書店に平置きされており、その帯のコメントを見て買った本。 1980年代の平凡な若者のラブストーリーではあるが、物語に仕込ませているプロットは秀逸。
「必ず2回読みたくなる」
「最後から2行目で本書は全く違った物語に変貌する」
従来この手のコメントは大げさにつけている場合が多く、また逆にこの様なコメントがあるが故に裏の裏まで先読みしてしまい、結果として筆者が仕組んだ巧妙な伏線が分かってしまうという結末を迎えることが多い。
帯のコメントは売上アップに貢献するものの、諸刃の剣で小説の楽しみの半分以上を奪ってしまうのが世の常である。
しかし、本書は違った。 本当に述べている通り、最後から2行目がトリガーとなって読み直したくなる衝動を押さえれなかったし、じっくり読み直すことで違った物語に変貌するのを実感できた。 まさしく、まんまと著者に騙された訳である。(確かに読み進めていて多少の違和感は有ったのだが、自分の思い込みで真実を見抜くことが出来なかった。)
この小説の仕組みを1回読んだだけで分かる人はいるのだろうか。 本書の舞台である静岡の人間ならば分かったかもしれない。 1980年代の物語故に巻末に用語の説明が載っている。 これが時代背景の説明をするだけでなく、本書のトリックの種明かしをさりげなくしている所が素晴らしい。