そして長松寺で荻生徂徠の墓参。岩波日本史辞典から引用します。
荻生徂徠(1666‐1728) 江戸中期の儒者。父は徳川綱吉の侍医。青年期まで上総長柄郡本納村で独学。その後江戸に出て柳沢吉保に出仕。1709(宝永6)、綱吉の死と吉保の失脚で柳沢藩邸を出、学問に専念。朱子学や仁斎学を批判して、独自な古文辞学を大成。その学問の特色は、客観的な秩序を重視する政治論にあり、道とは古代聖人がうちたてた礼楽刑政にあるとする。弟子に太宰春台、服部南郭らがおり、一世を風靡して、多方面に大きな影響を与えた。そして何といっても、赤穂浪士の処分に関する彼の関与が有名ですね。賛美助命論に対し、彼が展開したのが「義と法の峻別」という論理です。義は自分を正しく律するための道であり、法は天下を正しく治めるための基準である。この復讐をつらつら考えるに、義には適うが、あくまでも私の論理にすぎない。幕府の許可も得ずに騒動を起こしたのは、法として許せぬものである。よって処罰はする、しかし武士の礼による切腹とすれば彼らの本懐であろう、と裁定しこれが幕府方針として採択されることになりました。主従関係は幕府の根幹だし、かといってそれを無条件に肯定すれば秩序を維持できなくなる。そのゆらぎの間のぎりぎりの判断だったのでしょうね。しかしこの後、時代の趨勢は社会秩序の維持という方向に大きく舵を切っていったようです。書名は失念しましたが、敵討ちは大幅に制限されるようになっていったようです。 ![]() そして桜田通りを渡ると、松秀寺というお寺さんにどこかで見たことのある風貌の銅像が建っていました。えーと…一遍だ。時宗の寺はちょっと珍しいですね。 ![]() しばらく歩き左折すると、三光(さんこう)坂。名の由来は、下専心寺にあった三葉の松にもとづき三鈷(さんこ:仏具の一種)と呼ばれた、あるいは日月星の三光による、と解説には書いてありましたが、これは説明不足ですね。よくわかりません。この坂を重いコンダラを曳いて百往復すると、高学歴・高収入・高血圧の配偶者をゲットできるという都市伝説をつくってみませんか。 ![]() 坂をしばらくのぼり、右に曲がると、おお聖心女子学院の正門が見えてきました。じゅるじゅる(何の音だ?) ゆるやかにくだる坂道のつきあたりに、ひっそりとしかし存在感をもって清楚に佇む可憐な門です。白いアーチを囲むようにちょこんと乗っかった和風の屋根も洒落ていますね。木の扉もなかなかモダンな意匠です。そして部外者を遮断する威圧的な雰囲気がなく、軽やかに内と外を区切っている様子も素晴らしい。「建築探偵 神出鬼没」(藤森照信 朝日新聞社)の中で、「日本の西洋館の門で一番の名作」と褒め称えた藤森氏が「人を締め出すのではなく、人を受け入れる門」と評しているのは言いえて妙です。もっとも私のような怪しげな男が入っていけば、即警察に通報されるでしょうけれど。門の向こうには、鬱蒼とした木立の中を路が走り、やがて左に曲がり緑の中に消えていきます。大学というよりは、公園あるいは貴族の大邸宅のようです。竣工は1909(明治42)年、設計は原爆ドームの作者であるヤン・レツルというのもちょっと驚き。彼も木になる建築家の一人です。なお同書が、アーチの要石の装飾について説明してくれています。リンゴは心臓、その上のボッチは炎、針金はいばら。心臓に炎がついて「燃える心」、いばらは「殉教」、死を恐れず燃えるような心で布教するを象徴しているとのこと。なお、両側にあるしっぽに毛のはえた亀については、碩学の氏もわからないと匙を投げていました。キリスト教とどういう関係があるでしょう??? ![]() さてあまりうろうろしているとほんとに警察に通報されてしまうかもしれないので、名残りは尽きねど立去りましょう。さすがにお腹がへってきたので、松秀寺の前にある「La Cantine du Midi」(ルビくらいふっといてくれ)というお店でランチをいただくことにしました。豚肩ロースのロティ・プロバンス風、じゃが芋のピュレ、自家製ラザニア、珈琲で1200円ですかた納得のお値段。なかなか美味しかったし満足です。さてどうやら、谷中霊園と小笠原伯爵邸をまわるのは無理なようです。潔くあきらめて、あと訪れるのは鈴ヶ森、そして池袋の江戸川乱歩邸のみとしましょう。 ![]() 本日の二枚です。 ![]() ![]()
by sabasaba13
| 2009-11-10 06:13
| 東京
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Comments(2)
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簑亀・霊亀と言うそうですが、カソリックとの関係は不明でした、関係を知りたいものです。
0
こんばんは、mesato52さん。秘すれば花、ということで、謎のままにしておきましょう。こういう「やらなくてもいい宿題」って結構大事だと思います。
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自己紹介
東京在住。旅行と本と音楽とテニスと古い学校と灯台と近代化遺産と棚田と鯖と猫と火の見櫓と巨木を愛す。俳号は邪想庵。
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