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同性婚と司法

同性婚と司法/千葉 勝美
2024年2月20日/218ページ
目次:日本における多様性、LGBTQ問題のいま 日本の五つの同性婚裁判 米国の積極的司法とその背景 日本の積極的司法の先例とその背景 同性婚を認めるための二つの憲法解釈の提案


 いわゆる性的指向が大多数の人と異なるという点については、かつては精神的疾患であるとか社会秩序を損なうものであるといわれていましたが、社会に一定の割合で存在していることや普通の生活をしている人たちであることを指摘し、実際に同性婚を認める方法が憲法の解釈・適用として可能かどうかを検討する本です。
 同性婚についての日本社会における検討ではなく、現在の日本の憲法を含んだ「法」において、どのような理論で同性婚の適用が可能なのかをアメリカの判例法などを参考に理論を構築しています。



 同性婚を認めるうえで妨げになるのが、憲法に規定のある「両性の合意のみ」という表現です。
そうであれば、「同性の者同士の結婚」については、憲法が規定する婚姻 とはいえないことが24条の文言からは明らかである。(29ページ)
 文理解釈的にいうと、「のみ」が「合意」だけにかかるのか、それとも「両性の合意」全体にかかるのかということになるでしょうけど、ふつうは「両性の合意」なのでしょうね。
 筆者は「両性」が例示に過ぎないのではと検討していますが、憲法制定時の日本の社会環境からしてそれはないのでしょう。



 しかし、筆者は憲法20条の信教の自由における「宗教的活動」を引き合いに出しています。
宗教的活動とは(略)宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと 解すべきである。(47ページ)
 というわけで国の宗教的活動を禁止しているこの条文においては、その宗教的活動の内容が限定的にとらえられてるというわけですね。
 筆者は、この解釈という方法により、法改正することなく同性婚の道を開こうとしています。



 そして、具体的な提言では。
「両性」「夫婦」を、男女に限定せず、婚姻関係にある二人を意味するだけの「当事者」「双方」という別の用語が使用されているのと同じだとして24条を解釈すること、それができるのではなかろうか。(145ページ)
 法解釈論としては理解できますが、さすがに「両性」とあるのをそのように解釈するのはどうかと思います。
 それに、このような問題は憲法を変えるといったような、それこそ国民の「合意」が必要であり、それがなければこれから先、政治家や法律家でない人々に「誰かが何かをしてくれる」という意識を助長してしまうのではないでしょうか?






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