物語は視点を変えて重層的に描かれる。真実は何処に?古くは「羅生門(黒澤明監督)から良くある手法である。人によって同じ人物でも全く違う人物に見える。まぁこれ自体はミステリーでも何でもなく、一般的な日常生活でも良くあることで、人間とはそういうものだ。
この作品は興行的にヒットしたらしいが、「怪物」というタイトルで大分損をしているのではないかと思う。作者たちの意図は分かるが、ホラー映画やモンスター映画じゃないんだから。映画に詳しくない一般の人は誤解するのではないか。「怪物だ~れだ」という子供たちの問いかけには、観る人がそれぞれ考えてくださいという事なのだろうが。
ラストの二人は現実なのか、ファンタジーなのか?中盤に描かれた埋もれた電車の中には姿が見えなかったが(画面に映っていない)、これも観客の判断に委ねるということなのでしょうね。
また今となっては坂本龍一の音楽だったことは貴重で、この作品の価値を高めた。画面を煩くせず、寄り添って癒してくれる音楽だ。