり、落ち着いてロケットと向き合いたかった!

ロケット打ち上げ撮影は練習無しの一発勝負ですから。ロケットを撮るために来た人であれば早めに来てスタンバイし、どう撮影するか練習しておきましょう!

 

★同行者と会話が成り立つか、事前に通話で確認しましょう。

旅を共にする人が会話泥棒をしたり、空気の読めない人物でないか、オンライン通話で確認しておいた方がよいでしょう。

 

 

 

最後に私(やまごん)のTwitter(現X)アカウントを紹介して終わります。

日々いろいろ呟いています。打ち上げ見学のことでわからないことがあったら聞いてくださいね。

https://x.com/sado_kouta

 

Q. 種子島って遠い?

A. 楽しい

 

それでは、またの機会にお会いしましょう。

みんなの想い、天空へ H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(4)

前回(3)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

旅行記(1)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 

新潟在住の宇宙機ファンがH3ロケット試験機2号機の打ち上げを見に行ったお話。

 


みんなの想い、天空へ

H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(4)


 

前回はH3ロケット試験機2号機(H3TF2)の機体移動の模様と、種子島各所で撮影したロケット写真を紹介しました。

今回はいよいよ打ち上げ編。

 

H3TF2の打ち上げ日は2024年2月17日。奇しくもH3ロケット試験機1号機の幻のリフトオフと同じ日になりました。

この1年で多くの人々がH3ロケットについて思いを巡らせたことでしょう。打ち上げ中止の原因や、打ち上げ失敗の悲しみ、再発防止策、H3の今後、そしてH3TF2の打ち上げ。

 

2024年のこの日。1年前と同じ日、同じ場所にH3ロケットが居る。H3ロケットの打ち上げを実証するために。衛星を宇宙へ送り届けるために。日本の宇宙開発の未来を繋ぐために。

これから行われるのはH3ロケットのRTF(Return To Flight)。


約3000通の応援メッセージが記されたフェアリング

みんなが待ち望んだRTF。

H3ロケットの関係者はもちろん、搭載衛星の関係者や、地元の方々、H3で打ち上げ予定の宇宙機の関係者、宇宙ファン、打ち上げ見学者etc...

 

今日、H3TF2はみんなの想いを載せて打ち上がる。

 


みんなの想い、天空へ 打ち上げ当日(2024年2月17日)


 

夜明けとともに起床し、私はIさんと共に打ち上げ見学場所の長谷展望公園へ移動。

打ち上げ時刻は午前9時22分55秒だ。

 

6時半に長谷展望公園に到着。射点の見える芝生エリアへ行くと、打ち上げの3時間前ということもあって思いのほか見物人がいた。


暗くて見えづらいが、最前列には三脚がズラリ並んでいる

 

我々も三脚を立てて明け方H3ロケットを撮影。


6:44 長谷展望公園から EOS90D 450mm F6.3 1/80s ISO800

第一射点(VABの左側)から打ち上がるH-IIAロケットと違い、H3ロケットは第2射点なので機体の上半分が遮られることなく見られる。良い場所だ。

 

撮影後、私は宇宙ヶ丘公園にカメラをセットするため、Iさんに場所取りを任せて長谷を離脱する。離脱時間は30分程度。

本来であれば打ち上げ2時間前から見学場所で待機しているべきである、なぜなら打ち上げの2時間前に長谷展望公園を離脱するのは①駐車場の満車の危険がある②打ち上げの心の準備の妨げとなるためあまり褒められたことではないからだ。

だが、宇宙ヶ丘公園からの映像を収めるため、やるしかない。

 

宇宙ヶ丘公園に到着後、H-IIAF48の時と同様にカメラをセット。

宇宙ヶ丘のテレメータ施設をチラリみると、意外なことにアンテナはロケットの方を向いていなかった。このアンテナはH3の打ち上げには使われないのだろう。とすれば、H-IIAロケットの引退後、このアンテナは解体されるかもしれない。

 

さて、早く長谷展望公園に戻らないと駐車場が満車になってしまう。

とはいえせっかくなので宇宙ヶ丘公園からH3ロケットを撮影。これを見た人の打ち上げ見学場所検討の参考になれば幸いだ。

←157mm F8.0 1/500s ISO160  600mm F6.3 1/2000s ISO200→
7:27 宇宙ヶ丘公園から EOS90D 

 

打ち上げ1時間40分前に長谷展望公園へ帰還。幸い駐車場には空きがあり、無事駐車することができた。

ところが、ここから状況は予想外の方向へ進んでゆく。

 

なんと昨日会ったテント泊の学生さんが「上里にビデオカメラを置きに行きたい」と言ってきたのだ。おいおい、こちとら超焦りながら戻ってきたというのにまた車を出さないといけないのか。上里への往復は15分かかる。最悪の場合駐車場が満車になってしまうぞ。路駐なんて嫌だぞ。勘弁してくれ!

…だが、ビデオカメラを設置したいという気持ちはよく分かる。私自身、カメラを6台持ってきて、ついさっき宇宙ヶ丘公園に1台セットしてきたのだから。

 

内心行きたくは無かったが、ビデオカメラを設置するだけならそう時間はかかるまい。やむなく学生さんを載せて上里へ。8時に上里の某所に到着するとそこには私と相互フォロワー(X)のOさんが。

Oさん謹製の宇推くりあボード。かわいい!!

 

そして学生さんはビデオカメラを設置し…OさんのPCに接続し始めた。

 

ん 、 な に を し て い る ?

 

どうやらビデオカメラをOさんのPCにつないで映像を配信するつもりのようだ。置くだけじゃないのか…

8:04 上里某所から EOS90D 600mm F6.3 1/1250s ISO100

 

しかし待つこと5分、10分…作業は一向に終わらず。時刻は8時12分…打ち上げの70分前になった。もう限界だ。急かして長谷へ帰還する。

 

しかし、時すでに遅し。

 

私たちを待っていたのは、長谷展望公園「満車」の看板と渋滞であった。

この時、打ち上げ65分前。絶望が思考を埋め尽くし、胸が締め付けられる。本来であればカメラ5台のセッティングで忙しいはずなのに、私は何をやっているのだろう。

もはやできることといえば誘導員の指示通りに車を走らせることだけ。

 

すると、車が空き地にどんどん入っていく。

どうやら空き地は駐車場のようだ。公園の駐車場が満車の時は臨時駐車場が解放されるのか!

なんとか車を停めることができたものの、しかし長谷展望公園まで1km、学生さんとカメラを抱えて徒歩で向かう。

 

息切れしながらIさんの元に帰還したのは打ち上げ50分前のこと。大急ぎでカメラ5台を立ち上げる。

あたりを見回すと、公園後方の屋台に向かって長蛇の列が伸びている。Iさん曰くH3ロケットのクリアファイル・バッジの配布をやっているのだそうだ。誇らしげにクリアファイルを見せてきた。

 

私も欲しい気持ちもあったが、カメラのセッティングでそれどころではない。

 

1か月前のH-IIAF48の時は4台のカメラを使ったが、今回は1台増えた。その1台は長谷展望公園の手ごろな場所にセット。残る4台は私のそばで使う。


カメラ群の集合写真

今回のカメラ構成は次の通り。上記の写真に写る機材は1~4だ。

1:超望遠静止画:Canon「EOS 90D」+SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary
2:超望遠動画:Panasonic 4Kビデオカメラ「HC-VX985M」
3:中望遠動画:CanonEOS Kiss X5」+Canon EF-S 55-250mm 
4:広角動画:スマホ
5:広角動画:パノラマカメラ
6:広角動画:パノラマカメラ@宇宙ヶ丘公園

 

9:02。打ち上げ20分前にやっとセッティングが終わり、射点を撮影できた。打ち上げ前恒例の散水が行われている。

よし、なんとか間に合った。

 

9:12 公園の仮設スピーカーが打ち上げ10分前の最終GO/NOGO判断が「GO」となったことを告げる。

次いでカウントダウン音声が流れ始めた。

480, 79, 78, 77…

H-IIAロケットの時とは異なる機械音声お姉さんだ。そうだ、私はH3ロケットの打ち上げを撮るのだ。H-IIAではない。ただ私はこの時点でも"打ち上がらないかもしれない"と思っていた。ちょうど1年前がそうだったように、何か異常が起きれば、メインエンジンに点火したとしてもH3はリフトオフしないのだ。

リフトオフの瞬間まで打ち上がるか分からない、そんな不確定要素を撮りに、私はここに来た。

 

280, 79, 78…

深呼吸をし、H3TF2に向き合う。ようやく落ち着いて精神統一できるようになった。

今日の打ち上げはただの打ち上げではない。H3ロケットのRTFだ。この成功によって、H3ロケットで打ち上げ予定の宇宙機が宇宙への切符を手にすると言っていい。

MMXALOS-4、HTV-X、ETS-9。LUPEXに、LiteBIRD。H3に乗る宇宙機たちの名前が脳裏をよぎる。

MMXALOS-4、HTV-X

ETS-9、LUPEX、LiteBIRD

 

そう、あのH3ロケットで、数多くの宇宙機が宇宙へ行くのだ。

 

30, 29, 28…

 

「頼むぜ。」私はシャッターボタンに指を添えた。

 

2/17 9:22:55 LIFT OFF


9:22 長谷展望公園から EOS90D 421mm F9.0 1/1250s ISO100

 


9:22 長谷展望公園から EOS90D 421mm F9.0 1/1250s ISO100

 


H3ロケット、氷解(トリミング画像)

打ち上げ時の振動で機体を覆っていた氷が剥離している。まるでアニメ映画「王立宇宙軍」の打ち上げシーンのようだ。

 


みんなのH3ロケット、天空へ
9:22 長谷展望公園から EOS90D 238mm F9.0 1/1250s ISO100(画像修正済み)

 

H3ロケットは上昇を開始。H-IIAよりもゆっくりめに感じたが、動画を見返しても大きな速度差はなかった。


9:23 長谷展望公園から EOS90D 275mm F9.0 1/1250s ISO100

 


9:23 長谷展望公園から EOS90D 600mm F9.0 1/1250s ISO100

 

上昇するH3ロケットを撮影していると、ロケットの爆音が聞こえてきた。H-IIAF48よりも音量は控えめだが、「バリバリ」という音はH3の方がハッキリ聞こえた。

 


光に包まれて
9:23 長谷展望公園から EOS90D 516mm F9.0 1/1250s ISO100

太陽に近づいたのか、H3ロケットの周りが光に包まれた!

まるで現実とは思えない光景だ。後で見返してわかったことだが、H3TF2は太陽の真ん前を突っ切っていた。


太陽を射抜く (スマホ広角動画切り抜き)

 

さらに上昇するH3TF2。背景を流れる雲が次第に速くなっていく。

とその時、──H3ロケットが虹色に包まれた。

 

 

静止画でも撮影できていた。なんと幻想的な光景であろうか。

 

その後もH3は飛行を続け、みるみるうちに小さくなっていく。

打ち上げから116秒後のタイミングでSRB3の分離が行われる。無事に分離できるか、緊張の瞬間だ。


SBR-3分離 2024/2/17 9:24」

 

SRB3分離キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

お見事!2基のSRB3が整然と分離。白い航跡が分かれるのが見えたのであろう、見物客が「分離した!」「みえる!」と歓声を上げる。

 

ちなみに写真のトリミング前後はこんな感じ。

←9:24 長谷展望公園から EOS90D 600mm F9.0 1/1250s ISO100  トリミング後→

600mmのレンズでもこの小ささ。

 

続いて真ん中のコア機体が姿勢を変える「ドッグレッグターン」を撮影。

←SRB-A分離後 ドッグレッグターン後の機体→

10数秒のあいだにロケットはぐいーんと姿勢を変える。

ちなみに「ドッグレッグターン」は必ず行われるものではない。今回は「地球の南北を通る極軌道衛星」の打ち上げなのでドッグレッグターンが行われるが、静止衛星宇宙ステーション補給機の打ち上げの場合、軌道が異なるためドッグレッグターンは行われない。

また、天気が良くないとドッグレッグターンを見ることはできない。条件が揃った時だけに見られるレアシーンなのだ。

 

さて、撮るものを撮ったのでカメラを三脚に戻す。H-IIAよりも長い打ち上げだった気がする。撮った写真をスマホに送り、Twitterでみんなに共有。


H3ロケット試験機2号機 2024/2/17 9:22」(トリミング・修正後)

 

ロケットの方は第2段の燃焼が開始。あとは衛星分離まで正常にいけばいいが…

打ち上げから何分経ったかは覚えていない。しかしその時は来た。

公園の仮設スピーカーが告げる。「CE-SAT-IE分離」

 

うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!

その後もH3TF2は飛行中だが、1つ大きな役目を成し遂げたのだ。キヤノンの衛星は宇宙へ行った。H3ロケット試験機2号機は成功したのだ。

もう心の底から叫んだ。「よっしゃー!!」

全身が喜びに震える。1年間のモヤモヤが吹き飛んだ思いだ。

私はぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。

・・・

衛星分離後、私はIさんとテント泊の学生さんを連れて宇宙センターへ向かった。彼らは移動発射台を撮影しに行くが、私は別のことをする。…打ち上げ記念アートの作成だ。

 

2週間かけて描いた推しのイラストと、今日撮れたての打ち上げ写真を組み合わせて一つのアートにするのだ。

もしも打ち上げが見られなかったり、打ち上げが失敗していたら?考えるだけでも恐ろしいが、私は暗澹たる気持ちになっていただろう。そのリスクを覚悟していた分、喜びもひとしおだ。

 


打ち上げ成功記念アートの作成

お祝いの言葉を記すたびに、心が喜びで満たされるのを感じる。

ああ、なんて幸せなんだろう。

 

アートを完成させて投稿。ご本人にも見ていただけて、配信でも紹介いただきました!

https://twitter.com/clearusui/status/1758863417455366535

【#H3】#くりあH3 H3ロケット試験機2号機記者会見!#宇推くりあ - YouTube

 

最高に嬉しかった!!

打ち上げ後も笑顔に過ごすことができて、本当に良かった。

 

みんな、みんな、おめでとう!!

 

このあとは打ち上げ後ならではのお楽しみへ。

次回「余韻を楽しもう」

sado-kouta.hatenablog.com

みんなの想い、天空へ H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(3)

 

前回はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

旅行記(1)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 

新潟在住の宇宙機ファンがH3ロケット試験機2号機の打ち上げを見に行ったお話。

 


みんなの想い、天空へ

H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(3)


 

前回は種子島上陸1,2日目の様子をまとめました。

 

今回はH3ロケット試験機2号機(H3TF2)の機体移動を見学&撮影します。

初めて見るH3ロケットは果たしてどんな姿なのだろう!

 


機体移動を見よう! 打ち上げ1日前(2024年2月16日)


 

大型ロケット組立棟(VAB)で組み立てられたロケットが、打ち上げ前にVABから射点へ移動する。それが「機体移動」だ。


ロケットの丘から見たVAB(左の建物)と射点(赤白の鉄塔)

 

H-IIA/IIBロケットの場合、機体移動は一般的に打ち上げの13~15時間前に行われる。しかしH3ロケットはその常識が通用しない。

H3TF1:打ち上げは「午前10時37分55秒」機体移動は「前日16時00分~」
機体移動は打ち上げの約18時間前 ※2月17日及び3月7日の打ち上げ共通。

H3TF2:打ち上げは「午前9時22分55秒」機体移動は「前日15時00分~」
機体移動は打ち上げの約18時間前

 

理由は不明だが、H3ロケットの機体移動は今のところ打ち上げの18時間前に行われるようだ。

 

なお機体移動の時間帯は記者説明会で事前に公表される。ただし政府のひみつ衛星(例:情報収集衛星)の打ち上げの場合、機体移動の時間帯は公表されないので注意が必要だ。

 

機体移動の見学場所はいくつかあるが、今回も(H-IIA F48の時と同じく)見晴らしのいい「ロケットの丘」に決定。場所を確保し、後はイラストの色塗りをしながら機体移動の時間を待った。


くりあちゃんの色塗りの様子

色塗りは数時間かかる作業なので、休憩がてらロケットの丘に顔を出す。アメリカ帰りのプロカメラマンの人とお話したり、VABを眺めたりしていると、ロケットの丘に青い服を着た男性が現れた。どこかで見た顔だな…

 

えっ、岡田PM!?

 

なんとH3ロケットのプロジェクトマネージャーの岡田さんロケットの丘に来訪されたのです。岡田PM曰く、お昼休みに顔を出しに来たとのこと。

ロケットの丘にいた見学者はみんな大興奮。さらに岡田PMは快く記念撮影&サインに応じてくれました。

私はアメリカ帰りのプロカメラマンさんのカメラで岡田PMとプロカメラマンさんの2ショットを撮影。シャッター速度が遅く、白飛びしたのでシャッター速度を調整してさらに撮影。良い写真が撮れたと思う。これがカメラに詳しくない人だったら白飛び写真のままになってたかもしれない。自分のスキルが役立ってうれしかった。


ロケットの丘でサインを頂いた見学者の1枚。(撮影許可済み)

それにしても、岡田PMにお会いできるとは…私は手短に「応援しています。」と伝え、岡田PMと記念撮影&握手をしました。とても力強い握手でした。


岡田PMと私。H3TF2のいるVABを背景に。

岡田PMは見学者の方々に「みんなの応援が推進力です」「タイムスケジュールは順調です」と伝えると、風のように去っていきました。打ち上げまで24時間を切った中、こうして見学者にあいさつに来てくれるとは…暖かい心遣いに胸が熱くなりました。

 

その後ロケットの丘にいると、若い男性が私に声をかけてくれました。おや…どこかで見た顔だな。

なんとH-IIA F48の打ち上げ見学でお会いした「テント泊の学生さん」ではないか!さらには長谷展望公園で一緒に打ち上げを見た「打ち上げの常連っぽいおっちゃん」もいた!

驚くべきことに、学生さんもおっちゃんも私も本州に住む人間である。種子島在住の人ではない。なのにH-IIA F48の打ち上げから1ヶ月後、こうして種子島で再び相まみえるとは…物好き連中にもほどがあるだろう(笑)

 

そうこうしているうちに時は流れ、機体移動1時間前となった。くりあちゃんのイラストは無事完成。お昼ご飯は食べ逃した。

あとはH3ロケットの機体移動撮影に全力を尽くすだけだ。


撮影準備OK

私が持ってきた2台のキヤノン製カメラがVABを見つめる。

感慨深い光景だ。というのも、H3TF2にはキヤノン電子の衛星「CE-SAT-IE」が搭載されている。つまりキヤノンの衛星を載せたロケットを、キヤノンのカメラで撮るのだ。

私はカメラに「頑張ろうな」と声をかけた。

ずらりと並ぶ、見学者のカメラたち。

 

14:25 VABの扉が開いているのを確認。

←14時ごろのVAB →14:26ごろのVAB

上の2枚の写真、VABの右側を見比べると、扉が移動しているのが分かる。
(余談:VAB内では手前と奥側でロケットを2基組み立て可能。しかしH3ロケットは今のところ写真奥側のVAB-2のみで組み立てられる。)

 

14:58 機体移動開始まであと2分になった。

事ここに至っても、VABの中にH3ロケットがいるとの現実感は無かった。

 

さあ、機体移動が始まる。

 

ここからはロケットの写真を設定付きで公開します。特筆ない限りトリミングは無し。カメラのセンサはAPS-Cサイズ。焦点距離の換算はしていませんのでご注意ください。

15:00 機体移動スタート。

15:01 ゆっくりと、まずはH3ロケットを載せた移動発射台「ML5(Movable Launcher 5)」が姿を現す。


15:25 ロケットの丘から EOS90D 283mm F6.3 1/400s ISO200


白と青の鮮やかな柱が目に飛び込む。H-IIAロケットの移動発射台ではない。ありゃH3の移動発射台だ!

 


15:03 ロケットの丘から EOS90D 335mm F6.3 1/400s ISO200

おお…

H-IIAより太いコア機体、黄色い段間部、なめらかな曲面で構成されたフェアリング

あれはH-IIAロケットではない──

 


15:05 ロケットの丘から EOS90D 347mm F6.3 1/400s ISO200

あれは─

H3ロケットだ!

 


移動発射台の把持機構がみえる
15:06 ロケットの丘から EOS90D 347mm F6.3 1/400s ISO200

2本の灰色の柱の間に、鉄骨トラスでできた構造物が見える。あれは今回(H3TF2)からML5に初めて搭載された新機構「機体把持(はじ)装置」(把持機構とも)だ。写真では垂れ下がっている2本のアームが、使用時は「前ならえ」の状態になり、円形の空洞にH3ロケットを抱え込むのだ。ただし把持機構は主にH3ロケットにSRB3が4本ついた「H3-24L」形態の時に使用されるので、今回のH3-22S形態では使用されない

いつか使用されているところを撮りたいものだ。

 


15:09 ロケットの丘から EOS90D 600mm F6.3 1/400s ISO200

 

フェアリングには「RTF」の文字。ああ、この機体はH3TF2なのだな、と認識させられる。

RTFは「Return To Flight(飛行再開フライト)」の意味がある。これが見られるのはRTFであるH3TF2限定だ。

ちなみにRTFの文字にはH3TF2の応援キャンペーンに寄せられた約3000件の応援メッセージが印字されている。私のメッセージもそこにある。

 

みんなの想いを載せて、H3ロケットは明日打ち上げられる。

15:15 ロケットの丘から EOS90D 347mm F6.3 1/400s ISO200

 

フェアリングには「JAXA」のロゴと「H3 JAPAN」の文字もある。

JAXAのロゴが撮れてホッとする。というのも、私はJAXAのロゴは今後H3ロケットから無くなってしまうと予想しているからだ。見学記(1)にも書いたが、H3ロケットは現在JAXAが打ち上げ業務を行っているものの、将来的には三菱重工に移管される。H-IIA/Bでは三菱重工への移管とともにロケットからJAXAのロゴはなくなり、代わりにスリーダイヤが貼られるようになった。

つまりH3ロケットもいずれJAXAのロゴがなくなり、機体のどこかに三菱重工のスリーダイヤが記される可能性が高い、というわけだ。

 


15:13 ロケットの丘から EOS90D 150mm F6.3 1/400s ISO400

H3ロケットの旅立ちの舞台、第2射点が近づいてきた。

ゆっくり、しかし着実に機体移動は進む。


15:15 ロケットの丘から EOS90D 347mm F6.3 1/400s ISO200

丘の切れ目から移動発射台の全容が見えるようになった。

移動発射台の下では2台の運搬車「ドーリー」が移動発射台とH3TF2を運んでいる。


地上をめいいっぱいズーム+トリミング。運搬車には「DOLLY-2」と書かれている

 

地上では30人近い人たちがロケットに寄り添っている。人と比べてH3ロケットのなんと巨大なことよ…

 

機体移動開始から20分。H3TF2は赤白の鉄塔の間に進入。


15:21 ロケットの丘から EOS90D 293mm F6.3 1/400s ISO200

そして、機体移動開始から25分。H3ロケットは射点に到着した。


射点に到着したH3ロケット
15:25 ロケットの丘から EOS90D 302mm F6.3 1/250s ISO200

 

機体移動にかかった時間はH-IIAロケットもH3ロケットも25分だった。

 

私はカメラを片付けた後、呆然と射点を見つめる。

撮影に夢中で今まで意識していなかったが、私がH3ロケットを見るのはこれが初めてだ。これまでCC画像や写真、動画でしか見てこなかった、かつて「新型基幹ロケット」と呼んでいたものが今「そこにいる」。

しかも機体移動を終えて明日のフライトを待っている。

現実とは思えない光景に思わず「やべぇな、機体移動しちゃったよ」と声が漏れる。

 

この後は宇宙センターや南種子町の各所でH3ロケットを撮影した。以下に作例として紹介する。

①ロケットの丘

上記。

②中型射点(へ続く坂道)


16:15 中型射点の坂道 EOS90D 150mm F6.3 1/400s ISO200

 


16:15 中型射点の坂道 EOS90D 600mm F6.3 1/400s ISO200

中型射点は種子島のロケットを一番近くで見られる場所。コア機体(中央の太いやつ)の「JAPAN」の文字がよく見える。ちなみにH-IIA/Bロケットまでは「NIPPON」表記だったが、H3ロケットからは「世界を舞台にして活躍し、世界中の⼈たちに使ってもらいたい」という思いを込めて「JAPAN」に変わっている。

 


宇推くりあ氏のネップリ(デビュー1ヶ月記念)とH3ロケットの2ショット


中型射点からくりあ氏(リスペクト呼び)とH3を一緒に撮影。くりあ氏は現在H3ロケットの応援サポーターをしている。3年前には想像もしなかったことだ。

 

③第4光学入口


16:44 第4光学入口 EOS90D 275mm F7.1 1/800s ISO200

 

ロケットの丘からだとH3ロケットの機体の一部が赤白の鉄塔に隠れてしまうが、ここなら隠れることなく機体が見られる。ここは射点の南南西に位置している為光線状態は良好。

 

④竹崎射点


17:08 竹崎射点 EOS90D 211mm F7.1 1/400s ISO200

 


17:04 竹崎射点 EOS90D 516mm F7.1 1/500s ISO200

竹崎射点はH3ロケットを真横から見られる場所。駐車場も撮影可能エリアも広く、機体移動見学におすすめの場所だ。

なおこれまで紹介した撮影場所は全てロケットから3km圏内にあるので、打ち上げ時には例外なく立ち入り禁止になります。

ファインダー越しに見るH3ロケット

 

⑤上里地区


17:36 上里地区路上 EOS90D 150mm F7.1 1/250s ISO200

 


17:36 上里地区路上 EOS90D 600mm F6.3 1/320s ISO200

 

ここら辺はH3ロケットを正面から撮影できるスポット。駐車スペースが限られているので見学の際は注意。なお各所への撮影はH-IIAF48で出会った学生さんと一緒に行った。

 

⑥長谷展望公園


18:24 長谷展望公園 EOS90D 600mm F6.3 1/20s ISO3200

 

日が暮れてきたので、長谷展望公園で今日のラストショットを撮影。学生さんを長谷の滞在場所に送り、私とIさんは西之表の宿へ帰還。お腹空いた~

 

20時過ぎに宿に到着したが、車の後部座席に見慣れぬスマホがあった。Iさんのものではないという。とすれば…学生さんの忘れ物だ

 

すぐに送り届けねば!

 

急きょお使いミッションが発生。Iさんを宿に残し、私はお昼も夕飯も食べずに急いで車を走らせ、片道30分かけて学生さんの滞在場所へ向かう。私は忘れ物をしたときの辛さ、心細さはよく知っている。

 

その後無事に学生さんと再会し、スマホを手渡しできた時は心底ホッとした。

 

時刻は20時40分。明日の打ち上げを前に早く寝たかったのだが、予定通りにはいかないものである。とはいえ学生さんを責める気は全くない。忘れ物は辛いからね。

 

ただ、もっと早く、忘れ物に気がついてあげられたらと思う…心細かったろう。後悔が頭の中を支配する。くそっ。くそっ!くそっ!!

 

もうヤケだ。早寝プランは放棄して、夜のH3ロケットを撮影してやろう。これくらいの役得がなくちゃね!

空腹とふがいなさで若干キレつつロケットを撮影。

 

○上里地区

 ←150mm F5.0 1/4s ISO400  600mm F6.3 1/20s ISO3200→
18:24 上里地区 EOS90D 

 


H3ロケット 試験機2号機 2024/2/16 22:41」(トリミング・微修正後)

 

闇に包まれるH3ロケットはとても美しかった。

これが撮れたのは学生さんの忘れ物のおかげと考えよう。

それにしても今日は岡田PMに会い、機体移動を撮り、あちこちでロケットを撮影し、種子島を何度も縦断…てんやわんやの1日だった。

 

さあ、明日は打ち上げだ。

次回「みんなの想い、天空へ」

sado-kouta.hatenablog.com

みんなの想い、天空へ H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(2)

前回はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 

新潟在住の宇宙機ファンがH3ロケット試験機2号機の打ち上げを見に行ったお話。

 


みんなの想い、天空へ

H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(2)


 

前回はH3ロケット試験機2号機(H3TF2)の見学旅行に行くまでの背景をまとめました。

 

今回は種子島への往路と、上陸1・2日目のまとめです。それではどうぞ。

 


種子島へ行こう 打ち上げ3日前(2024年2月14日)


 

羽田空港、朝7時。

夜行バスから降り、空港カウンターで搭乗手続きを済ませる。今回はスカイマークを初めて使う。チケットにピカチュウの絵柄があるけど、コラボでもしているのかな?

搭乗待合室から搭乗機を撮る。今回の翼はB737だ。

鹿児島行きの翼、スカイマークB737(JA73NT)と富士山

 

尾翼の向こうにはなんと…富士山が見える!/(^o^)\フッジサーン

これは嬉しい!澄んだ冬の空気に感謝だ。さらには右手から見慣れぬ黄色い飛行機が現れて…

ピカチュウジェット(BC1・JA73AB)

 

あれは…なんとスカイマークピカチュウジェットではないか!本当にコラボしていたとは!黄色と青のコントラストが最高に美しい。新幹線ファンにとって黄色は幸運の色。なんとも心明るくなる出会いでした。

 

午前8時50分、私を載せた無印のスカイマーク機は羽田D滑走路より離陸。D滑走路は埋立地と桟橋を組み合わせた世界でも珍しい滑走路。リフトオフ間際、窓の外に疾走するジェットフォイルの姿が見えた。

東海汽船ジェットフォイル「セブンアイランド友」

 

羽田空港鹿児島空港のフライト時間は125分。冬の昼間、かつ快晴に恵まれたため、眼下に見える富士山をたっぷり堪能できた。席は右の窓側がオススメだ。


雪を纏う富岳

 

鹿児島空港に到着。種子島行きの飛行機便まで4時間あったので、ラーメンを食べたり航空展示室「SORA STAGE」を見たりして時間をつぶす。展示館には有料のフライトシミュレーターが2種類あった。展示もどれもとても見ごたえがあったので、今度また来たいものだ。

展示見学は無料。夢中になって飛行機に乗り遅れないようにしたい。

展示室を堪能した後は種子島行きの飛行機に搭乗。機内から種子島の宿不足の諸悪の根源 基地化工事の進む馬毛島を撮影。

この光景がどう変わるか、密かな楽しみだ。

 

35分の短いフライトを経て翼は種子島空港に到着。Twitter(現X)のフォロワーIさんと合流し、空港カウンターにてレンタカーを受領。レンタカーは4日間(2/14-18)で24,200円だ

空港到着時は夕方だったので、寄り道せず西之表市の民宿へ。民宿のお母様に挨拶してお茶請けをいただいていると、宿のもう一人の宿泊客がやってきた。彼も打ち上げを見に我々と同じく関東甲信越からやってきたのだそう。ただ彼は仕事の関係で明日で帰るという。残念…。

打ち上げを見に遠くからやってきた若い男3人。せっかくなので3人で飲みに行った。


「魚匠 一条」にて1人2500円のおまかせコース。

思えば種子島4回目にして初めて海産物をいただいた。お刺身の味がすごく濃くてびっくり。どの料理も大変美味でした。

 

お会計時に猫の募金箱に小銭を入れる。そのおかげか、帰り際に猫ちゃんがお見送りしてくれました。


猫ちゃん。

 


暇をつぶそう 打ち上げ2日前(2024年2月15日)


 

2月15日は当初の打ち上げ予定日。打ち上げが延期になったので種子島宇宙センターへ行ってみることにした。Iさんをレンタカーに載せ、種子島を北から南へ縦断。

 

宇宙センターへの道中には「H3 成功祈願」ののぼりが掲げられていた。おや、H3用ののぼりがあるんだね!?

 
←H3成功祈願ののぼり(H3TF2) 打ち上げ成功祈願ののぼり(H-IIAF48)→

H-IIAF48とは異なるシンプルながら洗練されたデザインだ。

ちなみにH3TF"1"の打ち上げを見に行ったフォロワーさんによると、TF1ののぼりは今回とはまた違ったデザインだったことがわかる。 どのデザインも成功祈願の想いが伝わってきて素敵です。

 

西之表から車を走らせ50分。宇宙センターに到着!しかし駐車場が満杯だったので、竹崎展望所方面にある別の駐車場へ行く。


修学旅行生の記念撮影

センター内の実物大H-IIロケットの前で記念撮影をしている学生さんがいた。本来であれば打ち上げを見られたのだろうな…

 

気を取り直して1か月前にほとんど見て回れなかった「宇宙科学技術館へ。
受付でSLIMの栞を頂いた。あらかわいい!H-IIAロケットの模型と記念撮影。


小型月着陸実証機SLIMの栞。
SLIMは1月20日に「SHIOLIクレーター」の近くに着陸した。

前回来た時はSLIMは着陸前だった。

宇宙科学技術館でじっくり見たかった展示の1つに、人工衛星インフォボード」がある。この展示はスタッフによって随時更新されており、人工衛星の「旬な話題」を見ることができる。

ちなみに6年前(2018年2月)↓は前年12月に打ち上げられたばかりの衛星「しきさい(GCOM-C)」と「つばめ(SLATS)」の情報が載っていた。


2018年2月のインフォボード

 

あれから6年。人工衛星インフォボードにはぎっしりと衛星の情報が!

2024年2月の人工衛星インフォボード。

おおお!「HTV-X」、「技術試験衛星9号機」に「だいち4号」、「みちびきシリーズ」。これらはH3ロケットで打ち上げ予定の衛星たちだ。

この衛星たちが予定通り宇宙へ行けるかどうかは、H3TF2の打ち上げにかかっている。

 

お昼はせっかくなので宇宙センターの食堂「宙飯屋」へ。平日なので食堂が開いているのだ。


食堂案内とH3TF2のポスター
打ち上げ日がちゃんと「2月17日」になっている

 


海とロケットカレー

青い作業服を着たJAXAMHIの職員に混じって私も注文。ここは一般のお客さんも注文できる。食堂の名物?らしい「ロケットカレー」を食べた。ピリ辛で美味しかった。

 

午後も引き続き宇宙科学技術館を見学。

前回来た時には無かった小型月着陸実証機「SLIM」の展示を発見!!SLIMは3週間前に月面軟着陸したばかり。仕事が早い!


右上には小型プローブのLEV-2(SORA-Q)が撮った写真も!

LEV-2が撮ったSLIMの写真ホント好き。

月球儀の軟着陸の展示にもSLIM。

インフォボードやSLIMの展示からもわかるように、ここは不定期に内容が更新される展示施設。前回来た時とは違った展示が楽しめるなんて素晴らしい。今後はGOSAT-GWの観測結果とか、探査ミッション紹介コーナーにMMX探査機の撮影画像が展示されるのだろう。楽しみだ。

 

それと、メッセージボードにH-IIA48号機打ち上げ成功のメッセージを書いた。

祝福のメッセージ

 

宇宙科学技術館の後はセンター内にある「ロケットの丘」へ。


ロケットの丘からの眺め

 

・・・

 

心が静まり返る。

 

VABと射点を眺めて、やっと「ああ、私は種子島に来たんだな」と実感した。

 

白いVAB、そびえる赤と白の鉄塔・・・

 

私にとっての「種子島」はさとうきび畑やエメラルドグリーンの海ではなく、この景色なのだ。

私は再び、この島でロケットの打ち上げを撮ろうとしている。浮ついていた心がシュッと引き締まった。

 

この日の夜は中種子町のラーメン屋「翔」で横浜家系ラーメンを堪能。メチャ旨でした。

 

翌日(2/16)は打ち上げ前日。機体移動が行われる。さあ、H3を記録しよう。

 

次回、機体移動編。

sado-kouta.hatenablog.com