歌舞伎の名門と言われる人々の、芸の影の努力と苦労がよくわかります。
上巻の若者たちの苦労や努力、成長の下巻でもあります。
まるで壮大な一大映画のように、圧倒される筆致で進む下巻。
主人公を囲む人たちの描写や役者の女房の成長や心意気など、
丁寧で飽きさせない章立て(幕間)もさすがです。
歌舞伎の舞台の光や音色、香りまでもが感じるられる作者の筆の巧みさ深さ。
吉田修一氏の本はすべて読んでいますが、国宝は神々しいまでの小説です。
演目の解説のように綴られる語り手の筆致も、とてもやわらかく心地よいです。
読書が好きで良かったと思わせてくれる1冊です。
あとがきの歌舞伎の演目の解説は興味深く、
踊りの描写と合わせて最初に読んでもいいかなと思いました。