昨今の平地キャンプとかで復刻版アイロンストーブの人気が出つつあるらしいので、ちょっと米国アンティーク市場を見てみましたが、基本は下層の汚れ仕事労働者(20世紀初頭の米国ならクリーニング業なんて黒人やプエルトリカンの仕事、そんな扱いでしょう)が使う、言わばコストをかけない使い捨ての道具だったみたいで、今も使えそうなのは日本への送料込みで10万円を超える。それでも一時期の高騰からは落ち着いたらしいから、恐ろしい。
アンティークだと、傷んでいる可動・消耗パーツが手に入らないし、現代の復刻版を含め、性能的には熱源・光源・調理火源のどれも、専用の道具には全く及ばないし、携帯するにも重量が3Kgもあって、3 in 1にする意味も無い。
そんなマイナス要因だらけのアイロンストーブですが、財布に余裕がある人なら、「ロマン」をくすぐる一品でしょう。しかも復刻品なら予備パーツの販売もあって、なおのこと。
自分も実用で買ったのではなく、おうちでの「炎の鑑賞」用です。WINNERWELLはお高いですが、薪ストーブの実績があり、恐らく予備パーツの供給も安心だろう、と思って、思い切って購入しました。重厚な造りでとても良いです。
基本的に灯油ランタンと同じ、綿芯をなるべく平らに切り揃え、ハリケーンランタンと同じく綿芯の端を少し台形状に切り取って、灯油より7倍もお高いパラフィンオイルで点火。「炎の鑑賞」としては、とても気に入りました。ただ、燃料を500ml入れ、中弱火で6時間持ちましたが、ハリケーンランタンや灯油ランプに比べると、同じ燃料で1/5くらいしか持ちません。つまり灯具としてのコスパは灯油ランプの1/35。
調理の目的でキャンプに持って行くのは、無理があります。弱風でもすぐ炎が暴れて煤が出たり消えたりしますし、調理火源として売られている製品に比べて圧倒的に火力が弱い。また光源としては吊り取っ手が無く、吊り下げられません。熱源としては、一酸化炭素計が必須な締め切ったソロテントで、平地の秋で数度の上昇でしょうか、正直、真冬に暖を取るものではありません。
ネット動画では「アイロンストーブがキャンプで使える」なんてのがありますが、そもそも室内使用が前提の鋳鉄製アイロン加熱専用具でしかなく、それをゆるキャンの映え用に援用している、ということを忘れませんように。