美瑛編(71):札幌(17.8) : 散歩の変人

美瑛編(71):札幌(17.8)

 朝目覚めてカーテンを開けると、かなり強い雨が降っています。テレビの天気情報を見ると、本日は一日雨模様。飛行機の出発時刻は19:30、本日は、千歳線の北広島駅で降り、バスで長沼に行き周辺を徘徊して北広島に戻り、新千歳空港に行く予定でした。しかしこの雨で心が折れ、長沼徘徊はあきらめました。散歩の変人失格ですが、♪もう若くないさと君に言い訳したね♪ということでご海容を。ん? なぜ長沼を訪れようとしたのかって。そこのあーた、よくぞ訊いてくれました。自衛隊を憲法違反とした「長沼ナイキ訴訟」ゆかりの地だからです。『東京新聞』(19.6.27)から引用します。

 通常国会が二十六日閉幕し、与野党は第二十五回参院選に事実上突入した。政府は臨時閣議を開き、参院選を「七月四日公示、二十一日投票」とする日程を決めた。即日開票する。選挙区と比例代表合わせて三百二十四人が立候補を予定している。
 「あの判決は、法律に従って裁判をやっただけのこと。良心の問題だ」
 一九七三年、札幌地裁の「長沼ナイキ基地訴訟」一審判決で、「自衛隊は憲法九条違反」との判決を裁判長として下した弁護士の福島重雄さん(88)=富山市=は、そう振り返る。
 北海道長沼町での航空自衛隊の地対空ミサイル「ナイキJ」基地建設計画に対し、原告の住民が、自衛隊は違憲などと訴えた訴訟。判決は「自衛隊は九条二項が保持を禁じる『陸海空軍』という『戦力』に該当する」と判示。さらに、有事の際に基地は最初の攻撃目標になるため、憲法前文の「平和のうちに生存する権利」(平和的生存権)が侵害される可能性があるとした。
 二審の札幌高裁、最高裁は住民の訴えを認めず、基地は建設された。福島さんはその後、家裁などを転々とし、「冷や飯」を食わされ続ける形に。それでも、自らの判決について「現行憲法である限り、結論は同じ」と主張は揺るがない。
 憲法に忠実な司法人生を貫いてきた福島さんから見て納得しがたいのが、安倍晋三首相の改憲論だ。
 首相は第二次安倍政権発足後、憲法解釈を変更し、他国を武力で守る集団的自衛権行使を容認。安全保障関連法も成立させ、地球規模で米軍を後方支援できるようにした。自衛隊の活動を違憲の疑いが濃い範囲にまで広げた上で、今、自衛隊違憲論をなくすという理由で自衛隊の存在を書く改憲を主張している。
 福島さんは「違憲状態を先行させ、後になって『憲法に合わない』と言う。最初から憲法を守る気がないのではないか」と疑問視。九条二項を残し、自衛隊を明記する自民党案も「九条本来の条項とつじつまが合わない」と批判する。
 首相は政権発足直後は、改憲発議の要件を衆参両院議員の「三分の二」から「過半数」に緩める九六条改憲を目指していた。中身を問わず、在任中に改憲を実現したい思いが強い。今回の参院選でも、二〇二〇年の新憲法施行を念頭に「早期の憲法改正」を掲げ、国会の憲法審査会での議論に前向きかどうかを判断基準に挙げた。
 参院選の結果、改憲勢力が三分の二以上の議席を維持すれば、議論に前向きな政党が支持されたとして、批判を押し切って改憲原案を国会に提出するなど、来年の新憲法施行に向けてギアを上げる可能性が高い。三分の二をわずかに下回る程度の結果でも、選挙後、改憲に理解を示す野党議員を個別に抱き込み、三分の二の回復を目指すとみられる。
 逆に、改憲勢力が三分の二を大きく下回れば、首相の改憲戦略には確実に歯止めがかかる。有権者は、そのいずれを選ぶのか。七月二十一日に答えが出る。(村上一樹)

 戦時に最初の攻撃目標になるのは軍事基地、よって憲法前文の「平和のうちに生存する権利」(平和的生存権)が侵害される可能性がある。何と素晴らしい判決なのでしょう。しかし私たちの生存権など眼中にない自民党や官僚のみなさんにとっては目障りな判決であるでしょう。見せしめのために、おそらく最高裁の司法官僚に忖度をさせて福島さんに「冷や飯」を食わせたのも宜なるかな。またできうれば歴史から抹消したいということなのでしょうか。信じ難い出来事を『東京新聞』(2019.8.5)が報じました。

憲法裁判記録 8割超を廃棄 自衛隊・長沼ナイキ、 「宴のあと」訴訟 検証不能に
 自衛隊に一審札幌地裁で違憲判決が出た長沼ナイキ訴訟や、沖縄の米軍用地の強制使用を巡る代理署名訴訟をはじめ、合憲違憲などが争われた戦後の重要な民事裁判の記録多数を、全国の裁判所が既に廃棄処分していたことが分かった。代表的な憲法判例集に掲載された百三十七件について共同通信が調査した結果、廃棄は百十八件(86%)、保存は十八件(13%)、不明一件だった。判決文など結論文書はおおむね残されていたが、審理過程の文書が失われ、歴史的な憲法裁判の検証が不可能になった。 
裁判所の規定は重要裁判記録の保存を義務づけ、専門家は違反の疑いを指摘する。著名裁判記録の廃棄は東京地裁で一部判明していたが、全国規模で捨てられていたことが分かったのは初めて。米国などでは重要裁判記録は原則永年保存され閲覧できる。
 元原告ら当事者から「重要な記録で残すべきだった。残念だ」などの声が上がっている。
 裁判所の規定は「史料または参考資料となるべき」裁判記録を事実上永久保存の「特別保存」とするよう義務づけるが、特別保存は今回調査した中では六件のみ。他に一件が国立公文書館に移送、それ以外の経緯で十一件が現存し、計十八件が保存されていた。判明した多数の廃棄が適切か否かについて最高裁は「(廃棄は)各裁判所の個別の判断」とし回答を避けた。
 裁判記録は訴状をはじめ原告や被告が出した書類、法廷やりとりの記録など全てをとじた文書で、裁判所の規定では通常の民事裁判の場合、確定や和解後に一審の裁判所が五年間保存し廃棄する。重要裁判にもそのまま適用し特別保存を判断してこなかった形。判決文は別扱いの五十年保存。
 調査した百三十七件は「憲法判例百選第六版I・II」(有斐閣)掲載の判決から、検察庁が保管する刑事事件を除いた。
 廃棄が分かった中には長沼ナイキや沖縄代理署名のほか、有田八郎元外相が三島由紀夫の小説「宴のあと」でプライバシーを侵害されたと訴えた訴訟、米国人弁護士が提訴し裁判の一般傍聴者のメモ解禁につながった法廷メモ訴訟、法律を違憲とした広島薬局距離制限訴訟や国籍法違憲訴訟、公立中での生徒の思想信条の自由が論じられた麹町中内申書訴訟などがある。
 政教分離が問われた津地鎮祭訴訟や、空港周辺住民が夜間飛行差し止めなどを求めた大阪空港訴訟の記録は特別保存されていた。

 司法の劣化、ここに極まれり、ですね。

by sabasaba13 | 2023-08-20 07:13 | 北海道 | Comments(0)
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