我が家 坪倉由幸、名バイプレイヤーとして活躍 主役を引き立たせる“情けなさ”は大河でも

我が家 坪倉、名バイプレイヤーとして活躍

 名バイプレイヤーとして活躍を続けているのが、お笑いトリオ「我が家」の坪倉由幸だ。最終話を迎えた『ムチャブリ! わたしが社⻑になるなんて』(日本テレビ系)では、浅海社長(松田翔太)にクーデターを企て社長解任にまで追いやる専務・葛󠄀原として暗躍した。葛󠄀原はポーカーフェイスで冷静に何事もジャッジしているかに見えて、誰のことも信用できていない小物感も同時に滲ませる。時には手段を選ばず姑息なことも平気でやってのけ出し抜く葛󠄀原の、その姿こそが浅海への紛れもないコンプレックスのようなものをあらわにし、その情けなさも味わい深いものがある。

 一方、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)では工藤祐経役として、小汚い落武者姿を見せ、情けなさ、人間味を立ち上らせた。ここでの“情けなさ”は前述の葛󠄀原とは違って、ひたすら不憫さが際立つ。

 坪倉といえば、いまだに強く印象に残っているのは、やはり『アンナチュラル』(TBS系)第4話で演じた過労によるバイク事故で家族を遺して亡くなる父親役だ。主に回想シーンでの出演でそう台詞が多くないにもかかわらず、彼の人となりをしっかりと投影し、これまでずっと続いてきた彼の家族との時間や生活を地続きに見せてくれた。バイクの転倒後に夜空に咲く大輪の花火を見つめる表情だけで多くを語らずとも、彼の揺るがぬ心の拠り所が家族にあるのを示し、その様子に思わず涙を誘われた。大袈裟な所作をするわけでもなくただただそこに佇んでいるだけなのに、なんだか想像力を掻き立てられるし胸に迫る。坪倉の演技は、そのキャラクターの映像では切り取られていない“その人として生きてきた”時間をじっくり醸成させた上で見せてくれるのがお見事だ。

 『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)では、賤ケ岳(内田有紀)の夫役で家事にも育児にも協力的な優しい夫役を好演したかと思いきや、『あなたの番です』(日本テレビ系)ではすっかり冷え切った夫婦関係にあり不倫に走る夫役を演じ、その振れ幅も見せつけた。
この坪倉の受けの芝居の上手さは他作品でも随所で見られる。映画『騙し絵の牙』では、廃刊危機に瀕するカルチャ雑誌「トリニティ」の副編集長・柴崎役を演じ、新任編集長の速水(大泉洋)への眼差し一つで彼のことも彼が着手しようとしている改革のことも疎ましく思っていること、社内の対立構造や関係図、立ち位置を瞬時に示す。

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