私の祖母の大好物は牛肉、それもサイコロステーキでした。余命宣告されてからの約一年間は本人には本当の病名を伏せ、家族皆必死で祖母の笑顔の為だけに様々な美味しいものを取り寄せては食べてもらっていました。そして祖母は今年三月、息を引き取りました。それから半年間、思い出してしまうようで全く口にしていなかった牛肉を取り寄せました。仏前の祖母の写真を見ていたら突然祖母に食べさせたくなってしまったのです。到着後炭火で焼き、仏前に供えさせていただきました。仏前にお肉なんて不謹慎だと思われるかもしれませんが、お寺の御住職は『生前お好きだった物を供えるのは決して間違ったことではないし、そういう気持ちこそが一番の供養ですよ』とおっしゃっていただきとても安心しました。その日は食卓に祖母も一緒にいるようで本当に楽しく美味しくサイコロステーキをいただきました。当然のことながら、肉質もとても良好で柔らかく、金額以上の満足感がありました。本当はもう一度食べて欲しかったサイコロステーキ。もう叶うことはありませんが、仏前の祖母の写真はいつもよりも笑っている気がしました。