今回は、コンビニの話題からWeb活用のヒントについて探っていきたいと思います。Web業界だけを見ていてもなかなか次の一手は定まらない物だからです。
紹介するのニュースの概要は、「売れのアクセルの踏み方が見えてきた」というタイトルで、ファミリーマートのプライベートブランドが好調だという記事です。
リブランドしたファミマのプライベートブランド「ファミマル」が向上し、2022年10月3日には1周年を報告する記者会見が開かれたり、感謝セールやパウチ商品のプレミアムラインの刷新も行われるなど、勢いを増しているようです。
では、リブランド成功の秘策は何だったのか、それについてファミリーマートCMOの足立氏やファミマルブランドマネージャーの辻氏によって説明され、おいしいことをちゃんと伝え続けたことが1年間の成功の理由だったと語られています。
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全体としてのポイント
全体のポイントです。大きく2つかなと思っています。
- データ・お客さんに判断を委ねてPDCAを高速回転させて開発していく
- 来店動機を積極的にこちらから作っていかないと、情報あふれの時代にはアテンションを集められない
私の勝手な印象としては、ファミリーマートは特にパウチ商品がおいしいイメージを持っていました。レジ横のホットスナックはファミチキのネームバリューで力を入れている印象はありましたが、気づいたらローソンの方がその辺は強い印象があります。
ファミマPBは「お母さん食堂」の方が記憶に残っているのでは。今回の話題であるファミマルに変わった要因としては、ジェンダー的な文脈や様々な理由があったこと、後は推測としてはお母さんが作るような料理に限定されてしまう点で動きづらくなっていたのかなと。
リブランドした「ファミマル」はフラットな名前なのでその辺のしがらみはない、それだけでもプラスかなと思うところです。
では、このニュースを読みながら、業界全体に通じるところを理解しつつ、最後にプラスアルファのことを話すことができればと思います。
PB商品の写真はレシピサイトなどを参考にした
プライベートブランド商品の写真は、1つのテイストで統一されることもあり重要度は非常に高いですし、話題にもなりやすいですね。
悪い方向で話題になったのは、ローソンでしょうか。
以前にローソンでプライベートブランド商品のパッケージをかなりシンボリックというかシンプルなデザインに変えたことに賛否両論がありました。ネット上では攻撃的な否定意見が多かったですが、リアルな肌感覚としては五分五分くらいかなという印象です。
ローソンの件は最終的に、商品の写真を、よりきちんと見せるように変更しました。それにより話題が収束してしまったのであまりデータが無いのですが、売上も改善した模様です。
それくらい重要なのが「写真」ですが、ファミリーマートのPB商品の写真選定基準は、レシピサイトなどだそうです。
現在「世間的に美味しそう、好かれる」と思われている見せ方を選んでいるということです。これは面白いと思います。
お客さんが現実的に好んでいる物を、信じる
通常商品パッケージについては、専門家であるパッケージデザイナーが作り、それを発信しながら整えていたと思いますが、ファミマるでは「レシピサイトやインスタグラム」を見ながら、商品の見せ方を考え、この年代に刺さるように変えているということです。
また、1年間で1000以上の新商品を投入しているそうですが、適宜見せ方もリニューアルしていると言われています。それは消費者の中の「王道」が移り変わる速度が高速化しているため見直しの速度が速くないと追いつかないからでしょう。
言いかえると「お客さんが望む物を、お客さんに委ねる」
このパッケージに限らず、お客さんが望むものを、お客さん自身に委ねることは今の時代充分トライするにあたりする方向性です。
自分たちのお客さんがどんな人たちだろうとか、どんな言葉が響くのか、といった想像やペルソナ作りで終わるのではなく、それが現実に表出させている行動・行動データまで取り込み前提とする。これからは「お客さんの意見」ではなく「お客さんの表現」が大事な発想元になるのではないかと。
Webに戻して考えると、リアル以上にWebの方がお客さんの動きや心理が読めません。なので、特にペルソナ造りでやりがちですが「脳内お客さま」を詳細に作ってしまうことは避けなければなりません。
ユーザーインタビューと現実の乖離が進む
また、ユーザーインタビューや座談会なども「そもそも具体的な言葉に落としづらい」ことから、現実との乖離は進んでいくでしょう。
なぜなら、比較ポイントがどんどん細かくなっているからです。昔のようにわかりやすい違いはもう無いからです。そうすると、その細かい機微を表現するのは非常に難しく、表現スキルが必要になります。
なので、今の時代「エモい」「キモい」のような、様々な意味をまとめてほわっとさせた言葉が増えているわけです。
そう考えると、お客さんが実際に形にしているものや好みを示している物を対象に考えた方が精度が高いのではないでしょうか。
言葉の使い方は定量的なものから定性的な物に
名称も重要です。以前は、説明が単純で、例えばカレーの場合は、どのような素材が入っているか、簡単に作れるかどうかなどが説明されていました。
例えばカレーであれば「3種類の挽肉」とか「簡単にかけるだけ」とかそういう定量的なものが多かった。しかし、今はもっと訴えかけるように説明しています。
コンビニは、瞬間的に欲しいと思わせ、レジまで持ってきてもらわなければならないわけで、パルス的に欲しいと思わせないといけない。さらに、それを脳内で味を再生させると言いますか。そういうキャッチコピーをつけられるかどうかということが、非常に大きいと思われます。
もしみなさんが、そのような商品を扱っている場合は、今の情報が溢れている社会では、お店に来てもらったり、偶然にもホームページに来てもらったりする瞬間を逃さないために、見た瞬間に興味を持ってもらって、頭の中に夢を見てもらうような、キャッチコピーやその後のページの展開を意識していただくことが重要でしょう。
食べる商品なら食べている夢、使う商品なら使っている状態の夢を見てもらえるような、そのようなものが今の時代にマッチすると思います。白昼夢ですね。
来店きっかけは積極的に作る物
ファミリーマートしては、
「ファミマルが気になるから、ファミリマートへ行く」
ような位置づけにしていきたいとの発言をしています。イベントをこちらから作り出す方向です。これをきちんとやるにはPB商品でないと難しいんですよね。
以前、ファミリーマートは「超大盛りキャンペーン」イベントをやりました。こんなのナショナルブランドにお願いできるわけがありません。
今はコンビニの代替となる競合もたくさんあり、急いでなければ通販もあり、難しい状況になっている。
そのため、店舗側からイベントを開催し、なんとかファミマに行く理由を作り出すことで、顧客の来店動機を作る。もちろんそれは今までもCM打ったりキャンペーンやったりしてきたわけですが、それをもっともっとやっていかないと生きていけないというコンビニ業界の状況を想像します。
売り物はそう簡単に変えてはいけないという前提は邪魔になるかもしれない
コンビニエンスストアで圧倒的な売上を占めるのはセブンイレブンです。コロナ禍中の売り上げはどうなっているかと見たときに、データを調べましたが、やっぱり圧倒的にセブンが高かったですね。
セブンイレブンがどのように投資を行っているか?セブンイレブンは、営業投資に対して、設備投資の割合がかなり高いようです。例えば、レジに多機能なタッチパネル式を採用したりコピー機をXeroxと組んで超高性能にしたのもセブンからです(昔は本当に普通紙コピーしかできなかった…)
これは前提としてデータを重く見て活用基盤を整理してきたからです。
データを収集することは非常に重要であり、それを店舗に早く反映させることが必要です。現場のデータから早くPDCAやウーダーループを回転させることが重要。自社PB商品が早いわけです。
終わりに・中小・小規模事業者の方々はどうすれば
コンビニ業界の件は、規模の大きいデータの話になり、中小・小規模事業者の方々が同じようなデータを持てるわけではなく、さらに言えば持っていたところでそれをベースに改善を回すのは難しいでしょう。企業活動の中で得られるデータが少ないからです。
そこで、そこまで肩肘張らず顧客の声を多く取り入れられるようなシンプルな所から始めることをおすすめします。
シンプルに、お客さんと思われる人が普段どういう物を好んで見ているのか、何を判断基準として重要視しているのか、何はどうでも良いと思っているのか。
それをインタビューなどではなく、何かそれが意図を伴わず表現されている場所を見つけて、そこから仮説を立ててはいかがでしょうか。
この記事が何かのきっかけになれば幸いです。
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中小企業・小規模事業者の方々に向けて、ウェブの活用やホームページの戦略などについてWebコンサルティング、施策代行実施などを行っている、株式会社ラウンドナップ代表取締役の中山陽平です。中小企業のWeb活用をサポートし、そこからの反響獲得を実現させています。→プロフィール詳細はこちらから