はじめに
Accessのマクロを使用してネットワーク越しにファイルを直接参照してインポートする場合、処理が正常に完了していないにもかかわらず、エラーとして検知されないケースがあります。
このような問題を未然に防ぐためには、ネットワーク上のファイルを直接参照するのではなく、一度ローカルにコピーしてからインポートする方法が推奨されます。本記事では、AccessのVBAを活用してローカルにコピーを行い、安全にデータを取り込む手順を解説します。
最近、ネットワーク越しにファイルを直接参照してインポートする際、いつもより処理時間が長かったり、インポート先のテーブルにデータが取り込まれていない事象に遭遇しました。この問題は、インポート処理のみ別の手順に分けることで解決しましたが、根本的な原因は不明のままです。
このようなトラブルを防ぐためにも、ネットワーク越しではなく、ローカルにファイルをコピーしてからインポートする手法を強くお勧めします。処理を分割することでエラー処理が容易になり、エラー発生時の原因調査も行いやすくなります。
1. ネットワーク越しにファイルをインポートする場合の問題点
発生する可能性がある問題点は以下です
1.1. ファイルロックの問題
複数のユーザーが同時にネットワーク上のファイルにアクセスすると、ファイルがロックされてしまうことがあります。この状態では、インポート処理ができない(中断される)か、意図したデータを正しく取得できない可能性があります。
1.2. ネットワーク接続の不安定さ
ネットワーク環境が不安定な場合、一時的な接続切断や遅延が発生する可能性があります。その結果、インポート処理が中断されたり、データが欠落することがあります。
1.3. エラーの検知難易度
ネットワーク越しのインポートでは、処理が中断されてもAccessのマクロやVBAでエラーが正しく検知されない場合があります(単純にエラーハンドリングが正しく行えていないだけの場合もあります)。このような場合、エラーの原因を特定するのが難しく、原因調査に時間がかかることがあります。
2. 解決策:ローカルにコピーしてからインポートする
2.1 ローカルにコピーする利点
ネットワーク越しのインポートは、エラー発生のリスクが高いため、ファイルをローカルにコピーしてからインポートすることで、安定した処理が可能になります。ローカル環境ではネットワークの遅延や切断の影響を受けず、処理のスピードと正確性が向上します。
2.2 VBAでファイルをローカルにコピーする方法
以下は、ネットワーク上のファイルをローカル環境にコピーするVBAのコードです。
Sub CopyFile() Dim SourcePath As String Dim DestinationPath As String SourcePath = "\\Server\Share\FileName.csv" ' ネットワーク上のファイルパス DestinationPath = "C:\Temp\FileName.csv" ' コピー先のローカルパス On Error Resume Next Dim FSO As Object Set FSO = CreateObject("Scripting.FileSystemObject") FSO.CopyFile SourcePath, DestinationPath, True If Err.Number <> 0 Then MsgBox "ファイルコピーに失敗しました: " & Err.Description Err.Clear Else MsgBox "ファイルコピーが完了しました" End If End Sub
2.3 VBAでローカルのファイルをインポートする方法
次に、ローカルにコピーしたファイルをインポートするVBAのコードです。
Sub ImportTextFile() On Error GoTo ErrorHandler ' --- 設定する変数 --- Dim FilePath As String ' インポートするファイルのパス Dim TableName As String ' インポート先のテーブル名 Dim ImportSpecName As String ' インポート仕様の名前 ' --- パラメータ設定 --- FilePath = "C:\Temp\FileName.csv" ' インポートするファイルの絶対パス TableName = "ImportedData" ' データを格納するテーブル名 ImportSpecName = "MyImportSpec" ' 事前に作成したインポート仕様の名前 ' --- インポート処理 --- DoCmd.TransferText acImportDelim, ImportSpecName, TableName, FilePath, True MsgBox "ファイルのインポートが完了しました。テーブル名: " & TableName Exit Sub ErrorHandler: ' --- エラー処理 --- MsgBox "エラーが発生しました: " & Err.Description Err.Clear End Sub
DoCmd.TransferText の補足説明
- DoCmd.TransferText
:テキストファイルをAccessにインポートします。
- acImportDelim
:区切り文字付きファイル(CSVやタブ区切り)をインポートします。
- ImportSpecName
:ファイルの構造(フィールドの区切り方やデータ型など)を定義したインポート定義の名前です。事前にAccessのインポートウィザードを使用して、ファイルのフォーマットに応じたインポート定義を作成し、保存しておく必要があります。
- TableName
:インポート先のテーブル名です。
- FilePath
:インポートするファイルのパスです。
- True
:ヘッダー行がある場合に指定します。
まとめ
ネットワーク越しのファイルをインポートする際のリスクを回避するためには、ローカルにファイルをコピーしてからインポートする方法が有効です。本記事で紹介したVBAコードを活用すれば、安全なインポート処理を実現できます。一度ローカルにコピーすることで、エラー原因の調査も容易になりますので、ぜひ取り入れてみてください。
他にもVBAに関する記事を書いていますので参考にしてみてください