アリアドネの声 井上 真偽 [作家あ行]
「無理と思ったら、そこが限界」
兄の口癖だった。
事故で亡くなった兄。
助けられなかったハルオは、
贖罪の思いを胸に、
災害救助用ドローンの会社で働く。
障害者支援都市「WANOKUNI」
地下5階まで商業施設などの設備を置き、
地上は、自然豊かな空間となっている。
突如、巨大地震が起きた。
地下に取り残された女性がいた。
その女性は、
目が見えず、耳は聞こえず、話すことが出来ない。
街のアイドルとして活動する知事の姪、中川博美だった。
業務で訪れていたハルオは、
ドローンを操作し、
彼女をシェルターへ誘導する任務を遂行する。
崩落による浸水で、タイムリミットが迫る中、
度重なるアクシデントが進行を妨げる。
「無理と思ったら、そこが限界」
ずっと、兄の思いに囚われていた。
その「迷宮」に逃げ込んでいた。
頑張り続け、その言葉に固執していたハルオは、
中川博美も同じ言葉を口にしていた事を知る。
しかし彼女の解釈は、無理だと思ったら、
ひとまずそれはストップし、
出来そうなことにシフトするというものだった。
ハルオの入り込んだ迷宮は、
幻でしかなかったのかもしれない。
視点を変えて、
彼女を救う方法を考え、
導き出せるかもしれない。
新たな希望を胸に、
再度、救出に向かうハルオだった。
愚かな薔薇 恩田陸 [作家あ行]
584ページの長編SF小説。
将来、地球が太陽に呑み込まれる。
人類を救うための「虚ろ舟」
虚ろ舟乗りの適正を見極める為のキャンプに、
奈智は参加することに。
この地、磐座は古くからその素質を持つ者が多く、
舟乗りの血を引く奈智は、
誰よりも変質する可能性があった。
変質し始めた者は、
他人の血を飲む「血切り」が必要だ。
それを頑なに拒否し続けた奈智だったが・・
恒例行事の祭り。
夜通し踊る「徹夜踊り」
亡くなったはずの両親の姿が・・・
外海を行き来する魂の存在。
奈智は決心する。
自分がやるべきこと、
本能のままに・・・。
リカバリー・カバヒコ 青山美智子 [作家あ行]
2024年本屋大賞7位。
青山美智子さんが描く、
いつもながら温かみのある小説です。
日の出公園にひっそりと佇むカバの遊具。
その古びれたアニマルライドに纏わる伝説があった。
治したい同じ場所に触れると、回復する・・。
人呼んで「リカバリー・カバヒコ」
・・カバだけに。
近くにあるクリーニング店。
様々な悩みを抱えた住人たち。
店主から聞いた「カバヒコ」の話。
丸みを帯びたフォルム、
愛嬌のある表情、
何も言わず、ただそこにいるだけの存在。
撫でながら、問いかける。
自分の声が、心に、
じんわり響き渡る。
心の拠り所。
新たな一歩を踏み出す勇気を、
与えてくれた・・
鈍色幻視行 恩田陸 [作家あ行]
君のクイズ 小川哲 [作家あ行]
2023年本屋大賞ノミネート作品です。
「Q-1グランプリ」
クイズ王を決めるこの大会の
ファイナリストである僕。
隣には、人智を超えた暗記力を持つ本庄絆がいる。
6-6で迎えた最終問題。
本庄絆が回答し、正解した。
しかしそれは・・
問題が読まれる前だった・・。
なぜ、彼は正解できたのか。
やらせだったのか、それとも・・
僕は、本庄絆が出場した過去の映像を見返し、
そのヒントを探る。
クイズを極める者しかわからない境地。
全ての出来事が経験値として蓄積し、
そして生かされる
日々、鍛錬を重ね続ける
正解を獲得した時、
自らを肯定されるような充足感は、
何にも代えがたい
しかし世の中には色々なプレイヤーがいる
僕は、本庄絆に話を聞くことにした・・・