そして大通りをはさんだ路地に行くと、「周辺マップ おうめまるごと博物館」で紹介されていたとんかつの「もりたや」があります。時代物のしぶい木造建築と吊るされた提灯、坂から見下ろす町並みと彼方の山影、ピクチャレスクな情景に出会えました。

それでは赤塚不二夫シネマチックロードを西へと歩いてみましょう。金物屋や麹屋など地元に密着した商店が健気に元気に商いをされているのを見ると嬉しくなってきます。

建物に統一感はないのですが、時々おっと立ち止まってしまうような意匠がありますので、見落とさないようにしましょう。たとえば屋根型庇のついた戸と窓が三連発の大正庵、扇のような装飾がある理容山口。

重厚な蔵や、凝ったつくりの窓の桟も散見できます。古いポストも現役で活躍中。ん? 自転車屋に「自転車泥棒」の看板がある…

てことは家業と関連する映画看板を掲げているところもあるのかな、と思って気をつけていると、「メガネのシミズ」の看板にはハロルド・ロイドが描かれ、油屋の店先には「モダン・タイムズ」の映画看板が掲げられていました。映画に登場する歯車から油を連想させたのでしょう、こうした遊び心もいいですね。

ホーロー看板も見かけるのではと期待したのですが、残念ながらこの一枚しか見つけられませんでした。しばらく歩いた後、この通りと並行する七兵衛通りという裏道に出て駅へと戻ることにしました。途中にドイツのボッパルトと青梅市が姉妹都市であることを示す表示がありましたが、どんな由来があるのでしょう、気になりますね。

今、調べてみたところ、
青梅市のホームページに次のような説明がありました。
青梅市では、「青年に夢を持たせるために」と、日本と国民性の似ているドイツの都市との姉妹都市提携を望んでいました。本市に在住する蛇の目ミシン社長、島田卓弥氏を介して、当時の西ドイツ、ボン市に在住する同社の顧問弁護士、遠藤氏に本市と状況の似た都市の選定をお願いしました。遠藤氏は、観光や保養地、ワインの産地として有名なボッパルト市を紹介してくれました。
うーん、わかったようなわからないような…
さらに駅に向かっての散策は続きます。それほど高くはないのに「きけん のぼるな!」と描かれているコンクリート塀を「安全への過剰な希求」とひやかし、まるで料亭のような造りの質屋「佐藤」に驚き、赤塚漫画に登場するイヤミそっくりの建物をフェイス・ハンティングし、「電話二三一番」と誇らしげに刻まれた小さなホーロー板に微笑み(電話が貴重な存在だった時代の名残だなあ)、複雑な組み合わせの屋根に眼を瞠り、正面にメダリオンのある瀟洒な洋館に感嘆していると、あっという間に青梅駅に到着です。

駅構内にはホーロー看板を展示するガラス・ケースがありましたが、なるほどここで一括して保存されていたのか。でも、やはり野に置け、街角にあってこそホーロー看板も生き生きと息吹くというもの、レプリカでもいいからもとの場所に貼っておいてほしいものです。おっ、「シホはりすく」というホーロー看板がありました。作家星新一氏のご尊父星一氏が創業された星製薬の特約店のものですね。たまたま、官僚によって凄まじい嫌がらせ・営業妨害・いじめを受けながらも、それに敢然と立ち向かう父の姿を描いた傑作ノンフィクション「
人民は弱し 官吏は強し」(星新一 新潮文庫)を読んでいる最中なので、感興も一入でした。国家権力をバックにして民間業者を徹底的にいびる官僚たちのえげつなさを描きつくした面白い作品です、お薦め。
というわけで晩秋の美しい一日を過ごすには恰好のコースだと思います。今度は紅葉の盛りの時期に訪れてみたいな。
本日の二枚です。