ロココの辛口映画レビューカフェ 菅田将暉
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二重生活 (2016)  550本目

頭の悪い私には哲学はわからない 二重生活

出演:
白石珠役 門脇麦
石坂史郎役 長谷川博己
鈴木卓也役 菅田将暉
篠原教授役 リリー・フランキー

監督:
岸善幸
お勧め度★★★☆☆

大学院で哲学を学ぶ白石珠。
教授から「理由なき尾行」を修士論文のテーマにするように勧められる。
ターゲットにえらんだのは珠のアパートの向かいに住む石坂。
尾行をすると石坂の「秘密」を見てしまい・・・。

この映画、タイトルだけでめちゃくちゃ面白そう!って思う。
そしてこのキャスト。
期待しましたよ!
そして結果としては・・・

この映画、いったいなんだったの?

頭の悪い私にはわかりませんでしたよ。

まず、修士論文のテーマを教授から個別に勧められるってなんだか違和感あったなぁ。
そして、なぜかこのなんの取柄もない感じの主人公の事をすごく褒めていて、その理由もよくわからないし。
彼女のトラウマになっているらしき昔の恋バナも、特別な感じは全然なくて、よくある話だし。
同棲している彼氏との関係もすごく薄っぺら。

この映画は小池真理子の同名小説の映画化です。

映画を見た後、とても気になって原作を読んでみました。
そしたら、わかった、この映画が作られた理由。

小説はかなり面白かった!

映画を見た後なので、すべてキャラクターが映画のキャストで脳内再生されていたので、余計に面白く感じたのかもしれませんが。
やっぱりこの小説のテーマが面白くて映画にしたんだろうなぁ・・・!
でも、ずいぶんと設定が変わっています。

私が感じた違和感は、小説では設定が違っていて、まず、この「理由なき尾行」は教授から勧められるというのは映画だけの設定。
そして、映画ではほんの脇役のような存在の彼氏ですが、小説ではかなり深く主人公に絡んできます。
ついでに主人公のトラウマ恋愛も小説ではかなり詳しく語られていて、ズキンとくるエピソードだったし、石坂がそれほど嫌な人間には描かれていません。

なんでこの小説の良い設定を変えちゃったのかね?

まあ、それ故に小説ではあまりエグイことは起こらないので、映画でその辺が矯正されてしまった感がありますが。

それでも★3つまで盛り上がった理由はなんといっても石坂を尾行して彼の生活を垣間見る感じがメチャメチャ面白かったから。

だけど、尾行が申し訳ないくらい下手くそ!

ついでに言い訳や説明も下手くそすぎてゲンナリしちゃう。
もっと上手にやってよ~!

まあ、そのダメダメのキャラクターが主人公のキャラであり、それがこの映画の重要な要素なんだろうけれど、なんだかイライラした。

ついでに、石坂だけでなく、教授にも秘密があり。
ただ、この秘密は正直初っ端からピンときてしまったので、驚きも感動もなく。
なんといっても、この教授と主人公の関係性が映画であまり描かれていないので、よくわからなかった。
小説ではあまり出番のない教授ですが、かなり素敵な存在に描かれていて、映画とは全く違うアプローチでした。

そして最大にモヤっとしたのが結末。

おもわせぶり~!

私にはとても理解に苦しみました。
小説とは全然違います。

ただ、途中までドキドキハラハラ面白かったので★3つです。

今回主役の珠を演じる門脇麦。
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本当にどこにでもいる感じの女子が上手。
眼鏡が似合いすぎ。
小説のイメージと確かにピッタリ。

珠に尾行される石坂約に長谷川博己。
なんだかズルい感じがとってもハマっているけれど、小説の石坂の方が、イメージに合っている気がする。
そんなに悪い奴じゃないんですよ。

そして篠原教授役にリリー・フランキー。
小説ではとっても重要な役回りなのですが、どちらかというと紳士的なイケメンというキャラクターなので、ちょっと違うかなぁ・・・。

そしてこの映画のモチーフになっている「ソフィ・カル」の「本当の話」というお話。

いったいどこまでが「本当の話」なのかわからないくらいハチャメチャなことばかりしているソフィ・カル。
無作為に選んだ人を尾行するという話は「ヴェネチア組曲」の中のエピソードなのだけれど、実際には尾行した時のことは数行しかなくて、その尾行した人がヴェネツィアに行ったという話を聞いて無計画に自分も行っちゃう、というとんでもないお話がメインです。
こちらもなかなか面白かった。

この映画、面白かった!と共感する人がいたら、教えてくださいな。
私は小節の方が面白かったけれど、映像的に映画で補正するというのはいいかも。
ただし、「理由なき尾行」はマネしちゃだめよ!

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何者 (2016) 528本目

これが就活のリアルのなの? 何者 

出演:
二宮拓人役 佐藤健
田名部瑞月役 有村架純
小早川理香役 二階堂ふみ
神谷光太郎役 菅田将暉
宮本隆良役  岡田将生
サワ先輩役 山田孝之

監督:
三浦大輔
お勧め度★★★☆☆

私の初めての就職はアメリカだったので、いわゆる日本の大学生4年生がやるような「就活」はやったことがありません
当時は100社エントリーして10社通るか通らないか、っていう話が多くて、本当に大変そうだった。
もちろんアメリカにも就職のための試験や面接はあるんだけれど、結構な確率でインターンから就職したり、テンプからフルタイムになったり、エージェントに斡旋してもらったり、紹介で就職したりといろいろな方法で就職している人がいる。
1つの会社に正社員として就職せずに、いくつもの仕事を掛け持ちしたり、働いているのに学校行ったりしている人も沢山いて、大学4年生になったら就活しなければ!っていう雰囲気があんまりないのも事実。
だからこそ、この就職戦線を乗り越えてきた人達ってやっぱり真の部分で強いんだろうなぁと思う。
人間、挫折を味わったり、我慢したり、頑張った経験があるからこそ、成長するもんでしょ。
そういう映画。

二宮拓人と神谷光太郎はルームメイト。
同じマンションに友人が住んでいるとわかり、田名部瑞月と小早川理香を加えた4人は就職活動中に定期的に会うようになる。

この映画は第148回直木三十五賞受賞作である朝井リョウ原作「何者」の映画化です。

私はこの小説を映画を見る前に読みました。
小説を読んだ後の感想は

なんて冷たい小説なんだ!

なんというか、人間の見たくない部分を見ちゃったというか、知られちゃったというか、そうなってほしくない展開になってしまったというか。
特に主人公であるはずの二宮拓人がなかなか内定をもらえず、可哀想で・・・

映画の内容はほとんど同じですが、小説だと結末までいかないとわからないところがあり、そのために読み直したりしたのだけれど、映画ではとっても解り易く映像化されているので、結末まで行って何もかも納得できる感じです。

小説では冷たいと感じたいろいろな事が、映画ではむしろスッキリしたというか。
気持ちの良いエンディングではないのだけれど、絶望感はありません。
最後に拓人が歩いている映像の中で流れる主題歌の中田ヤスタカの「NANIMONO(feat. 米津玄師)」。
これが切ないけれど力強くて、何かパワーを感じる。
小説よりマシな終わり方だった気がする。
音楽の力ってすごいのね。

では、ネクラな演劇青年の佐藤健と、チャラ系のバンドマンの菅田将暉とどっちが好みか!
いや、そういう映画ではない!

とにかくこの映画は

マウンティングの嵐!

就活生ってこんな感じなの?
みんなで就職活動の情報交換したり、手伝いしているように見えて、実は内面では嫉妬や羨望、絶望の嵐。
でもさ、これってしょうがないよね。
就職だけじゃない。
遡ってみれば、大学受験だって、高校受験の時だって、自分が行きたかった所に行けなくて、そこに行っている人達が羨ましくて、悔しくて、まっすぐに見ることができない時期ってあったはず。
もっと遡れば、ファミコンを持っている友達が羨ましくて、買ってもらえない自分は「ピアノを買ってもらう」とウソついて対抗してみたり・・・。
とにかく人生、相対的に幸せを探そうとしてばっかり。
だからこそ、今さかんに「自己肯定感」を高めようなんていうけど、そんな簡単にできるのかね?
小さな子供だって、人がもっているおもちゃと自分のおもちゃを比べて妬み合うというのに。
ある時私は、このことに本当に疲れて、人と比べない人生を歩みたいと真剣に思った。
まあ、今はそれほどそういう事がなくなったけれど、一時期自分の中にある「嫉妬心」にムカついてしょうがなかった時期があったよ。

だからこそ、この映画は就活をした事がない私でも共感できる部分が多くて、なんだか辛かった。
それでもその事を映画として客観的に見ることができて、それほどダメージはなかったな。

今回主役の二宮拓人役の佐藤健。
私が小説を読んだときにも好きだった拓人の言葉。

「頭の中にあるうちは、いつだって、何だって、傑作なんだよな」

ホント、これにはガツーンとやられました。
そう、本当にそう、でもそこから出られずにその頭の中の物は何者にもならずに終わってしまっているのです。

田名部瑞月役の有村架純。
瑞月はもっと、アクティブなイメージだったのだけれど、映画ではとにかくいい子でした。

そして最高だったのが、小早川理香役の二階堂ふみ。
私は彼女が一番嫌いだったので、二階堂ふみの「意識高い系」の感じが本当に素晴らしく嫌味だった。
可愛いのに、女子にも男子にも嫌われる感じがうまい。

宮本隆良役の岡田将生。
小説ではもっともっと嫌な奴だった
たぶん岡田将生の爽やかさがそれを薄めてしまったのだと思う。
それでも十分嫌味な奴だけど。

ただ、全員に言えることだけれど、

ちょっとみんな大学生には見えない

唯一神谷光太郎役の菅田将暉だけは大学生っぽい感じがあるけれど、他の人はみんな落ち着きあり過ぎて・・・。
まあ、でも豪華キャストだからいいか!

この映画、面白かった!と共感する人がいたら、教えてくださいな。
この映画は「最後に驚くような事実が!」という前フリがあるけれど、そういうどんでん返し系がメインの映画ではなく、あくまで人間の内側をえぐるドラマです。

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