GoogleのNestシリーズ(Google Home)、AmazonのEcho(Alexa)、AppleのHomepod(Siri)を初めとして、GAFAのうちFacebookを除く各社はスマートスピーカーを出しています。
Google Home MiniやEcho Dotなどは安売りをしたり、そもそも手ごろな価格なことも有り、お持ちの方も少なくないはず。
そして、現状スマートスピーカーが、世界を変えるようなインパクトを出せているかというと正直なところそれはNOではないでしょうか。
子どもは便利に使っているケースが多いですが、大人にとっても意味がなければ、ただの文字入力ができない人のための入力補助デバイスにしかなりません。
買って出してみたけれどもホコリを被っているケースも多いのでは。
スマート系デバイスが、このまましぼんでいくのか、それとも未来があって伸びていくのか。Webに関わらずマーケティングやセールスに関係する人間としては非常に気になります。そして重要です。
スマートスピーカーが2.0になる鍵は「能動性」
現状のスマートスピーカーは、スマートとは言いがたい。
こちらからアクションを起こさないと動かない。意思疎通もスムーズではありません。その受け身姿勢とコミュニケーション力の低さは、スマートスピーカーから人々を遠ざけている大きな要因でしょう。
これが大きく変わるのは、受動的な返答マシーンであったスマート系デバイスが、能動的にアクションを起こしてくるようになった時です。
私たちは能動的スマートスピーカーの時代を見据えて、今から仕込みをしなければならないのです。
しかしこれが、スマートスピーカーの方から能動的にアクションを起こしてもらえるようになったらどうでしょうか。例えば
- いつも使っている通勤経路のお店のセール情報を教えてくれる
- ガソリンスタンドのガソリンの価格が一定以下になったら教えてくれる
- 1日の予定を元にして、お昼を食べる場所や内容を提案してくれる
- 入ったSCの予約可能なレストランを自動的にリストアップし比較一覧にしてくれる
など…。
もちろん、予定やリマインダーは通知してくれます。Amazonの欲しいものリストの中にある商品で周辺店舗でよりやすいところがあれば教えてくれるなどもできるでしょう。
このように「こちらから聞かなくても」「自分が忘れていても」あらかじめ準備して教えてくれるとしたら、今とは相当違うイメージですよね。
これが、スマート系デバイスの出発点だと私は考えています。現段階は、商品自体を世の中に出すことに寄る認知のゆっくりとした情勢と、利用してもらうことに寄るデータの確保期間と見るべきでしょう。
少数のクローズドモニターでデータを取るだけでは不十分なため、売り出して使ってもらうことに寄るオープンなデータ収集という方向性にしたのではと推測します。
デバイスは据え置きではなく、ウェアラブルになるはず
デバイスがやりとりするのは、パーソナル・プライバシーに関わる内容なので、スピーカーでは無理でしょう。
そもそも持ち歩けることがスマホによる大変化のポイントだったわけななので、これから持ち運べない物が何かを変えることはありません。
スマホの中に有ってもいいのですが、恐らく今と同じように単独デバイス路線でしょう。なぜならハードとソフトを一緒に作った方が、良い体験を与えやすいからです。
品質とフィードバックの高速可を大事にして市場に入る場合は、委託やOEMではなく、直販体制が向いていることと同じです。
すると「イヤホン」「メガネ」あたりが主流になるのではと。なのでスマートスピーカーではなく「スマート・デバイス」あたりが適切な言葉になるように思います。
今のようなスピーカーはその空間の中のパブリック情報を扱う物として存在するようになるでしょう。複数人でAlexaと相談しながら旅行の行き先を決めるとか…。将来の人間型AIですね。
スマート・デバイスが能動的になることによる、買い手側の活動の変化
そしてここから。
能動的にスマート・デバイスが動くようになることで、私たちの消費行動、具体的には情報収集は大きく変わります。なぜなら、バックグラウンドでデバイスが勝手に大量の情報処理を行うからです。
今までは、情報収集や比較検討が「面倒」「手間」だったので、ある程度の所で買い手は検討をストップしていました。
3日かけないと全部回れないショッピングセンターで、1着冬のコートを買いたい…。
じゃあ3日かけて全部回るかというと回らないですよね。1時間か数時間かは人に寄りますが、
- ある程度の所で「これくらいかな」と見切りをつけて
- 「今まで見た中では、これが良かったな」と考えて
- 「これ以上の物はあるかもしれないけれど、かける時間に見合うほど凄い物は多分ないと思うな…」
- じゃあ「これでいいか」「お店の人もオススメしてたし」
というように、自分を納得させられる材料が調った時点で比較検討をやめて決定に走ります。
この傾向があるからこそ、売り手側は、判断基準を提供し、その上での自分たちのオススメポイントを知らせ、希少価値を演出し、お得感を出し…といった様々なやり方を駆使することで、売上を作っていけたわけです。
しかし、スマートデバイスが進化すれば、簡単に比較検討できてしまうわけです。関連情報も含めて。
そうしたら、売り手側は今までと同じやり方では、売れない…ですよね。
また、スマート・デバイスは本人も意識していない趣向や行動様式を、日々の生活の中でくみ取っていきます。それを加味して、外部の情報を比較検討していきます。
そうすると
「なんらかの欲求を登録しておくだけで、スマート・デバイスが、自分が思ってなかった、気づいていなかったような内容を元に、既存の情報を比較検討して提案してくれる」
となります。
情報を整理整頓するだけではなく、パーソナライズされたものが能動的に提案されます(パーソナライズされないと、ただのキュレーションサイトの枠を越えません、あぁいうものはもう飽き飽きですね)
- 今までは、他の条件にはピッタリだったのに、価格の条件で外れていたものが、型落ち化で値段が下がってきた。それをスマートデバイスが感知して、購入先含めて速報で教えてくれる
- あなたが入力した要望・希望の解決法をAIが様々な観点から可能性を探り、全く別の代替品を提案してくれる
こういうことを、バックグラウンドで勝手にやってくれたら…こうなると気持ち的にも機能的にも、スマートな相棒と自然と感じられるツールになるのではないでしょうか。
そして、大きく買い手側の行動が変わる。情報の偏りが大きく買い手側に傾く。その世界に入っていくのではと、私は考えております。
では、そこに向かって何を準備すればいいのか
ではこう言う時代になった時にWebマーケティングとして何をすべきでしょうか。
まず第一には、スマートデバイスに「正確に」「買い手が検討で必要とする情報を」「様々な観点で」伝える、言いかえると各プラットフォームのデータベースに入れることです。
今の構造化データの延長線上でしょう。どのような形になるかは分かりませんが、技術的に難しくないレベル感でないと情報が民主化しないので、テキストベースでは?と思います。
対して、サービスや商品そのものに関わらない、トータルデザインなどは優先度が低くなる可能性があります。なぜなら、情報そのものが一人歩きするため、ビジュアル的な部分はそぎ落とされる可能性が高いからです。
いわゆる「ハコ物作り」は斜陽産業になっていくかもしれません。
この時に一つる気になる存在が広告です。今でもスマートデバイス向けの広告はあります。Radikoや各種ニュースサイトで挿入される音声広告ですね。こういったものは露出や認知の段階を中心に。おそらく今後も入っていくでしょう。
ややこしいのは、ややこしいというのはGoogleのような広告と自然検索を両方扱っている企業にとってですが…。
広告はどうなる?
広告って、お金を払ってショートカットする手段な訳ですが、スマートデバイスは中立性・大量のデータを処理する網羅性が強みで有り信頼の根源になるはずです。
そうすると広告を出すことの意義って?となるわけですね。だからといって優先的に紹介したり、色をつけて比較したら信頼に関わります。可能そうなのは、オファー枠としてのお勧めと、オファー以外も含めたお勧めの2つを一緒に出すことなど…?
ここは正直アイディアがまだでず、Googleを中心として動きに注目している部分です。広告がなくなることは考えづらいので、何か落としどころを作ると思うのですよね…。
まとめると、
オーガニックな露出に関しては、情報をプラットホームが理解できるような形でマークアップして伝えること。
そしてそれに対しておそらくフィードバックが来るはずです。
今では Google Search ConsoleやGoogle Analytics がありますが、これのスマートデバイスバージョンが出るでしょう。それを元にして、出す情報のブラッシュアップが必要になってくるでしょう。
広告に関しては、ユーザーがスマートデバイスを信頼できるかを担保しつつ、各社がどのように出していくのか、広告をうまく使っていきたいという方はきちんとチェックする事をオススメします。
全国商売のハードルは相当上がりますね。本当に優れた商品が人々に届く社会になっていくことを願っています。
私は「お客さんに本当に必要とされる商品がそのお客さんに届く世界を作りたい」です。スマートデバイスが発達した世界は、それを加速させる世界のように感じているので期待しています。
おわりに
現在販売されている各社のスマートスピーカーが、正直あまりスマートではないですし、売れ行きもそこまで良くないでしょう。しかし各社開発をとめません。
一般化のための認知拡大とデータ獲得の段階でしょう。
ちなみにこの世界、機動力がありお客さんとの表面積の広い、中小企業・小規模事業者にとっては良い世界だと思います。ネックはテクニカルな部分ですが、そこは得意な企業とパートナー組むのが良いでしょう。
まだまだなんとも言えない部分も多いのですが、Googleが検索結果に自社アルゴリズムで整理した情報をナレッジグラフやリッチリザルトに力を入れているのは、その走りだと思うのです。引き続き注視していきたい所存です。