昭和時代(43年)の最初のアニメ作品で傑作と呼び声の高かったエピソードのコミック化。石ノ森章太郎自身は描いていないのか。原作辻真先、絵は弟子の早瀬マサト、原アニメの時代はまだ終戦後23年しか経っていない時代なので、太平洋戦争の記憶も生々しかった時代だ。コミックはそれを反映している。
ハワイ真珠湾から始まり、いきなり日本の戦闘機による真珠湾攻撃が再現され、太平洋の亡霊が甦ったとされる。ゼロ戦、月光、桜花、回天、戦艦長門と次から次へと復活し、極めつけは戦艦大和まで出てくる。これは子供を特攻で死なせた一人の老科学者が、脳内で作り出したイメージを具現化したものだと説明される。後半、広島平和記念公園、長崎平和祈念像、浦上天主堂、沖縄ひめゆりの塔を書いた後、「日本国憲法第九条」の条文が見開き二頁に渡って描かれる。石ノ森を含めたクリエーターたちのの堂々たる反戦の宣言だ。