この作品のヒロイン志麻いづみは数々のにっかつロマンポルノで主役を演じていた女優だ。日本的な美貌と日本舞踊の名取というバックグラウンドは、料亭の女将という役柄にはピッタリだ。しかし、志麻が悪党たちの前で全裸になるのはラスト10分前、団鬼六自ら脚本・製作の割には小説の非情さと異なって責めが生ぬるい。それは空手使いの妹(早野久美子)のシーンにも言える。悪党に拉致されたと思ったら、次のシーンではパンティ1枚で逆さに吊るされており、またカットが変わったら黙ってチンピラたちに犯されているのだが、小説のように強い女が敵に屈服させられる屈辱感が全く出ていない(そもそもそういうシーンがない)。
ラストは下元史朗が5000万円を持ってきて、悪党たちから志麻は解放され、借金問題はひとまず解決するのだが、志麻は自分の体は汚されたと下元とは別れる。おいおいそれじゃ下元は何のために5000万円を作ったのだ(現在の価値では1億円以上だろう)。悪党ではなくなったが、今度は下元に借金している形だろう(下元も誰かに借金しているはず)。下元の恩に報いるには、(男目線だが)一緒になるしかないのではないか。それが、志麻が白塗りをして踊っているという謎のラスト。