年末企画:麦倉正樹の「2018年 年間ベストドラマTOP10」 “多様性”をめぐる問題と“脱構築”の動き
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は地上波および配信で発表された作品から10タイトルを選出。第6回の選者は、無類のドラマフリークであるライターの麦倉正樹。(編集部)
1.『透明なゆりかご』(NHK)
2.『女子的生活』(NHK)
3.『アンナチュラル』(TBS)
4.『dele』(テレビ朝日)
5.『おっさんずラブ』(テレビ朝日)
6.『中学聖日記』(TBS)
7.『僕らは奇跡でできている』(カンテレ/フジテレビ)
8.『隣の家族は青く見える』(フジテレビ)
9.『anone』(日本テレビ)
10.『獣になれない私たち』(日本テレビ)
振り返ってみると、2018年は“多様性”と“脱構築”を意識したドラマが数多く見受けられた一年だったように思う。“多様性”とは、自分とは異なる価値観をもった他者を受け入れること。“脱構築”とは、既存のドラマ構造を超えて、新しい物語を描き出していくことである。その両者が複雑に入り混じりながら、作り手たちのあいだでさまざまな試行錯誤が行われたのが、2018年のテレビドラマ界だったのではないだろうか。
トランスジェンダーを主人公とした『女子的生活』はもちろん、流行語大賞にノミネートされるほど注目を集めた『おっさんずラブ』、あるいは『隣の家族は青く見える』に登場したゲイカップルや、『中学聖日記』に登場したバイセクシャル。それらはいずれも、「LGBTをテーマとしたドラマ」と言うより、むしろそれらの人々をドラマ内に配置することによって、その他の登場人物たちの“反応”や“戸惑い”を視聴者と同目線で描き出し、それを彼/彼女たちがどう乗り越えていくのか? という点に主眼が置かれたドラマだった。そのことは、“多様性”とは社会の問題である以前に、個々人の“寛容性”の問題なのだという当たり前の事実を、改めて視聴者に理解させてくれたように思う。
そのなかでも『女子的生活』は、全4話と短いドラマながら、志尊淳と町田啓太の好演もあって、最終的には、まるで青春物語のように爽やかな余韻を残す、実に忘れがたい作品となった。1位に選出した『透明なゆりかご』も、そんな“多様性”と無関係ではない。町の産科医のもとにやってくる人々が、それぞれに抱えている事情。それはときに、容赦ない現実を我々の前に突き付ける。けれども、それを既存の価値観で測るのではなく、“看護師見習い”の女子高生という、まだ何者でもないフラットな視線で描くことによって、本作は同系のドラマである『コウノドリ』(TBS系)とはまた違う、爽やかな感動を視聴者にもたらしていたように思う。本作が初主演となる清原果耶の瑞々しい演技も光っていた。
これまでと少しだけ視点をずらすことによって、物事の新たな側面に光を当てること。法医学という決して目新しくはない題材を、リアルで能動的な“女性目線”で描き出すことによって秀逸な現代性を獲得していた『アンナチュラル』も、そんな視点の新しさを感じるドラマだった。毎回抜群のタイミングで流れる米津玄師の「Lemon」の記憶ともども、こちらも忘れがたい一本だ。