圧巻。こんなにも人の心を描き上げた作品に出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいです。
様々な設定は小説だから書けたのかもしれないけれど、人の心の核心部分は、どこに居ても、誰もが、思ったり考えたりすることではないかと思いました。ある種の醜さや残酷さも、人生の頂点と転落も、とことん不器用な生き方も、生きづらさを抱える人の気持ちまでも、想像しながら寄り添ったり、部分的に共感したり、自分はそうじゃないと思いたがったりしながら、引き込まれるように読みました。
人の生き方や価値観はそれぞれだし、多くの人がそう言っているけれど、「本当にそう思って生きてる?」と問われているようにも感じた読後。人に優しくって、言葉ほど簡単じゃないことも教えられました。じゃあ、優しくできないのかというと、「その人を思い、思ったとおりに言葉にすること」が優しさなのかもしれません。その時は言えなかったり、あの時は言えなかったんだ…と後悔することもあると思うけど。
タイトル回収に泣きました。表紙の飾りものや夕星がハードカバーに印されていることも、まるごとこの作品の意味だと分かって、愛おしい一冊になりました。