【株式会社イード】 「自分の経験とは正反対の会社にしたかった」-“自由な働き方”に込めた代表の想い
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「自分の経験とは正反対の会社にしたかった」-“自由な働き方”に込めた代表の想い

宮川洋株式会社イード 代表取締役

1965年生まれ。1988年、中央大学文学部史学科西洋史専攻卒業。大学時代はテニスの体育会で練習に明け暮れ、卒業と同時に株式会社アスキー(現:KADOKAWA)に入社。出版部門にて、PC関連誌の刊行ラッシュの中、12年間マーケティング責任者を務め、「今後、メディアとしてのインターネットの時代がやってくる」と確信。インターネットの世界に飛び込むべくインターネット総合研究所(IRI)に転職。2000年、株式会社イードの前身となる株式会社アイ・アール・アイ コマースアンドテクノロジー(IRI-CT)創業。


–最初に、イードが掲げる「We are the User Experience Company.」という理念について教えてください。

一言でいうと、ユーザーやクライアントにとどまらず、イードに関わるすべてのステークホルダーに最高のユーザーエクスペリエンスを提供したいという思いが込められています。私はこの「User Experience(UX)」を「利他の精神」、つまり自分も含めた、誰かを「思いやる」その心だと解釈しています。イードに関わるすべてのステークホルダーには、イードで働く従業員も含まれています。UXを提供する側の「心」が不満足な状態では、利他の精神が生まれることはないと考えているからです。まず自分自身を思いやり、心が満たされて初めて、チームのために貢献するという利他の精神が生まれ、その輪が広がっていくことで理念が実現していく。そういう意味で、まずはイードで働く一人一人が心行くまで満足した仕事ができるよう、働きやすいと感じてもらえる環境でありたいと思っています。

–その思いが、新卒を除いてですがコアタイムの無いフレックスタイム制や裁量労働制という、どちらも働く側の自主性に任せられた勤務形態を導入していることにつながっているのでしょうか?

出発点は、私がサラリーマン時代(懐かしき昭和の営業部でしたが…)だった頃と正反対の環境にしようという思いでした。自分の会社では、ルールや習慣によるプレッシャーやストレスをすべて取り除いたワークスタイル環境を実現したいと思ったのです。スポーツの試合では、緊張で足が動かなくなり実力の30%も出せない、というようなことがままあります。どれほどの実力を持っていたしても、30%しか発揮できなければ勝てる可能性は少なくなります。ルールや習慣で縛ることは、従業員の潜在的パワーを抑え込むことと同じなのではないか、それらを取り除けば、一人一人が常に100%のポテンシャルを発揮できるのではないか、というのが私の考えです。

–この間、従業員の勤怠管理を担当しているメンバーと話したんですが、ここまで自由な働き方は、経営陣が従業員を信頼していないと実現しないと言っていました。そういう気持ちはありますか?

信頼ももちろんありますが、それは6割くらいで、残りは潜在的な可能性へのベット(賭け)といってもいいかもしれません。本人も知り得ない潜在的な能力を引き出すためには、普通のやり方ではうまくいきません。先述したようなプレッシャーやストレスなど、上から抑え込まれるような要因をすべて取り除くことで、本人が持っている潜在能力がスパークする瞬間を見たいと思っています。今や人生100年時代と言われますが、仕事を通して経験することは、それ以降の何十年をも形作る大きな糧となります。イードという環境で能力の最大値を発見し開花してもらいたいですし、その結果イードから旅立つ決心をしたのなら、それは後押しするべきだと考えています。

–一人一人の可能性に賭ける代表の覚悟が、イードの自由さの根幹にあるのですね。

本人が理解している能力というのは70%程度で、あとの30%は本人もまだ気づいていない潜在的な可能性だと思っています。しかもその30%が圧倒的なパワーだったりもします。それも含めた100%の力を発揮すると言うのは、いわゆる“ゾーンに入る”状態であり、私はこの“ゾーン”を20代のうちに体感することはその後のキャリアにおいてもとても大切なことだと考えています。私にとってそれはインターネットの誕生でした。時を忘れてインターネットに没頭し、どうやればビジネスに活かせるだろうかと夢中になりました。そうして没頭している時間こそが人生の幸福度を上げます。目の前にある小さなことで良いので、何かに没頭し、ある種自分に酔いしれながらストーリーを描いていってほしいと思っています。

–一方で新卒1年目には9:30-10:00のコアタイムを設定しています。先ほどのお話と矛盾しているようにも感じられますが、どのような意図があるのでしょうか?

「親心」というと押しつけがましいかもしれませんが、それに近い気持ちがあります。例えば30歳を過ぎてから転職する際には、どのようなスキルを身に着けているかは見られますが、「あなたは朝ちゃんと出社できますか?」とは問われません。「できて当たり前」だと思われているからです。しかし20代だと話は違います。20代では、時間を守れるかのようないわば社会人の基礎能力のようなものも当然見られます。自由な社風のイードだからこそ、1年目のスポンジのような時期に、その基礎能力を体になじませてほしいという思いがあります。「そんなことしなくても成果は出せる」という人もいるでしょうし、イードの中でならそれでいいでしょう。しかしイードという環境にカスタマイズされた人材で満足するのではなく、どこでも通用する力を身につけほしい、それでもイードが好きだからイードで働いてくれている、というのが私の理想です。

–イードだけでなく、どの場所でも活躍する人材になってほしいという願いが込められているのですね。新卒の話が出た流れで、新卒採用においてどのような人材を求めているか伺えますか?

先ほども話したように、イードは人のポテンシャルを重視する会社です。それは新卒採用においても同様で、我々は新入社員のみなさんの持つ潜在的な能力に大きな期待を寄せています。新卒1年目から大きな裁量を与えているのは、その期待の表れです。その分業務は大変ですが、それをパワーに変えられる人が、今後のイードの礎を築いていってくれるのではと思っています。イードは今年(2020年)4月で20周年を迎えましたが、変わらずベンチャー企業です。私は、ベンチャーとは「心のあり方」だと思っています。自分の心のままに一歩を踏み出し、誰かに連れて行ってもらうのではなく、自らを自分にとって見晴らしのいい場所まで引き上げられるかどうかが成長のカギだと思います。

–ありがとうございました!