蒼井優&菊池亜希子が語り合う、アンジュルム笠原桃奈への思い 最後の写真集に「どうしよう、もう泣きそう」
2021年11月15日をもって、アンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業する笠原桃奈。アンジュルムのファンを公言し、『アンジュルムック』のダブル編集長をつとめた女優の蒼井優と菊池亜希子が再びタッグを組み、彼女の最後の写真集を手がけることになった。
コンセプト決めから衣装選び、撮影のディレクションやレイアウトまで、ふたりが制作に関するすべての工程で情熱を注いだ写真集。思わず抱きしめたくなる可愛さと、10代後半の日々変化していくセンチメンタルな瞬間がたっぷり詰まった一冊は、ファンはもちろん、まだファンでない方も楽しめるものだ。写真集制作に込めた思いをふたりに聞いた。(羽佐田瑶子)
【インタビューの最後にプレゼント企画あり】
「今しか出せない輝きを残したい」自ら企画書を事務所に提出
ーーハロー!プロジェクト、そしてアンジュルムのファンを公言するおふたり。責任編集をつとめられた『アンジュルムック』は早々に4刷となり、大きな話題をよびました。前回、「彼女たちに関わるのは(一ファンとして)大きなこと」と語っていましたが、今回はどのような経緯で企画がスタートしたのでしょうか?
蒼井:メンバーの卒業が続いた時に、私たちは静かに見送ってしまったことがとても心残りで……。(筆者注:アンジュルムック以降、勝田里奈、中西香菜、室田瑞希、船木結が卒業。太田遥香は活動休止などメンバーの変更が相次いだ)
菊池:何もできることがなくて…、ただただ涙を流しながらエールを送ることしかできず。
蒼井:笠原さんの卒業発表もニュースで知ったんですけど、その時は、あっこちゃん(菊池亜希子)もアンジュルムックに携わってくれた編集の武内さんもちょうど「今なら動ける!」というタイミングで。それで、ダメもとで企画書を作ってアップフロントさんに出しました。
菊池:頼まれてもいないのにね(笑)。
蒼井:笠原さんは卒業後、海外に行かれてしまうと発表されていたので、すごく焦ったんですよ。もちろん海外に行かれたら、それはそれで企画書を出したいんですけど(笑)、「ハロー!プロジェクトの笠原桃奈さん」という今しか出せない特別な輝きを残しておきたいと思いました。
ーー笠原桃奈さんは12歳でアンジュルムに加入し、約5年間アンジュルムに在籍。バレエを習っていたのでダンスが綺麗で、音楽や映画といったカルチャーにも関心が高く、ブログの文章が素晴らしかった印象です。たくさんのお姉さんに可愛がられながら、どんどん美しく、いい意味で年齢不相応な大人っぽさを魅力に思っていたのですが、写真集には自然体で等身大な、見たことのない笠原さんがたっぷり詰め込まれていました。どのようにコンセプトは決めたのでしょうか?
菊池:やりたいことはたくさんあったんですけど、今の私たちができる最善策を考えたら、迷いなく、笠原さんの自然体な美しさをドキュメンタリータッチで切り取ろうという方向になりました。
蒼井:私たちが、一番注力できる世界観なんだと思います。
菊池:笠原さんって最初から大人っぽかったけど、その対極にある「赤ちゃんみたいな部分」も持ち続けているじゃないですか。それが魅力だし、写真におさめられる最後のチャンスなんじゃないかと思って。アンジュから飛び出して、外の世界でいろんなことを吸収するんだなと思うと……どうしよう、もう泣きそう(笑)。
蒼井:なるよ、仕方ないよ。
菊池:撮影で、海岸に行ったんです。そこで、海の向こうをボーッと眺めている笠原さんを遠くから見ていたら、その表情があまりにも切なくて綺麗で、もらい泣きしそうになっちゃって。これから、毎日自分を更新されていくだろうから、17歳でアンジュルムにいる、今しか撮れない表情をおさめられたと思います。
蒼井:メイクはとても力があるものなので、はっきりとしたメイクにすると、そのメイクにあった顔になっていきます。彼女には「大人っぽさ」と「赤ちゃんっぽさ」の両面があって、どちらも彼女の素顔。今回はメイクに合わせた彼女の表情よりも、彼女の内面と直結した表情を収めたかったので、茅根さんにメイクをお願いしました。
菊池:考えが大人だよね。ブログを読んでいても、一生懸命いろんなことを考えているし、写真集の後書きが素晴らしかった。自分が17歳の時に、ここまで周りの気持ちをキャッチできてたかなって思いました。
蒼井:言葉の選び方と感じ方が、本当に素晴らしい。基本的に人見知りなんだけれど、少しずつ解れて、海の撮影でポロッと「アンジュルムのみんなで来れたらよかったな」って仰ってたんですよ。オフの時間でもアンジュのことを考えているなんて、いい出会いだったんだなって勝手に嬉しくなっちゃって。
菊池:12歳という思春期に入るタイミングでアンジュに来てくれて、ファンとしては責任みたいなものも感じてるんですよね。思春期の大切な時期にこの場所に来ることを選んでくれたこと自体感謝だし、来てくれたことを後悔させないために、私たちができることは全力でやらねばと、これはすべてのハロメンに対して常に思っていることです。だから純粋にこの場所を楽しんでほしいし、最後を見送りたい。本人もその時間を噛み締めていることが伝わってきて、なんて尊いんだろうと思いました。
実家にあるアルバムと、同じくらいの愛情を注ぐ
ーー写真集を作る上で、どのようなことを大切にされましたか?
菊池:とにかく純粋に、全力で可愛い、愛おしいと思うものだけを詰め込もう、そしてその可愛さは、何年経っても色褪せないものを目指そう、と思って作りました。あとは“自然体であるか”ということも。それは写真のテイストの話というよりも、制作の姿勢の話で、“可愛い”を作為的に作るのではなくて、笠原さんから自然に滲み出る、オリジナルな可愛さをこぼさず拾い集めたいなと思っていました。
蒼井:たぶん、笠原さんと高橋ヨーコさんの相性も良かったんです。私たちが側にいるよりも、2人だけの方がどんどん表情がやわらかくなっていって。
ーーカメラマンには、蒼井優さんの写真集も撮られている高橋ヨーコさん、ヘアメイクに茅根裕己さん、アートディレクターにはグラフィックデザイナーの大島依提亜さんが参加されています。スタッフィングはどのように決められたんですか?
蒼井:この企画にした時点で、カメラマンはヨーコさんしかいないと思っていました。笠原さんは人見知りな部分も魅力だから、ちょっと距離がある方がそういう表情が撮れるかもしれない。私もヨーコさんの写真が好きで、いつか撮ってもらいたかったので、いかに笠原さんが可愛いかをプレゼンして。
菊池:撮影したら、すごく手応えを感じてくれてたよね。
蒼井:ヨーコさんがはっきり、「撮れた」って言ってくれたから嬉しかったよね。茅根さんのヘアメイクは本当に不思議で、何が違うんだろうって思うんだけど、写真になると違いがはっきり出るんですよね。
菊池:茅根マジックがあるよね。何もしてないようで、やっている。茅根さんは「あえて」の部分が魅力で、あえて耳の上の髪を残したり、肌を塗りすぎなかったり、綺麗に直し過ぎない良さがあると思います。
蒼井:撮影後半になって、風とか海の水分とか、全部が馴染んだような状態を最初から作ってくれるよね。茅根さんしか出せない質感があるし、ヨーコさんとの相性がすごくいいと思います。
ーードキュメンタリータッチの構成、写真の流れも素敵でした。
蒼井:レイアウトを組んでくれた依提亜さんが現場にいなかったんです。私たちは時系列とか現場の雰囲気をわかった上で写真を見てしまうけれど、客観的な目線で時間の流れを作ってくださったので、そこを基本に写真を決めていきました。
菊池:依提亜さんも、胸に迫るものを感じ取ってくださって。写真をお渡ししたら、「ちょっと泣いてしまいそうでした」と感想をくれたんです。それが、デザイナーさんにも伝わったのが良かったですね。ちょっと、写真を変えるだけでリズムが変わって、落とせない写真もたくさんあって、すごく悩みました。私は自分の写真集を作ったことがなかったんだけど、優ちゃんは10代でヨーコさんと『トラベル・サンド』『ダンデライオン』(両方、ロッキングオン)を作っていて。その時から自分でレイアウトを組んでいたんでしょ?
蒼井:全部じゃないけれど、どう見せたいのか、どういう並びでどんな遊びを入れたいのか、ロッキングオンに缶詰になってやってたね。そこで教わったのは、写真集っていうのは家のアルバムと同じ感覚になれるくらい愛情を注ぐべきだということ。歳を重ねても愛おしく思えて、周りにいた人の温度も感じられるものがいいから、そこを目指しました。
菊池:ヨーコさんの写真は基本「横」で、私たちはこの写真が好きだからフォーマットには悩んだんですけど、あえて余白を残した形にしました。