![’23 第75回正倉院展_a0381569_20562553.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202311/10/69/a0381569_20562553.jpg)
夏の多肉~、などと言っていたのが3ヶ月も前のこと、ようやくここへ戻って来られました。
長くご無沙汰を致しました、また、どうか仲良くしてやってくださいませ。
さて、11月と言うと奈良は正倉院展、ここに行かずばおれません。
11月13日までの会期中になんとか書き留めておきたいと思いたちました。
ただ会期中とは言っても、コロナ禍以後チケットが日にちと時間の予約販売に替わって、今現在
チケットが入手できるのかが分りません。
予約販売からこちら価格が倍に上がったのですが、約束の時間に入場できますし、人数を制限して
いるのでゆったりと拝見できて、我々は歓迎しています。
もっとも今後、元に戻るのでしたら、その分ランチに回せるのでそれもいいかな~。^^
![’23 第75回正倉院展_a0381569_21202813.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202311/10/69/a0381569_21202813.jpg)
さて、こちらは今期必見の一二を争う展示御物。
正倉院には、この絵(騎象奏楽図)のような、いかにもシルクロードを渡ってきたと思わせる
絵柄の御物が沢山所蔵されているのですが、こちらは ある物 の上に描かれた、いわば挿し絵の
ような意匠です。
そのある物とはこちら。
以下は、図録をお借りして覚書していきます。
楓蘇芳染螺鈿槽琵琶 かえで すおうぞめ らでんのそうのびわ(螺鈿飾りの四弦琵琶)中央の丁度撥が当たる部分(捍撥 かんばち)に描かれているのですが、この部分に動物の皮革を
貼った上に捍撥絵を施すのがお約束のようです。
背面と表面背面が又美しい!
覆手その背面と覆手 ふくしゅ と言われる弦を結ぶ部分に蘇芳に染めた楓材が使われています。
そして沢山の種類の貝を丹念に剥いではめ込む、螺鈿の妙味にはため息が出ます。
首が直角に曲がるこの形は、ペルシア→唐→日本と渡って来た、全五面ある四弦琵琶の内の一面です。
(但し、顔料に日本で多用される成分が見つかって、日本製の可能性が出てきたのだとか。)
今期の楽器は他には。
竹製の尺八 尺八は竹が当たり前でしょ?と思っていたら、正倉院には石製、象牙製など唐の形式を
伝えているそうです。
竹製の横笛 こちらも石製、象牙製が伝わっていて、縦笛とセットで演奏されたとか。
因みにこちらのこうした楽器類には“東大寺”の銘がある物が多く、大仏開眼会始め仏事などの楽舞に
用いられたと見られます。
班犀把漆鞘黄金葛形珠玉荘刀子 はんさいのつか うるしのさや おうごん かずらがたしゅぎょくかざりのとうす
(腰帯から下げた小刀)
これ、小刀とあるように差し渡し30cmと、ちっとも大きくないです。
腰からストラップでぶら下げる当時の貴族の若様のファッションでした。
もちろんれっきとした刀なので、ちょっとした武器にはなるかと思いますが、まぁ文房具と言うか。
他にストラップから下げるのが。
雑色の
瑠璃 (色ガラスの飾り玉)径2,1cm正倉院にはおよそ6万5千もの瑠璃玉が伝わっているそうで、加工をして腰から下げたり、女性の
ネックレスなど装身具はもとより、仏事の荘厳具(仏さまを敬う為の飾り)に多くが使われたとか。
西洋のステンドグラス共々、ガラス玉が日を透かしてキラキラと揺れて輝く様子を観た衆生が、
さぞうっとりと神や仏を感じて信心した事でしょうね。
刺繍帯 長さ146cm
ファブリック系も沢山収蔵されていますが、もちろんどれも手仕事、一針一針にこしらえた古の人の
息吹を感じて、同じく手縫いをする端くれとして、まみえる度に心からの敬いを感じています。
因みにこうした帯を腰に巻き、上記の飾りをぶら下げたと推定されていて、往時の男性のお洒落心に
感嘆します。
工芸品を。
![’23 第75回正倉院展_a0381569_13592579.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202311/11/69/a0381569_13592579.jpg)
美しいシンメトリーのこちらは、平脱と言われる技法で表面を飾った漆塗りが奥行きある鏡の箱。
銀平脱鏡箱 ぎんへいだつの
かがみばこ 径29,2cm
平脱、金属の薄板を文様の形に切って器体に貼り、器体全体に漆を塗り込めた後、金属の上面だけ
漆を剥ぎ取って文様を表す、と恐ろしく根気の要る技術です。
表の寸分狂いの無い丸い文様も見事なら、受け箱の丸く八つに括った造りや、びっしりと隙間無く
模様で覆い尽くした緻密さに感動します。
![’23 第75回正倉院展_a0381569_14262434.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202311/11/69/a0381569_14262434.jpg)
これは同時出陳の八角鏡の箱ですが、この素朴さと比べると、手の入りようの尋常無さが分ります。
因みに、肝心の中身の鏡と言うのが、正倉院には見当たらないけれど、箱の出来栄えに相応しい
さぞや華やかな鏡だったのでは、と図録は結んでいます。
最後に、工芸品をもう一つ。
碧地金銀絵箱 へきじ きんぎんえの
はこ(花鳥文様の脚付き箱)27,9×17,5×10,6cm
![’23 第75回正倉院展_a0381569_15353246.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202311/11/69/a0381569_15353246.jpg)
内張りの錦まですべてが手抜かりの無い、極上の造りと色合い。
ここへ仏様への献上物を納め捧げた、いにしえ人の心もまた尊いと思います。
![’23 第75回正倉院展_a0381569_15411323.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202311/11/69/a0381569_15411323.jpg)
花鳥の図柄がほぼシンメトリー、でも微妙に違う所やイラストみたいな風合いもいいなぁ、と。
全59品の出陳、今年もありがとうございました。
続いてお楽しみのお昼ですが、今年は地下階でお弁当を頂きました。
![’23 第75回正倉院展_a0381569_15451370.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202311/11/69/a0381569_15451370.jpg)
正倉院展の時期にだけ販売される中華の薬膳弁当です。
![’23 第75回正倉院展_a0381569_15494926.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202311/11/69/a0381569_15494926.jpg)
開ければ、初めは何て事無いなと思ったんですけど、これが一つ一つがどれも美味しくてびっくり。
かくて身体に心に沁みるひと時となりました。
奈良行の一日は、もう一箇所どこかお寺さんを訪れるのが常で、この日東大寺を予定していたのです、
が。
![’23 第75回正倉院展_a0381569_15553328.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202311/11/69/a0381569_15553328.jpg)
「
仏さんに着せてみませんか?」のお誘いに乗ってみちゃった。
![’23 第75回正倉院展_a0381569_15574751.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202311/11/69/a0381569_15574751.jpg)
3枚の衣を順番に着付けていきます。
3枚は分り易いように、ご覧のようなビビットカラーです。
1.裙 くん
2.覆肩衣
3.袈裟
1,2,3の順に長方形の布をくるくると巻いて出来上がり。
詳しく言うと、この形は釈迦如来の着衣で、菩薩像はまた異なるそうですので、おかげ様で、
着衣のあれこれを比べるわけでもないのですが、博物館につらなる仏像館に足が向き予定の
東大寺は又の機会と言う事になりました。
もう1回次に続けます。