「未来」を発明したサル ― 記憶と予測の人類史
「未来」を発明したサル ― 記憶と予測の人類史/トーマス・スーデンドルフ、ジョナサン・レッドショウ、アダム・ブリー
2024年8月15日/360ページ
目次:あなただけのタイムマシン 未来を創造する 自分を発明する 脳の仕組み ほかの動物は今に囚われている? 四次元の発見 旅の道具 ほんのわずかな時間
「先見性」をキーワードとして、それがどういったものなのか、それがどう進化してきたのか、さらに人類の歴史にどのような役割を与えてきたのかを解説している本です。
また、人間の先見性には限界があり、その事実に対して人間がどのように対処してきたかを併せて説明しています。
先見性はメリットだけなのでしょうか。
人間は未来を考えるが予測能力には限界があるため(略)たえず 不安にさらされる(略)。(16ページ)
未来がわからなければ心配する必要がない、つまり、未来がある程度予測できる能力があるがために、心配という余計な重荷を背負うことになってしまったという皮肉。
筆者はその最たるものが「自分がいつか死ぬ」という考えであるといいます。
人間の文化は「模倣」にあります。
この「過剰模倣」のおかげで、(略)教訓を、将来の役に立つか よくわからないまま受け継ぐ ことができるのだ。(44ページ)
他人が苦労して学んだ教訓を、タダで受け継ぐことができる。
つまり、失敗などの代償を払うことなく行動することが可能となるのは、人間全体にとってはおおいなるメリットでしょう。
他の動物と異なり、この「過剰」な模倣により効率的に知恵を後の世代に伝達することができますね。
ある心理実験で、大学生に対していい成績を取った時の姿と、勉強している姿のいずれかを
想像してもらったそうです。
試験勉強の場面という 過程に注目 した学生のほうが、結果に注目した学生よりも成績が大きく上がったのだ。(83ページ)
心理学者によれば、明るい未来を想像するのは逆効果で、困難にぶつかったときにどう行動するかを考えた方が効果が高いのだそうです。
これは、よく啓発本にあるような「将来の自分を想像する」という指導とは、まるで逆ですね。
安直ですがこれは人による、ということでしょうか?