テンプル・グランディン、ダニエル・タメットなど、自閉症スペクトラム当事者のうち、アスペルガーシンドローム・高機能自閉症、いわゆる天才と呼ばれるタイプに分類される人たちが、自らの状況や症状を語った素晴らしい著作は、今までにもありました。
本作の著者・東田直樹氏は彼らとはまた違う、コミュニケーションがとくにうまくとれないタイプの、重度の自閉症者です。
突然地面に寝転がる、奇声を上げる、声をかけても反応しない、など、
百年前の精神科医なら、彼がものを考えているとは思わない。
行動だけ見ていたら、彼に心があるとさえ、思わない人だっていたかもしれない。
今だって。
こだわりの対象が文字だった彼は、考えを言葉の文字にして、外に伝えることができるようになった。
シンプルで、的確で、時に詩的な言葉で。
幸運にもそれを私は、読むことができる。
しかも、同じ母語で。
これはとても、とても大きいことです。
新しい扉が開いた感じです。