『血脈』や『晩鐘』を読んで、なんて面白い小説だろうと思っていましたが、恥ずかしながら佐藤愛子さんのエッセイを手にするのは初めてでした。
「エッセイの名手」の肩書きは伊達じゃなかったです。自らの老いを見つめるその目はどこか面白がっていて、世間で言われるような高齢者問題なんて何のその。
耳が遠い、それがなんぼのもんじゃ!犬がうるさい、子供の声がうるさい、だからどうした!
とかく文句ばかり出る現代のあれやこれやに、キレッキレの文章で切り返します。その説得力ある書きぶりに、もう恐れ入りました、とこうべを垂れるばかりです。
大正12年生まれ、92歳というのに、この現役感。いたずら電話やドロボー、押し売りすら千客万来、懐かしく感じるこのエネルギーには、ただただ驚くばかりです。
ご本人曰く、暴れ猪というその性格によるものだそうですが、こんな風に生きられたら、人生は楽しく、やっぱりめでたいなあと、つくづく感じたエッセイ集でした。