世界中で、富者が貧者から富を巻き上げ、それに反発する貧者を富者が暴力で押さえつける構造。どうやらこのあたりに原因がありそうです。またテロリズムに走るムスリムが多いということについては、『イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北』(内藤正典 集英社新書0770)の論考が参考になります。
イスラムの思想には、アメリカ人を殺害しろとか、ユダヤ人を抹殺しろとか、そんな教えはありません。キリスト教徒やユダヤ教徒を殲滅しろという考えもありません。しかし「テロリスト」や「過激派」を掃討すると称して、爆撃機やドローン(無人攻撃機)による度重なる誤爆で子や母を殺すような残虐なことをした場合には、命を賭けて戦う戦士を生みだしてしまいます。(p.77)
中東・イスラム世界の多くのムスリムが憎んでいるのは、力で自分たちを支配し、命を奪っていったイギリスやフランスなどのかつての欧州列強諸国。シオニズム(19世紀末にヨーロッパで始まったユダヤ人国家建設をめざす運動)に基づいた領域国民国家としてのイスラエル、そしてそれを支援してきたばかりか、対テロ戦争で多くの市民を犠牲にしたアメリカという国家です。憎しみはユダヤ教徒やキリスト教徒に向けられたものではないのです。(p.106)
欧米諸国が過去数世紀にわたって、ムスリムの住む地域を蹂躙し支配してきたことに対する防衛のジハードです。ムスリムの頭の中にあるのは、ある日突然どこからか爆弾を飛ばして家族を吹き飛ばしてしまう野蛮な相手と戦うことです。特に、アメリカがテロとの戦いを理由に戦闘を続ける地域では、当然、地元の人間にとってジハードとはアメリカとその同盟軍と戦うことを意味してしまいます。(p.107)
イスラム国などイスラムではない、ただのテロ組織だと宣言するのならば、アメリカやイギリスやエジプトの政府が市民を殺すときも、あんな国は国家じゃない、ただのテロ組織だ、という主張に説得力が出てくることを覚悟しなければなりません。この点は、全世界のムスリムがほぼ共通にいだいている静かな怒りの源泉なのですから。この問題をクリアできないと、国連はいよいよ紛争解決の力を失っていくことでしょう。(p.240)
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