『PUI PUI モルカー』は毛並みにも注目! 小野ハナ監督が語るコマ撮りアニメの奥深さ

『PUI PUI モルカー』は毛並みに注目

 TVアニメ『PUI PUI モルカー』の新シリーズ『PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL』が放送中だ。2021年に放送された第1期は、SNSを中心に口コミが広がり、社会現象ともいえる“モルカーブーム”を巻き起こした。

 リアルサウンド映画部では、新シリーズの監督を手掛ける小野ハナ監督にインタビュー。第1期よりもさらにモルカーと人間の関係性にスポットが当てられるという新シリーズの見どころを聞いた。

「見里さんの発想に関しては、いまだに驚きます(笑)」

――制作に時間のかかるストップモーションで、こんなに早く新作が観られるとは思っていませんでした。以前から見里朝希さんとは新シリーズの構想についてお話されていたのでしょうか。

小野ハナ(以下、小野):いえ、第1期の制作段階では全くそういう話はなくて、放送後の反響を見ながら我々スタッフもみんな驚いていました。今回新しいお話をいただいて、完全に終わった後から稼働した感じでしたね。

――放送中もSNSの反響は見ていましたか?

小野:張り付いて見ていました(笑)。たくさんの方から感想をいただけて嬉しいと同時に、予想外すぎて驚きました。

――小野監督は第1期に絵コンテで参加された際、モルモットと車が融合した“モルカー”というアイデアにどのような印象を持ちましたか?

小野:最初は、コマ撮りの技術の面で、非常に良いアイデアだなという印象で伺っていました。というのも、車のパペットだと自立してくれるので、倒れないように押さえを使う必要がなくて便利だし、造形もシンプルですけどかわいいというのが両立していて、とても良いアイデアだなぁと思って見ていたんです。でも、それを1歩ずつ歩かせる、手足を4本動かして歩かせるというのは、放送後に完成を観て初めて知りまして(笑)。

――えっ!

小野:非常に撮りやすいアイデアだと思っていたのが、むしろ動かすのがすごく大変なことをやっていて(笑)。そっちに行くんだと驚いて、放送中に大爆笑していました(笑)。

――絵コンテの段階ではタイヤが回ると思って描かれていたんですね(笑)。

小野:そうなんですよ。絵コンテを描くときは、実際に動かすアニメーターさんの自由度を確保しておきたかったので、そこまでの指示は出さず、「こういう感情で、こういうシーンになるけど、動かし方は自由にやってね」という投げ方をしていたので、手足をどう動かすかみたいなところまでは放送までノータッチのまま来てしまって(笑)。

――実際に放送を観てみたら、まさかの……(笑)。

小野:「めちゃめちゃ動いてる!」と笑いました(笑)。

――見里さんとは東京藝術大学の大学院で既にお知り合いだったと伺ったのですが。

小野:そうですね。私の方が先に修了しているので、修了制作展にお邪魔したときに、見里さんが出品していた『マイリトルゴート』を観させていただいて。がっつりお話をするようになったのは、卒業してからですね。

――『PUI PUI モルカー』を初めて観たときに、かわいらしいモルカーが人間によって振り回される描写に驚いたのですが、以前から見里さんの作品を観ていた小野監督にとっては、あまり驚きではありませんでしたか?

小野:見里さんの発想に関しては、いつもいまだに驚きます(笑)。見里さんにとっては、アイデアの小さなかけらなんですけど、その一つ一つに爆発力がある方で、どうしてそうなったのかよりも、完成形を観たときの驚きを具体的に想像されている方だと思います。しかも、そのアイデアも斜め7歩先みたいなイメージで拝見していました(笑)。

――確かに、第1期のスパイアクション回(第8話「モルミッション」)とか、どうやって思いついたんだろうと思いながら観ていました。

小野:そうなんですよね。完成した映像をまずイメージされていて、そのために全ての調整をつけるというやり方をされているので、新シリーズでは私も見習っていろいろと取り入れさせていただきました。

――小野監督は見里さんとは違った作り方をするタイプですか?

小野:私はどちらかというと、完成形よりも、大筋の流れを繋げる係といいますか。モチーフとテーマがあれば大筋は見えてくるのですが、その中に誰が、何を見て、こう思った、みたいな具体的な感情の部分を流し込んで繋げていくタイプだなぁと、見里さんと共作して思いましたね。見里さんがお弁当箱を作って、私がお米をそこに詰めていくみたいな感じです(笑)。

――今回もまたゾンビやスパイアクションのような特殊回を期待していいのでしょうか?

小野:はい、それはぜひ期待していただけると(笑)。教習所がメインの場所ではありますが、いろいろなところに行ってもらいました。

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